岸田新総裁誕生 各国メディアや政府の反応
岸田新総裁の誕生を各国のメディアは速報で伝えましたが、冷ややかな見方も示しています。各国メディアや政府の反応をまとめました。
アメリカの有力紙ニューヨークタイムズは、世論調査で人気が高かった河野氏ではなく、岸田氏が勝利したことについて、「国民の好みを無視し、不人気の菅総理とほとんど差別化できない候補者を選んだようだ」と伝えました。
ワシントンポストは総裁選についても触れ「普段は党の長老たちによって結果が事前に決まるつまらないイベントだが、今回は予想がつかなかった」「一般国民は投票できないにもかかわらず、今までにないほど公衆の関心を引きつけた」と伝えました。
イギリスのBBCは岸田新総裁について、「無味乾燥で退屈だと言われているが、長い間、党内では将来のリーダーとして期待されてきた」と紹介。ロイター通信は「調整役として知られる」と論評しています。
韓国メディアも相次いで速報し、聯合ニュースは岸田氏について「自民党内では日韓関係を重視する“ハト派”」、「慰安婦問題に関する2015年の日韓合意を主導した」などと紹介しました。
一方で「精魂を込めて作った日韓合意を履行しなかった韓国政府への不満もある」と分析。歴史問題についての立場は菅政権と大きく変わらず、「日韓関係に画期的な変化を期待することは難しい」と伝えています。
韓国大統領府の関係者は岸田氏の総裁選出を受けて、「我が政府は、新しくスタートすることになる日本の内閣と、韓日の未来志向的な関係発展のために引き続き協力していく」とコメントしています。
中国外務省の報道官は「日本の新政権と協力し、中日関係を正しい軌道に乗せ健全で安定した発展を推進させることを望む」と、今後の日中関係に期待感を示しました。
また、中国共産党系のメディア「環球時報」は総裁選中に岸田氏が訴えた対中政策を取り上げ、「とても強硬だった」と振り返る一方で岸田政権発足によって外交政策に「本質的な変化は起きないだろう」と分析しています。さらに「岸田氏は元々ハト派で政権発足後に、極端にタカ派的な路線を歩むとは限らない」とする専門家のコメントも掲載しています。
一方、台湾メディアは岸田氏を「親台派」「台湾重視」などと好意的に紹介しています。また、台湾の外交部は岸田氏の勝利に祝意を表明しました。自民党政権下で日台関係が良好であったとして、インド太平洋地域の平和と安定、繁栄のため、ともに手を携え協力することを期待するとしています。
ロシアの国営タス通信は岸田氏を「穏健な保守主義」で「酒好き」と紹介しました。総裁選で党内の広い支持を集めたことから「政界に敵がいない」とも評しています。また、岸田氏の地元が広島であることに触れた上で、「活発に平和志向を示すと同時に、アメリカとの同盟強化、日本の防衛力強化も支持している」と伝えています。
フランスのAFP通信は岸田氏を「カリスマ性を欠いた、穏便なコンセンサスの精神を培ってきた元外相」と紹介したほか、また、ルモンド紙は「パンデミック(世界的大流行)後の経済再生から北朝鮮と中国の脅威まで、数多くの課題に直面しなければならない」と内政・外交に課題が山積していると伝えています。
オーストラリアの公共放送ABCは、岸田氏の勝利について「党の有力者が安定性を選択したことを示している」と分析しつつ、岸田氏は菅義偉政権によるコロナ対策やオリンピック開催への固執によって悪化した自民党の高慢なイメージを変えるというプレッシャーのもとにあると伝えています。