「人道回廊」4ルートは“ロシア行き”……ウクライナが反発「挑発行為だ」 6年前にシリアで“前例”、真の狙いは?
ロシア側が、ウクライナの市民を避難させる「人道回廊」のルートを発表し、その行き先をめぐってウクライナ側が反発しています。ロシアの本当の狙いが、4都市の制圧である可能性もあります。6年前にシリアであった事例や、専門家の分析から考えます。
■「ロシア行き」…政治宣伝に利用も
有働由美子キャスター
「ロシア側が7日に突然発表したのが、市民らを避難させるためのルート『人道回廊』です。ロシア側が設定したのは、キエフの市民はいったんロシアの同盟国ベラルーシに行って飛行機でロシアへ向かい、第2の都市ハリコフの市民もロシアへ向かうルートです」
「避難ルートの6つのうち4つが『ロシア行き』になっています。これはウクライナ側も同意できないということでしょうか?」
小野高弘・日本テレビ解説委員
「市民の皆さんは命からがら避難しますので、気づけば自分の意思とは異なる場所に連れて行かれて、そのあげくに、『大勢の市民が希望してロシアに逃げてきた』というロシアのプロパガンダに使われる可能性もあります。そのためウクライナの地元当局は『これはロシアによる挑発行為だ』と言っています」
「さらに『人道回廊』と言いながら、ロシアの本当の狙いは、キエフ、スムイ、ハリコフ、マリウポリの4つの都市を制圧することである可能性があります」
■シリアでは避難期限後に「空爆」
有働キャスター
「どういうことでしょうか?」
小野委員
「6年前に同じことがありました。激戦が続いていたシリアのアレッポでは、ロシアはシリアの政権軍と一緒になって街を攻撃していました。市民が大勢取り残されていたので、ロシアは期限を決めて一時停戦し、その間に市民を避難させると宣言しました」
「ところが期限が過ぎると激しい空爆を行い、街を一気に制圧していきました。逃げられなかった市民が大勢犠牲になりました。『市民を避難させる措置は取ったのだから、人道的には配慮した』という言い訳ができてしまいます」
■専門家「6年前と同じ狙いの可能性」
有働キャスター
「同じことをウクライナでも、ということでしょうか?」
小野委員
「その可能性があります。国際安全保障が専門の、慶応義塾大学の鶴岡路人准教授は『今回もシリアの時と同じことをやろうとしている可能性がある』と指摘します」
「『市民には逃げろと言ったので、街に残っているのは戦闘員だけという口実で、総攻撃に出る心配がある。全然良いニュースではない』と話しています」
小野委員
「(市民が厳しい状況に置かれている)ウクライナの南東部マリウポリの街では、全域の住宅などが砲弾やミサイルで攻撃されました。水道や電気が止まり、寒い中、暖房が使えなくなっています。外部との通信も難しくなっているといいます」
(3月7日『news zero』より)