解説:韓国・大統領選与野党候補出そろう
最大野党「国民の力」の党大会の会場前で取材をしましたが、公認候補に尹錫悦(ユン・ソギョル)前検事総長が選ばれると、集まった支持者からは尹錫悦コールが起きていました。
公認候補をめぐっては、尹氏やベテランの洪準杓議員ら4人が争い、党員投票と世論調査を1対1の割合で合算する方法により選出が行われました。
その結果、尹氏が47.85%、洪氏が41.5%で、尹氏が6ポイント差で接戦を制しました。
党員投票に限って見ると、尹氏が20ポイント以上、上回りましたが、世論調査では逆に洪氏が10ポイント上回りました。
──候補者レースが始まった当初は尹氏の優勢が伝えられていたと思いますが、接戦となった要因は?
尹氏は、文在寅政権に対し、厳しい姿勢を取ることで支持を伸ばしていましたが、大統領選挙へ出馬表明後の失言の多さが指摘されています。例えば、「週に120時間働けるようにすべきだ」という発言や、民主化運動を弾圧した元大統領を擁護するような発言もありました。
尹氏は、これまで検事一筋で政治的な経験不足は否めません。その部分を不安視する声は多く、洪氏の猛追を許したとみられます。
──尹氏の選出について韓国での受け止めは?
韓国の聯合ニュースは、尹氏が「3大リスク」を乗り越えることができるかどうかが来年3月の大統領選挙に向けての最大の課題だと伝えています。
1つ目のリスクは、さきほどもお伝えした失言の多さです。2つ目は、尹氏が、自らに批判的な与党側の人物を刑事告発するようそそのかしたのではないかという疑惑。3つ目は、尹氏の家族がある企業の株価操作に関わったのではないかという疑惑です。
5日の公認候補選出後の記者会見で、尹氏は自身と家族をめぐる疑惑について、「あまりにも話にならない指摘で、対応する必要自体を感じられない」と一蹴しましたが、仮に直接的な関与が明らかになるようなことがあれば、大きな打撃となります。
──その大統領選挙の本戦で最大のライバルとなるが与党「共に民主党」の公認候補・李在明(イ・ジェミョン)前京畿道知事ということになりますね?
現状、事実上の一騎打ちの構図と言っていいかと思います。李在明氏は尹氏の選出を受けて、コメントを発表しました。李氏は「尹錫悦候補にお祝いを申し上げます」とした上で、「大統領選挙が政策とビジョンを中心に大韓民国の未来を開く場になるよう共に努力することを期待します」と述べています。
ただ今後、大統領選挙に向けて本格的な政策論争がスタートするかは不透明です。尹氏は、さきほどお伝えしたような疑惑を抱えているほか、李氏もソウル近郊の市長時代に始めた都市開発事業をめぐる疑惑がくすぶっています。
与野党それぞれの予備選挙における候補者間の議論でも、政策論争よりも、疑惑の追及や言動をめぐっての批判合戦に多くの時間を割いていました。両候補の日本に対する考え方や具体的な政策がまだ見えてこない中で、どこまで政策論争が活発になるかは注目しなければなりません。