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2021年12月14日 16:52

民主サミットに冷めた声…五輪ボイコットは

民主サミットに冷めた声…五輪ボイコットは
(c)NNN

バイデン大統領こだわりの「民主主義サミット」は、目玉の台湾オードリー・タン氏が“映像遮断”されるなど後味の悪さが目立った。招待国の「線引き」をめぐっても「世界を二分する」との批判がつきまとう。

ことし1月の議事堂占拠事件で「民主主義の盟主」の地位は失墜した。来年は対面形式で開くという「民主主義サミット」で、超大国アメリカは何を目指しているのか。

そしてサミット直前に表明した北京五輪の“外交的ボイコット”には、英国・豪州などが同調する一方、日本は「独自判断」に向け、熟慮を重ねている。アメリカの実情から見える日本が取るべき対応は。舞台裏を探った。

■台湾オードリー・タン氏の地図…意図的に映像遮断?

「ホワイトハウスには抗議した」ワシントンに駐在する台湾のある外交官が、ホワイトハウス近くのレストランでまくし立てた。

不満の矛先は、バイデン大統領がオンライン形式で主催した「民主主義サミット」。台湾も招かれ、デジタル政策を担当するオードリー・タン氏がプレゼンテーションを行ったが、途中で映像が遮断され、音声だけになる一幕があった。

台湾と中国を異なる色で塗り分け、「一つの中国」政策と矛盾すると受け取られかねない地図が使われた直後の出来事で、「ホワイトハウスが意図的に遮断した」との見方が広がった。

タン氏自身「台湾は常に専制主義に対抗する最前線に立ってきた」と訴え、国際社会で存在感をアピールする場だっただけに、水を差された格好となった。

台湾の外交官によれば、ホワイトハウスは「技術的なトラブル」だったと釈明してきたという。

■「世界二分」「アメリカに付き合わされている」の声も

100を超える国・地域が参加した今回の民主主義サミット。台湾の“映像トラブル”に限らず、後味の悪さが目立った。ある招待国関係者は、「アメリカに付き合わされている」と、その雰囲気を表現した。

要因の一つが、曖昧な「招待国の線引き」だ。人権問題が指摘されるフィリピンは招かれ、ベトナムやシンガポール、タイは招かれなかった。

「アメリカか、中国か」の踏み絵を迫り、「世界を二分するだけ」との声も根強い。実際、招待されなかった中米ニカラグアはサミット初日に台湾と断交、中国と国交を結んだ。また、パキスタンは招待を受けたが欠席した。経済的に結びつきが強い中国に配慮したとみられている。

■「アメリカ民主主義に欠陥…」バイデン大統領の“国内事情”

バイデン大統領は、なぜこのサミットを開いたのか。話は約2年前の大統領選にさかのぼる。当時、打倒トランプ大統領を目指し、大統領選の選挙公約を発表したバイデン氏。外交誌フォーリン・アフェアーズへの寄稿で、トランプ外交を「同盟国を傷つけ、時に見捨てた」と痛烈に批判。

「アメリカの民主主義と同盟関係を取り戻す」と訴え、「就任1年目に民主主義サミットを開催する」と公約した。選挙の不正を訴えて敗北を認めず、結果の改ざんまでたくらんだとされるトランプ前大統領。

極めつきはトランプ支持者らによる議事堂占拠事件で、これにより「アメリカの民主主義」は地に落ちた。英調査機関のことしの「民主主義指数」でアメリカは世界25位、「欠陥のある民主主義」に位置づけられている。

バイデン大統領にとって「民主主義サミット」は、中国・ロシアへの対抗とともに、「信頼回復のアピール」という国内事情も大きかった。

■「やめれば良かったものを…」サミット開催に冷めた見方も

選挙公約にこだわったバイデン大統領。ホワイトハウス関係筋は、「やめれば良かったものを、ずるずるとやめられなかった」と解説する。今回のサミット開催を主導したのは、ホワイトハウス内でも国内政策の担当者で、外交チームはあまり動かなかったという。

バイデン大統領の演説にも「国内事情」への強い思いが随所に出た。「民主主義にはチャンピオンが必要だ」と自らに言い聞かせ、「アメリカの分断を癒やす闘いが続いている」とも訴えた。国内の共和党優勢州で広がる「投票権制限」の動きにも詳しく触れ、「自由で公正、安全な選挙を」と、民主主義の根幹を守る決意を示した。

来年には中間選挙も控え、バイデン大統領の足元は危うい。支持率は4割前半で、不支持が支持を大きく上回っている。政権の肝いり法案も議会通過に苦慮している。

こうした中で「内政の焦り」が外交に露呈したのが、今回の民主主義サミットだった。ある外交筋は「中国・ロシアをダシに国内問題を前に進めている」と分析した。

■北京五輪外交的ボイコット…岸田首相「独自の決断」は

民主主義サミット開催の直前には、バイデン政権として北京五輪の「外交的ボイコット」を決断した。もともとは対中強硬論の強い米議会が超党派で強く求めていたものだ。バイデン大統領の決断の背景には、国内の声が色濃く反映されている。

一方で日本はどうか。「国益の観点から自ら判断していきたい」とする岸田首相の言葉通り、「アメリカにお付き合い」ではない「独自の決断」が求められている。

※写真:民主主義サミットで開幕演説を行うバイデン大統領。開催は“選挙公約”だった。

(ワシントン支局長・矢岡亮一郎)