“密集”転倒事故の犠牲者…小槌さん無言の帰国 韓国では警察に「家宅捜索」入る“異例の事態”に
韓国・ソウルの繁華街、梨泰院(イテウォン)で起きた転倒事故は、韓国警察に家宅捜索が入る異例の事態となっています。発生から5日たった3日午後、事故で亡くなった日本人留学生の小槌杏さんの遺体が日本に帰国しました。
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3日、韓国・仁川(インチョン)空港から、亡くなった小槌杏さん(18)の遺体を乗せた飛行機が出発しました。小槌さんは留学中に、梨泰院の転倒事故で亡くなりました。小槌さんの家族は「素直で優しくちょっぴりマイペースな娘は、私たちの宝物です。一日も早く我が家に一緒に帰りたい、そう願っております」とコメントしています。
午後4時すぎ、小槌さんの遺体を乗せた飛行機が成田空港に到着しました。無言の帰国となりました。
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もう1人の日本人の犠牲者、冨川芽生さん(26)の遺体と家族は、4日に帰国する予定です。2日夜、冨川さんの父親が、ソウルにある献花台を訪れました。
冨川さんの父親
「26歳です。まだこれから…やっと留学できて…」
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梨泰院で156人が亡くなった転倒事故から5日。事故当日の10月29日、梨泰院にはこの6年で最多の、去年の2.5倍の人出があったということです。韓国の国会議員によると、事故当日の梨泰院には例年に比べ、かなり多くの人が集まったとみられています。
警察への対応に批判が集まる中、ソウルの警察庁で家宅捜索が行われました。業務上過失致死の容疑で、韓国警察の特別捜査本部は警備計画の資料などを押収したといいます。家宅捜索は梨泰院を管轄する警察署にも入りました。警察が警察機関に家宅捜索に入る異例の事態となりました。
これまでに、警備態勢の不備や、通報に適切な対応をしていなかったことが批判されてきましたが、韓国メディアが新たに指摘しているのが、「幹部への報告は理解できないほど遅かった」という点です。韓国メディアによると、ソウルの警察トップに対し事故の報告があったのは、発生から約1時間20分も後だったというのです。
梨泰院の現場は事故直後、混乱に陥っていました。韓国メディアは、「生死を争う市民の通報は事実上、無視された」と強く非難しています。
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ソウルにある遺失物センターの床一面には、数多くの被害者の持ち物が並んでいました。この場所を訪れた25歳の男性は、事故で姉を亡くしました。
姉(29)を亡くした韓国人男性(25)
「母と姉を連れて3人で行きました。ハロウィーンも梨泰院も初めてだったので、みんなで一緒に行ってみようとなりました」
母、兄、姉の4人家族の男性。家計は苦しいながらも、姉は明るかったといいます。
姉(29)を亡くした韓国人男性(25)
「(姉は)あまり化粧するタイプではなかったが、あの日は家族で一緒に出掛けるし、梨泰院に一度も行ったことがないからうれしくて。大事にしているものを履いたり、着たり、化粧もきれいにした……」
なぜ多くの命が奪われたのか…。早急な原因究明が求められています。