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戦争史から読み解くウクライナ情勢停戦へのシナリオ

2022年4月25日 16:21
戦争史から読み解くウクライナ情勢停戦へのシナリオ
2022年4月20日「深層NEWS」より

ロシアによるウクライナ軍事侵攻から2か月。

泥沼化の様相を呈してきたウクライナ侵攻はどうすれば終結できるのか。

4月20日(水)放送の「深層NEWS」では防衛研究所 戦史研究センター主任研究官の千々和泰明さん、慶應義塾大学准教授の鶴岡路人さんをゲストに、過去の戦争の終結の仕方から、今回のウクライナ情勢の今後を読み解きました。

■戦争終結の2つの形態とは

右松健太キャスター
「戦争の終結の仕方をこれまでの歴史から研究している千々和さんによると、戦争終結には大きく2つの形態があるといいます」

笹崎里菜アナウンサー
「その2つとは『紛争原因の根本的解決』と『妥協的和平』です。『紛争原因の根本的解決』とは、交戦相手の政府を打倒し、紛争の原因を取り除くこと。一方の『妥協的和平』とは、交戦相手と妥協し、その時点での犠牲を回避する方法です」

千々和泰明氏
「戦争の終わり方ということを考えたときに『○○戦争はこう終わりました』ではとりとめもないので、さまざまな戦争の終わり方を一望するような分析のレンズというものが必要になります」

「1つが『紛争原因の根本的解決』。相手を徹底的にたたきのめして将来の禍根を断つ。二度とその相手と戦わなくて済むようにする。そこには犠牲を覚悟しなければいけないわけですが、そういった終わり方が1つの方向にあるということです」


右松キャスター
「『紛争原因の根本的解決』という終わり方をした戦争は、これまでの戦争史では?」

千々和氏
「例えば、第二次世界大戦における連合国とドイツの戦争終結が、これにあてはまると思います」

「当時、連合軍はドイツの首都ベルリンを陥落させ、ヒトラーを自殺に追い込み、そしてドイツという国家をこの世から消滅させるというところまでたたきのめしたということで、これがその例にあたると思います」

鶴岡路人氏
「『将来の危険』が大きいときに、とにかく徹底的にたたく。ただ、これが実際にできるときというのは限られると思います」

「第二次世界大戦のときのように、明らかに根絶しないといけないというような巨大な悪が存在する場合ですが、なかなか普通の国家間の戦争では、こういうところまでいかないケースの方が多いと思います。ですから、例外的な解決方法なのかもしれません」


右松キャスター
「一方の『妥協的和平』。例えば91年の湾岸戦争では、多国籍軍は圧倒的な軍事力で当時のフセイン政権と対峙(たいじ)したが、その後、フセイン政権を完全に打倒するまではいかなかった。これは『妥協的和平』に見えるが」


千々和氏
「当時、多国籍軍はイラク軍をクウェートから撃退しましたが、そこからバグダッドまで攻め上がって、戦争を起こしたフセイン体制を打倒するというところまで進まなかったわけです」

「クウェートからのイラク軍の撃退ということにとどめ、結果的にフセイン体制の延命を許したという意味ではこれは『妥協的和平』の分類に入るものかと思います」

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