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「ウクライナ軍の善戦支えるドローン部隊『エアロロズビドカ』とは?」

2022年4月15日 20:32
「ウクライナ軍の善戦支えるドローン部隊『エアロロズビドカ』とは?」
2022年4月13日「深層NEWS」より

ロシアによるウクライナ軍事侵攻を巡りウクライナがロシア軍に善戦している影には「ドローン」の存在があるといいます。4月13日の「深層NEWS」では、東京大学公共政策大学院教授の鈴木一人さん、東京大学先端科学技術センター専任講師の小泉悠さんをゲストにウクライナ、ロシア両軍のドローン部隊の実力と現代戦においてドローン兵器の威力を徹底検証しました。

■“ミツバチ部隊”とは?

右松健太キャスター
「ウクライナ軍は“ミツバチ部隊”とも称されるドローン部隊を組織し、戦果を上げているといいます」

笹崎里菜アナ
「その“ミツバチ部隊”は『エアロロズビドカ』というドローン部隊で、ウクライナの特殊部隊員とドローン操縦士で構成された約30人の空中偵察部隊です」

「ドローンに特化した部隊を構築する狙いは?」

小泉悠氏
「戦争なので、戦争に役に立つものがあれば、ドローンでもラッパでも何でも使うと思います」

「いま、ドローンが比較的安く手に入る時代になっていて、しかもドローンがとってきた情報を送るための情報ネットワークもスターリンクなどから提供されているとネットが普通に通じる場所ではそこで情報を送ることができる」

「昔ならば斥候が敵の部隊の近くまで寄っていき、司令部に情報を持ち帰らなければいけなかったわけです」

「しかしそこまで訓練された偵察兵でなくても情報を集めることができます」

右松キャスター
「回転翼のドローンもあるし手投げのドローンもあるようだ」

鈴木一人氏
「ドローンは大きなものだと航空機並みのものもありますし、小さなものもあり、ドローンと言っても千差万別で、色々な機能や役割を担っていると思います」

「偵察目的もありますが、攻撃能力というのもあり、特に夜間の場合、赤外線のセンサーを積んでいると、例えばエンジンや人間の体温など熱が出ているところで、どの辺りに部隊がいるのかがわかります。特にこの間、2月3月は寒いので」

「そのような所が浮き彫りになり、ドローンからの攻撃というのも実際行われているということもあります」

■制空権も二層化

右松キャスター
「約30人の“ミツバチ部隊”も敵の標的にもなりうると思うが、俊敏性と機動性をどう評価する?」

小泉氏
「トランクに入るような小さなドローンであったり、兵隊が手で投げられるようなドローンであったり、こういうものを持っておそらく戦場の中を転々と逃げ回りながら活動しているのだと思います」

「まして今、ウクライナは空軍がだいぶダメージを受け、また、生き残った飛行機もロシア軍がいるところはなかなか飛べないというように、マダラ状にしか活動ができないという中で、ウクライナ空軍の偵察機や攻撃機が飛んで行けないところに、ゲリラ的にドローンが偵察や攻撃を行うことができるわけですから、これは非常に大きな威力です」

右松キャスター
「制空権と考えたときに、空域の高い制空権と、低い制空権が今後の戦争で注目されてくる?」

鈴木氏
「はい、例えばレーダーはかなりの高さがないと見えず、実はドローンが飛んでいるところはレーダーでは探知できないので、その意味でもこの制空権が二層化しているいうのも、既に現実だと思っています」

「制空権といっても、相手の航空機がやってきたところにミサイルで迎撃するといった形で、ある地域を守るという考え方と、低空はもっと小さな範囲で、自陣を守るために例えば妨害電波を自陣の周りにめぐらせるという防御の仕方になっていく」

「これから新しい低空域をどのように守るかというドクトリンや、新しい戦術っていうのが生まれてくる可能性はあると思います」

■「カミカゼ・ドローン」とは?

右松キャスター
「一口に制空権といっても二層化しているのが今回の戦争で新たに見えてきたところというところかもしれない」

「ドローンを巡って、アメリカはウクライナへの軍事支援として『カミカゼ・ドローン』と呼ばれる最新兵器を提供したと発表した」

笹崎アナ
「『スイッチブレード』という自爆型のドローンで爆発物を搭載し、ミサイルのように標的へ突っ込み破壊するものです」

「離れた距離から、タブレットなどで遠隔操作することが可能で軽いものではリュックサックに入れて持ち運ぶこともできます」

「また、アメリカ国防総省によると、操縦は2日程度で習得することができ、ロシアの侵攻前からアメリカ国内にいるウクライナ兵に訓練を行っていたということです」

右松キャスター
「『スイッチブレード』は大きさによって威力も違うようだが、何を標的として使われるのか?」

小泉氏
「『スイッチブレード300』という小型のものであれば、ロシア製の『S300防空システム』のような装甲が分厚くないものであれば破壊できるみたいですが、大型の『スイッチブレード600』では分厚い装甲を持つ戦車なども破壊できる」

「今回、メインでアメリカ軍が提供しているのは『スイッチブレード300』の方のようですが、そこに『スイッチブレード600』など入ってくれば、今後、ウクライナ東部でロシア軍の機甲部隊を集めて攻勢を強めるとみられているので、やはり一つ大きな力になるだろうと思います」

右松キャスター
「精度はどう分析する?」

鈴木氏
「カメラで標的を捕まえてこの標的をめがけていくので、精度はかなり高いと思います」

「非常に低空を飛び、相手に対して攻撃をしたり、最初に小型の爆弾を落として本体がぶつかっていったり、色々なパターンが可能な兵器だと思います」

■ロシア軍のドローン兵器の評価は?

右松キャスター
「一方で、ロシア側もオリオンという攻撃用のドローンを使用している」

小泉氏
「『オリオン』は大型のドローンで、シリアでは既に実戦投入したことがありますが、今回ウクライナにも投入し、ウクライナ軍の司令部を破壊したという映像もロシア側は公開しています」

「一方で『オルラン』は小型で、しかも部品が汎用品でできている」

「世界中のコンポーネントを集めてきて作った、安価なお手軽ドローンです。その分たくさん数を導入することができるので、これまでの戦争ではロシアはかなり使ってきたのです」

「ただ今回の戦争では、あまり大々的にこの点が宣伝されていない。それはロシア軍としては当たり前だからあえて宣伝していないのか、それともウクライナに供与されたアメリカ製の電子妨害システムなどで、かなりロシア軍のドローンの活動が制約を受けているという可能性もあると思います。真相はわからないですが」

右松キャスター
「性能差を見ると、今回はウクライナのドローンが大きな戦果を上げていると感じるが」

鈴木氏
「ドローン同士だけで戦況は決定されませんが、やはり大きな力にはなっていると思います。ドローンの使い方がうまいのは、ウクライナだと思います」

「ドローンで撮った画像を世界に向けて発信したり、マリウポリの悲惨な状況、ブチャのような生々しい映像を世界に発信したりするとことで、国際世論を動かしていく。この点では完全にロシアに対しては勝っているというところです」

「逆に言うとロシアがドローンを十分使えないので、馬力で攻撃するというか、火力で攻撃するというかなり荒っぽい無差別の爆撃をせざるを得なくなっていると思います」

読売新聞 飯塚恵子編集委員
「アメリカの報道によると、ドローンは今、ロシア、ウクライナ、双方が攻撃と偵察で活用していますが、両者に決定的な違いが起きていると。それはドローンの物理的な数です」

「ロシアの持つドローンの数が不足していて、24時間飛ばし続けられる状況にないとの指摘があります」

「一方、ウクライナはかねてから米欧から大量の支援を受けていますし、今回のように次々と追加の供給を受けている」

「ロシアが、ただでさえ少ないドローンを打ち落とされて苦境に陥っていて、新しく発注したり、組み立てたりするにも、経済制裁がネックになってその補充がほとんどできないということで、ロシアのドローン技術は高性能で軍事的な役割も強力かと思ってましたが、極めて基本的にブツが足りないという供給問題に直面しているという話もあるということです」

右松キャスター
「ロシアというのはもともと宇宙開発をリードしてきた国。その点でいうと『宇サ電』と言われる、『宇宙・サイバー・電磁波』、こういった新領域において、この現代戦の成果が発揮されていない?」

鈴木氏「そうですね。宇宙に関して言うと、例えばスターリンクのような、多数の衛星を同時に動かす技術というのはロシアにはないんです」

「ロシアが宇宙開発に進んでいたというのは、旧ソ連時代に相当な投資と進歩があったので、いまのロケットも衛星も基本的には旧ソ連時代の遺産といいますか、そのときに開発したものが基本的には中心になっているので、一世代前の宇宙開発国であるといえると思います」

「宇宙開発を継続しようと思っても、部品や人材が足りないというような状況にもあります」

「サイバーは、ロシアのサイバー集団が色々な形で攻撃をするので、サイバー分野においてはかなりの攻撃力を持っていると思います」

「しかし、電磁波の世界は相手の情報をつかんで、それに対して的確に攻撃をしていくということですが、ロシアはその情報をつかむところが弱いので、効果的な攻撃をするというところは十分できていない」

「その意味で『新領域』といわれる分野でも、実は思っていた以上にロシアは後ろにいるんだなというのが今回の戦争で明らかになったのではと思います」

右松キャスター
「軍事力、火力兵器では圧倒的にロシアの方が上という状況ではあると思う。一方で小国が大国と向き合う戦争においてドローンの活用は有効?」

小泉氏
「ウクライナは小国ではありません。国土がものすごく広い。兵力は旧ソ連第2位の兵力です」

「いま起きていることは、旧ソ連第1位の軍事大国、第2位の軍事大国ががっぷり組んで戦っている」

「ドローン戦や、情報戦が有効性を発揮できているのは、正規軍が負けてないからなんです。正規軍がある程度ロシア軍に対抗できているから、情報や電磁波という領域でも効果が出る。逆に言えば、まるっきり弱いところにドローンだけ持っても勝たないと思います」

「確かに新しいテクノロジーが、新しい戦い方を生み出すと側面は確実にある一方で、その戦争が数や火力などで決まるということはやはり変わらないと思います」


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