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偽物を徹底警戒…中国で人気沸騰ビンドゥンドゥン「春節特別版」は一瞬で売り切れ

2022年2月11日 22:36
偽物を徹底警戒…中国で人気沸騰ビンドゥンドゥン「春節特別版」は一瞬で売り切れ
春節特別版のビンドゥンドゥン(公式ネットショップより)

品薄が続く北京冬季オリンピックのマスコット「ビンドゥンドゥン」のグッズ。中国では偽物が出回り、高値での転売や“売ります詐欺”など、人気に乗じた犯罪が次々と問題になっている。

■発売開始から“1秒”で完売

赤い服を着た「春節特別版」のビンドゥンドゥンが9日公式ネットショップで限定発売された。私も販売開始直後に購入ボタンを押したのだが、すでにボタンが機能しない状態になっていた。午後4時から午後10時まで1時間ごとに1000個ずつ、合計6000個が販売されたが、中国メディアによると、どのタイミングも一瞬で売り切れたという。

■16時間待ちで手に入れる引換券 実物はどこにもない…

北京市内の繁華街にある公式グッズショップには毎日、数百メートルの行列ができている。10日の朝9時ごろ、先頭付近に並んでいる人に話を聞くと、前日の夕方5時から徹夜で並んでいるという。北京の夜は氷点下まで気温が下がる。それでも並んでいる中国人たちは意外なほど悲愴感がなく楽しそうだった。オリンピックという“お祭り”に参加している高揚感と、話題のビンドゥンドゥンを手に入れようとみんなで一緒に努力しているという一体感さえ感じた。

今回のオリンピックは厳しいバブル方式で行われ、チケットの一般販売もないため、中国の一般市民がオリンピックを感じられる場所は少ない。そのため公式グッズショップに並ぶ行為は、自国でオリンピックが開催されていることを実感できる数少ない“イベント”になっているようだ。

「娘のために、何としても手に入れたい」そう語る老夫婦は、防寒対策を万全にして長時間、並んでいた。

しかし、苦労してグッズショップの店内に入れても、ビンドゥンドゥンはすぐに手に入らない。一番人気のぬいぐるみを購入する場合、先着500人には代金と引き換えに「引換券」が渡される。この引換券があれば、約2週間後に入荷するぬいぐるみを受け取れる。

オリンピック閉会式の数日後にようやく手に入ることになる。

■偽物工場も続々…当局が摘発も

グッズショップに行っても実物を見ることさえ出来ない、品薄状態が続くビンドゥンドゥン。中国ではこの人気に乗じて、さっそく偽物が出回っている。

ネット上でビンドゥンドゥンのキーホルダーを販売するという業者を見つけたので、問い合わせてみた。

――ビンドゥンドゥングッズはありますか?
業者「注文は200個から。キーホルダー1個10元(約180円)」

――キーホルダーを買ったら送ってくれるのですか?
業者「全額払ったら、発送します」

――1個10元(180円)というのは(安すぎますが)正式なグッズではないのですか?
業者「正式なグッズではないです」「本物そっくりです」

この業者は、特に警戒する様子もなく、偽物であることを認めた。注文を受けたら「即日発送も可能」ともアピールしていた。

偽物が出回り始め、当局は警戒している。浙江省の警察当局などは、偽物のビンドゥンドゥンのぬいぐるみを製造していた工場を摘発し、関係者の身柄を拘束。このほか、偽物の製造販売に関わる事件26件を摘発し、37万元(約670万円)以上の罰金を科したと公表した。

今月7日、江蘇省のある男性がネット上で「ビンドゥンドゥンを代わりに買ってあげます」と呼びかけている人に出会い、代金を振り込んだ。しかし、その後、自宅に届いたのはオリンピックとは関係のない「メガネ拭き」数枚だった。

こうしたオリンピックに関連した詐欺事件は各地で起きていて、江蘇省の警察当局は公式SNSに逮捕した容疑者の写真をアップし「偽物の製造販売など違法行為は厳しく取り締まる」と警告している。

また、中国メディアによると、1つ192元(約3500円)のビンドゥンドゥンのぬいぐるみが10倍以上の値段で転売されているという。警察当局は転売行為を「正常な購買秩序を乱す」と問題視していて、違法行為に関わった3人を摘発。

その上で「グッズ販売は少なくとも今年6月まで続けるので理性的な買い物をしてほしい」と呼びかけている。

(NNN上海支局 長谷川敬典)