ウクライナ“虐殺”あったとされる街で…「絶対見つける」行方不明の夫を探す妻
ロシアのウクライナ侵攻から3か月が経過する中、虐殺があったとされる街では、行方不明の夫の生存を信じ、探し続ける女性がいます。「絶対に夫を見つける」という強い意思を胸に、手がかりを追い続ける女性の思いを取材しました。
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ロシア軍の侵攻で大きな被害を受けたウクライナ・キーウ近郊のブチャでは、ロシア軍が撤退してからまもなく2か月がたつ中、日常を取り戻す作業が続いています。以前は銀行だったという場所で、のこぎりを持って作業する人の姿も見られました。
靴の修理店を営む男性が見せてくれたのは、近くの住宅街からロシア軍が撤退した直後の映像です。
靴の修理店を営む男性
「全ての家の前に装甲車がいたんですよ。燃料がなくなって置いていったのです」
店の小窓には、壁にめり込んでいたという銃弾が置かれていました。今もロシア軍の爪痕が大きく残ります。
1か月以上にわたり占拠され、その後、400人以上の遺体が見つかったブチャでは、住民の虐殺があったとされ、全世界に衝撃が広がりました。
ロシア軍の撤退後、街には徐々に住民が戻りつつある中、病院の一角にある、トラックのコンテナの中には、いまだ身元のわかっていない遺体が20体保管されているといいます。DNA検査などを実施し、専門家が身元の特定を進めています。
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私たちがブチャで出会ったのは、雨が降りしきる中、路上に散らばるものを調べていた女性です。行方がわからなくなった夫の手がかりを、懸命に探していました。
夫が行方不明 ガリーナさん(57)
「彼の薬ケースだと思う」
「彼の上着です」
「これは全部持って帰りましょう」
「夫はとても優しくて働き者でした。いや『でした』じゃないですね。今もきっと生きていますから。彼は拘束されたか、病院にいると信じています」
ガリーナさんの夫・オレクサンドルさんは、ロシア軍の侵攻が始まった2月24日、地元の義勇兵に志願するため、自宅を車で出発したといいます。
ガリーナさん
「彼は『気を落とさないように元気を出して』と私たちに声をかけてくれました」
しかしその後、連絡がつかなくなり、行方がわからなくなったといいます。
約40年連れ添った夫と離ればなれのまま、ガリーナさんは一時、ポーランドに避難しました。先月、再びブチャに戻ってきましたが、夫の行方はわからず、身元不明の遺体の写真を確認したり、DNAを提供したりするも見つからない日々が続きました。
そんな中、先月、ある動画を目にしました。
ボンネットがめくれ上がり、大破した車。ここに映っていたのは、ガリーナさんの夫の車でした。
ガリーナさん
「息子の家族は実際に車を見に行き、中に血のあとがないことを確認しました。だから、お父さんは生きていると言いました」
自宅から10キロほど離れた場所で、ようやく夫の手がかりが見つかったのです。何か残されたものがないかと、ガリーナさんは現場を訪れたのでした。すでに車は撤去されていましたが、路上に散らばったものを確認すると、夫に関連するものがいくつも見つかりました。
ガリーナさん
「夫のものが残っていてよかったです」
「(この3か月は)私たち家族にとって試練の時でした。彼がここにいた証拠を見つけたから、きっと夫を見つけられるはずです」
ガリーナさんは、「夫の身に何があったのかを突き止める」と決意を新たにしました。