中国・大型連休「春節」スタート 「90億人移動」予測の実態とは?【バンキシャ!】
10日に旧正月“春節”を迎えた中国。この時期、民族大移動ともいわれるほど旅行や帰省で人々が移動し、日本にも経済効果があると期待されています。この民族大移動、中国当局は、その人数が実にのべ90億人にものぼるという予測を出しています。しかし、この途方もない数字の裏には、ある政治的な意図が見え隠れ。現地取材で見えてきた実態とは──。(真相報道バンキシャ!)
現地時間9日午後10時半頃、中国・河北省。
NNN河北省・森葉月記者
「花火の打ち上げ競争みたい」
旧正月の「春節」まで、あと1時間ほど。広場には住民たちが集まり、風物詩の花火を打ち上げていた。実はこのエリア、大気汚染への懸念から花火や爆竹は禁止されているが…。
──(警察に)もし止められたらどうする?
男性
「そうしたら一緒にやるよ。爆竹がおもしろいものだってわからせるんだ」
するとそこに…。
──警察官の姿がありますね。でもよく見ると、止められないという感じで笑っています。
広場に集まった人たちは豪快に花火を乱れ打ち…。
──警察は全然注意もしません。むしろ写真におさめてます。
そして、現地時間10日午前0時に中国は新年を迎えた。空港にも、駅にも連休を楽しむ人々の笑顔があふれていた。
しかし、私たちが取材すると、今年はお祝いムードだけではない、“もうひとつの春節”が見えてきた。
11日、上海を代表する観光スポット「豫園(よえん)」は、人で埋め尽くされていた。古き良き町並みが楽しめるエリアも、このにぎわい。
NNN上海・渡辺容代記者
「独特なランタンが並んでいます」
観光客に、新年の願いごとを聞いてみた。話を聞いた大学生3人は、就職活動の真っ最中だという。
大学生
「新年の願いは、就職して稼ぐこと」
──職探しは順調?
大学生
「いや、難しいよ」
実はいま中国では、若者の就職難が問題となっている。去年6月には、若者の失業率が過去最悪を更新。さらに、GDPの3割を占めるとされる不動産業界にも不況の波が押し寄せた。不動産大手が相次いで経営危機に陥ったのだ。
そんな中で迎えた今年の春節。
中国国営メディア「中国中央テレビ」は先月26日放送で、アナウンサーが「移動者数はのべ90億人に達し、過去最多と予測されています」と、経済への不安を払拭するように、旅行などで移動する人の多さを強調した。だが、この90億人という数字にはあるカラクリが…。
例年、中国政府は鉄道や飛行機などで移動する人の数を発表していたが、今年はそこにマイカーでの移動も上乗せしたのだ。専門家の見方では、指標を変え数字を大きくすることで、“中国経済は明るい”とアピールする狙いがあるとみられる。では、実際に人々は春節をどう過ごすのか。
9日、わたしたちは北京市内のパーキングエリアへ。話を聞いたのは、北京へ旅行に来たという家族だ。
車の中には…。
──うわ~すごい
旅行に来た家族
「北京は初めてで。寒いと思って服をたくさん持ってきました」
この家族が住んでいるのは、南部の広東省。およそ2000キロの道のりを、車でやってきたという。
旅行に来た家族
「24時間かかりました」
「万里の長城へ行きます」
旅行を楽しむ人がいる一方、北京に住む男性は…。
──旅行する予定は?
北京在住の男性
「今のところはないです」
──なぜですか?
北京在住の男性
「働かなきゃいけないので」
男性の仕事は配送業。この車で荷物を運んでいるという。
北京在住男性
「前は建設の仕事をしていましたが、会社がつぶれてしまって。かなりの借金を背負いました」
今年の春節は北京にとどまり、働くという。経済低迷のあおりを受ける人は他にも。9日、北京市内を走ると…。
──たくさん人いるな…
集まっていたのは、その日の仕事を探す地方などからの労働者たちだ。例年なら春節は地元に帰り、家族と過ごすのが恒例。これだけの人が残るのは珍しいことだという。
帰省をしない人はここにも。10日、フードデリバリーの仕事をする女性は、5歳の娘と母親を地元・河南省に残し、北京で夫と2人働いている。
配達員
「春節の間に稼がないと」
「春節中はボーナスがでるんです」
経営していた服飾店がコロナ禍で倒産。多額の借金を背負った。
夫
「2年間でなんとか頑張らないと。子どもが大きくなっちゃうし」
この夫婦はふるさとに残した5歳の娘のため、春節も休むことなく配達を続ける。
(2月11日放送『真相報道バンキシャ!』より)
現地時間9日午後10時半頃、中国・河北省。
NNN河北省・森葉月記者
「花火の打ち上げ競争みたい」
旧正月の「春節」まで、あと1時間ほど。広場には住民たちが集まり、風物詩の花火を打ち上げていた。実はこのエリア、大気汚染への懸念から花火や爆竹は禁止されているが…。
──(警察に)もし止められたらどうする?
男性
「そうしたら一緒にやるよ。爆竹がおもしろいものだってわからせるんだ」
するとそこに…。
──警察官の姿がありますね。でもよく見ると、止められないという感じで笑っています。
広場に集まった人たちは豪快に花火を乱れ打ち…。
──警察は全然注意もしません。むしろ写真におさめてます。
そして、現地時間10日午前0時に中国は新年を迎えた。空港にも、駅にも連休を楽しむ人々の笑顔があふれていた。
しかし、私たちが取材すると、今年はお祝いムードだけではない、“もうひとつの春節”が見えてきた。
11日、上海を代表する観光スポット「豫園(よえん)」は、人で埋め尽くされていた。古き良き町並みが楽しめるエリアも、このにぎわい。
NNN上海・渡辺容代記者
「独特なランタンが並んでいます」
観光客に、新年の願いごとを聞いてみた。話を聞いた大学生3人は、就職活動の真っ最中だという。
大学生
「新年の願いは、就職して稼ぐこと」
──職探しは順調?
大学生
「いや、難しいよ」
実はいま中国では、若者の就職難が問題となっている。去年6月には、若者の失業率が過去最悪を更新。さらに、GDPの3割を占めるとされる不動産業界にも不況の波が押し寄せた。不動産大手が相次いで経営危機に陥ったのだ。
そんな中で迎えた今年の春節。
中国国営メディア「中国中央テレビ」は先月26日放送で、アナウンサーが「移動者数はのべ90億人に達し、過去最多と予測されています」と、経済への不安を払拭するように、旅行などで移動する人の多さを強調した。だが、この90億人という数字にはあるカラクリが…。
例年、中国政府は鉄道や飛行機などで移動する人の数を発表していたが、今年はそこにマイカーでの移動も上乗せしたのだ。専門家の見方では、指標を変え数字を大きくすることで、“中国経済は明るい”とアピールする狙いがあるとみられる。では、実際に人々は春節をどう過ごすのか。
9日、わたしたちは北京市内のパーキングエリアへ。話を聞いたのは、北京へ旅行に来たという家族だ。
車の中には…。
──うわ~すごい
旅行に来た家族
「北京は初めてで。寒いと思って服をたくさん持ってきました」
この家族が住んでいるのは、南部の広東省。およそ2000キロの道のりを、車でやってきたという。
旅行に来た家族
「24時間かかりました」
「万里の長城へ行きます」
旅行を楽しむ人がいる一方、北京に住む男性は…。
──旅行する予定は?
北京在住の男性
「今のところはないです」
──なぜですか?
北京在住の男性
「働かなきゃいけないので」
男性の仕事は配送業。この車で荷物を運んでいるという。
北京在住男性
「前は建設の仕事をしていましたが、会社がつぶれてしまって。かなりの借金を背負いました」
今年の春節は北京にとどまり、働くという。経済低迷のあおりを受ける人は他にも。9日、北京市内を走ると…。
──たくさん人いるな…
集まっていたのは、その日の仕事を探す地方などからの労働者たちだ。例年なら春節は地元に帰り、家族と過ごすのが恒例。これだけの人が残るのは珍しいことだという。
帰省をしない人はここにも。10日、フードデリバリーの仕事をする女性は、5歳の娘と母親を地元・河南省に残し、北京で夫と2人働いている。
配達員
「春節の間に稼がないと」
「春節中はボーナスがでるんです」
経営していた服飾店がコロナ禍で倒産。多額の借金を背負った。
夫
「2年間でなんとか頑張らないと。子どもが大きくなっちゃうし」
この夫婦はふるさとに残した5歳の娘のため、春節も休むことなく配達を続ける。
(2月11日放送『真相報道バンキシャ!』より)