「プエルトリコはゴミの島」…憎悪と差別的な発言が相次いだトランプ氏集会に身内から批判も
マンハッタン中心にあるマディソン・スクエア・ガーデン。ビリー・ジョエルなど大物のアーティストの他、NBAの試合などが行われるニューヨークの超有名ホールで、トランプ前大統領は27日、大規模な集会を開催した。
集会ではさまざまな支持者が登壇して、トランプ氏への投票を促す演説が行われるのだが、人種差別的な発言が相次ぎ、身内の共和党内にも波紋が広がっている。激戦州ペンシルベニア州はプエルトリコ系住民が多く、トランプ氏側は火消しに走っている。
トランプ氏に先だって舞台に登壇したコメディアンのトニー・ヒンチクリフ氏は、中南米からの移民を揶揄して次のように発言した。
「ラテン系の人々は子どもをつくるのが大好きだ。ただ彼らは避妊はしない」「海の真ん中にゴミの島があるんです。プエルトリコという島だと思う」
トランプ氏が争点として掲げる移民政策について、ラテン系の人々を下品な言葉で性的に揶揄した上で、アメリカの自治領であるプエルトリコを小ばかにしたこの発言に身内からも批判が相次いだ。トランプ氏の側近、ピーター・ナバロ氏はヒンチクリフ氏を「コメディー界で最も愚かな人物だ」と評した。さらにプエルトリコ系の有権者を抱えるフロリダ州選出の共和党議員は、「このジョークは面白くなく、真実ではない」「全く品のない趣味の悪いものだ」と嫌悪感をあらわにした。
またプエルトリコ系のアーティスト、ジェニファー・ロペスさんやリッキー・マーティンさんは自らのSNSに、民主党候補者のハリス副大統領への支持を表明した。
■差別発言のオンパレード…“憎悪集会”で激戦州に影響も?
集会での差別的発言はこれにとどまらなかった。
ジュリアーニ元ニューヨーク市長は、パレスチナ人の中には暴力を振るう者もいるから彼らを信用すべきではないし、アメリカへの入国を許可すべきではないと主張し、ユダヤ系の支持者は立ち上がってジュリアーニ氏に熱烈な拍手を送っていた。
また保守系メディア司会者のタッカー・カールソン氏は、「黒人とインド系の血を引くハリス副大統領は“サモア系マレーシア人”でIQが低い。カリフォルニア州の元検事」と侮蔑し、会場に集まった人からは笑い声と歓声が上がった。ハリス氏は実際には、ジャマイカ系黒人とインド系の両親を持つ。
相次ぐ人種差別的な発言を受け、民主党の地元ニューヨーク選出のオカシオ・コルテス下院議員は、トランプ氏の集会を“憎悪集会”と評した。
ワシントン・ポストは、集会が開かれたマディソン・スクエア・ガーデンでは1939年にナチスを支持する集会がもられたことを引き合いに出し、「ヒトラーを公然と支持する集会と同じだった」と報じている。
“ゴミの島”発言を行ったトニー・ヒンチクリフ氏についてのグーグル検索件数は、テイラー・スウィフトに関する検索件数を上回るほどアメリカでの関心は高まっている。アメリカメディアによると、激戦州ペンシルベニアは全米で4番目にプエルトリコ系の人口が多く、州人口のおよそ8%を占めるといい、選挙に影響を与える可能性もある。
波紋が広がっていることを受け、トランプ陣営は「このジョークはトランプ前大統領や選挙陣営の見解を反映したものではない」と火消しに追われている。
■投票しに来た人を差別発言で威嚇…逮捕者も
投票をめぐっても人種差別的な発言で逮捕者が出た。アメリカ南部フロリダ州で、投票する人を威嚇したなどの容疑で白人の男が逮捕・起訴されたことが28日に明らかになった。男は投票所に来た有権者に対して大音量で人種差別的音楽を流したり、大声で特定のユダヤ系候補者に関する威嚇的な発言をしたという。
大統領選挙まであと1週間。人種をめぐる差別的な発言が、選挙にどのような影響を与えるのか注目される。