“クリミア橋”爆破 ロシアの“報復”は… ウクライナの複数の都市に攻撃
クリミア半島とロシアをつなぐ橋が爆破されたことについて、ロシアのプーチン大統領は9日、「ウクライナによるテロ」との認識を示しました。ロシアの報復が懸念される中、10日、ウクライナの首都・キーウなど複数の都市が攻撃を受けています。
◇
ウクライナの首都・キーウで10日、爆発が相次ぎました。路上に火の手が上がり、地面に大きな穴が空いているところもありました。ミサイル攻撃を受けて混乱した街中で、警察が規制線を張っていました。
地元メディアによると、キーウでは少なくとも8人が死亡、24人がケガをしました。また、ロイター通信によると、キーウ以外にもリビウ、ドニプロなど複数の都市で爆発音がしたということです。
ウクライナのゼレンスキー大統領は自らのSNSでロシアの攻撃で死傷者が出ていることを認め、「空襲警報がウクライナ全土で収まらない。ロシアが我々を地球上から消し去ろうとしている」と述べています。
◇
その前日の9日…
ロシア プーチン大統領
「ロシアの重要な民間インフラの破壊を目的にしたテロ行為であることは間違いない。ウクライナの特殊部隊が発案し、実行を決め、命令したものだ」
プーチン大統領が言及したのは、ロシアが8年前に一方的に併合したウクライナ南部・クリミア半島とロシアを結ぶ「クリミア橋」で8日に起きた爆発です。橋は黒焦げになり、一部が崩壊し、3人が死亡しました。この爆発について、プーチン大統領は「ウクライナによるもの」との見方を示したのです。
また、ロシアの捜査委員会のトップは「容疑者や爆発したトラックのルートを特定した」としています。
◇
一方、ウクライナ側は関与を認めていませんが、街中には爆発するクリミア橋の絵が飾られ、記念撮影して喜ぶ市民の姿が見られました。
キーウ市民(8日)
「とてもうれしいニュースです。7日のプーチンの誕生日に起こらなかったのは残念ですが、彼はこのプレゼントを喜んで受け取ると思います」
◇
爆発があったクリミア橋は、ロシア本土とクリミア半島を直接結ぶ唯一の道路です。ウクライナ南部・ヘルソン州を占領しているロシア軍への重要な補給路にもなっているのです。さらに、実はクリミア橋はプーチン大統領の肝いりで建設された経緯がありました。
ロシア プーチン大統領(2018年)
「さあ、走りましょう」
4年前の2018年、プーチン大統領が開通を祝う式典に参加した際には、自らトラックを運転し、アピールしました。
ロシア プーチン大統領(2018年)
「あなたたちの力と才能のおかげで、この奇跡が起きました。皆さんどうもありがとう」
◇
プーチン大統領にとって、クリミア半島支配の象徴だった「クリミア橋」で起きた爆発について、専門家に聞きました。
――クリミア橋破壊の意味合いは?
慶応義塾大学総合政策学部 廣瀬陽子教授
「ロシアのクリミア支配の非常に大きな政治的シンボルだった。今回の攻撃はロシアに対して、とても大きな心理的ダメージを与えます」
――プーチン大統領が核兵器の使用に踏み切る可能性は?
慶応義塾大学総合政策学部 廣瀬陽子教授
「今、核を使ってしまうと、プーチンが切れるカードというのはない。核を使ってしまえば、欧米の参戦はまず免れないと思います。現段階で核の使用に直接進むということは、ちょっと考えにくいです」
キーウなどで相次いだ爆発はクリミア橋爆破への報復の可能性があり、緊張が一層高まっています。