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ニューヨークでパレスチナ・イスラエル支持者が一触即発に…アメリカ社会でも緊張の度合い高まる

2023年10月15日 22:42
ニューヨークでパレスチナ・イスラエル支持者が一触即発に…アメリカ社会でも緊張の度合い高まる

イスラエルとパレスチナの情勢が緊迫する中、ハマスの指導者が「怒りの日」としてイスラム教徒らに行動をよびかけた13日の金曜日。ニューヨーク市内では警官が総動員され、街は厳戒警備体制となった。

市内ではパレスチナ系の人々による大規模な抗議集会が開かれ、イスラエルから遠く離れたニューヨークでも、パレスチナとイスラエル支持者が対峙(たいじ)して各所で小競り合いがみられた。

■パレスチナ支持者抗議集会にイスラエル支持者が乱入し逮捕

パレスチナ系の住民が集まった場所の一つが、マンハッタンにあるバルーク大学。我々取材班が到着した頃には、200人ほどが集まり、パレスチナの旗やプラカードを手に、イスラエルのガザ空爆に対して抗議のシュプレヒコールが上がっていた。

周辺には数十人の警官が配置され、上空にはヘリコプターが旋回。厳重な警備のもと、粛々と抗議活動が行われている中、イスラエル国旗を手にした男が叫びながらパレスチナ支持者に接近。警官にあっという間に囲まれ、その場で手錠をかけられた。これに抗議したパレスチナ支持者の男も、警官に取り押さえられて身柄を確保。

ニューヨーク市警によると、バルーク大学の抗議集会で、2人が治安びん乱の容疑で逮捕されたという。

現場は一時騒然としたが、抗議集会は続行され、パレスチナ支持者はタイムズスクエアに向かってシュプレヒコールを上げながら行進を始め、デモのうねりが高まっていった。

■遠く離れたニューヨークでもパレスチナとイスラエル支持者が対峙

午後3時半すぎ、タイムズスクエアに隣接する通りを挟んで、パレスチナ支持者とイスラエル支持者が対峙する形となった。双方のトーンは最高潮となり、ニューヨークのど真ん中で、通りを挟んでお互いをののしり合う。

イスラエル支持者がいる場所に、パレスチナの旗を手にした若者が乱入し、一触即発になる場面もあったが、潤沢に配置された警官がすぐに間に入りお互いを収め、大事には至らなかった。

イスラエルによるガザへの地上侵攻への脅威が高まる中、壇上に上がった女性は、アラビア語で「アッサラーム・アライクム(あなた方の上に平安がありますように)」とメガホンで叫び、パレスチナ自治区ガザへの攻撃を続けるイスラエルを非難した。

デモに参加したパレスチナ系の人は、「苦しんでいる人の大半は女性や子どもたちだ。イスラエルがパレスチナ人の精神を打ち砕くことはできない」「イスラエルはハマスができる前から虐殺を行っている。彼らは赤ん坊や女性、子どもを殺して民間人を標的にしている」と今の惨状へのやるせない気持ちを訴えた。

■イスラエルに次いでユダヤ人人口が多いニューヨーク…米国社会に緊張高まる

実はニューヨーク都市圏(ニュージャージー州、ペンシルベニア州を含む)には、イスラエルのテルアビブに次ぐ、およそ210万人のユダヤ人が居住していて、エルサレムの70万人よりも多い。ニューヨーク市当局は、抗議活動での不測の事態を警戒して、人が集まる場所や宗教施設では厳重な警備をしいている。

ユダヤ教にとっては、金曜の日没から土曜の日没までは安息日にあたるため、礼拝所(シナゴーグ)には多くのイスラエル系の人々が集まる。

我々は世界最大規模のシナゴーグの一つ、エマニュエル寺院の安息日礼拝を取材することができた。

夕方、セントラルパークに隣接するシナゴーグを訪れると、周辺はパトカーや警官で厳戒態勢となっていた。案内に従って中に入ると、荘厳な空間が広がる。両サイドはステンドグラスがはめられ、高い天井には意匠がこらされている。舞台の両脇にユダヤ教のラビ(宗教指導者)が説教を行う演台があり、下手側には、キーボード、バイオリンなどの楽器奏者がスタンバイしていた。

午後6時すぎから始まった安息日の礼拝では、ニューヨークのアダムズ市長が会衆を前にイスラエルとの連帯を表明し、集まった数百人が立ち上がって拍手を送り熱気に包まれた。

8人に1人がユダヤ系住民といわれるニューヨークでは、市長はその影響力を無視することはできず、連日イスラエル系のイベントに参加している。

礼拝の中盤には、ラビ(宗教指導者)が「ハマス」による攻撃を非難し、「イスラエルの攻撃は、報復ではなく自衛だ。それ以外の選択肢はない」と主張。会場からは大きな拍手が起こり、ハマスにとらえられている人質が解放されるように祈りがささげられた。

■イスラエルの祝日に攻撃…第四次中東戦争との共通点も

また、別のラビ(宗教指導者)は、今回のハマスによる攻撃は、今からちょうど50年前に起きた第四次中東戦争(ヨム・キプール戦争)と状況は酷似していると指摘した。

1973年10月、ユダヤ暦で「ヨム・キプール(贖罪の日)」として静まりかえるイスラエルにエジプトが奇襲攻撃を仕掛け、第四次中東戦争が始まった。2023年10月のハマスによる攻撃も、ユダヤの祝日に実行されたことから、第四次中東戦争当時に作曲された歌をラビが歌い、50年前と今の状況を重ねあわせて思いをはせる場面もあった。

礼拝に訪れたイスラエル系の人々は、「ハマスに捕らわれた人質の無条件解放を祈った」「反イスラエルデモが行われる中、歩き回るのが本当に怖いと初めて感じている」との思いを吐露した。

中東でのイスラエルと「ハマス」との衝突は、アメリカ社会に緊張をもたらしていて、不安定な日々が続いている。