「もはや隠れて生きない」…あの夜に何が?LGBTQ運動の象徴「ストーンウォールの反乱」当事者が語る
55年前、アメリカで性的マイノリティーの権利獲得運動の象徴となった「ストーンウォールの反乱」。あの夜バーにいた当事者は、再び権利を抑え込む動きが広がりつつあると懸念を抱いています。(NY支局長 末岡寛雄)
◇◇◇
プライド月間を迎えた6月。パートナーと共に歩くのは、55年前にニューヨークで起きた「ストーンウォールの反乱」の当事者マーク・シーガルさん(73)です。
マーク・シーガルさん(73)
「自分の若い頃の出来事が歴史として認められるなんて思ってもみませんでした」
当時の状況を伝える展示施設のオープン記念式典で、バイデン大統領や歌手のエルトン・ジョンさんと共にスピーチに臨みました。
マーク・シーガルさん(73)
「この55年間私たちのコミュニティーは、1969年当時には考えられなかった権利のために戦ってきました」
性的マイノリティーへの偏見から取り締まりが厳しかった時代の、1969年6月28日、ゲイバー「ストーンウォール・イン」に警察が踏み込み客らに暴力をふるいました。当時18歳だったマークさん。ストーンウォール・インは特別な場所だったといいます。
マーク・シーガルさん(73)
「1969年には、私たちは新聞、雑誌、テレビやラジオに出ることは許されませんでした。私たちは不道徳で違法で、精神的に不安定な存在とされていたのです。ストーンウォールは薄汚いバーで、飲み物も薄められていました。それでも、私たちにとっては特別な場所でした。なぜなら、私たちは街では暴力を振るわれたり逮捕されたりすることがあったからです。ストーンウォールに行けば、自分らしく過ごせたんです。好きな人と一緒に踊れたし、キスをしたり抱き合ったりすることもできました。あの夜まで、安全な場所だったのです。ストーンウォールの反乱の夜は、警察が突然勢いよく入ってきて、バーを破壊し、私たちにボトルを投げつけたり暴力をふるったりしたのです。私たちに対する社会の見方に初めて気づいた重要な瞬間でした。怒りを感じました。ひどい言葉をかけられて生きてきた人生で蓄積した怒りが、爆発したのです」