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国連安保理 ロシア非難決議否決 ロシアが拒否権行使 中国は棄権 議場では犠牲者に黙祷も…

2022年2月26日 18:19
国連安保理 ロシア非難決議否決 ロシアが拒否権行使 中国は棄権 議場では犠牲者に黙祷も…
ロシアを非難する決議案を議論する国連安保理会合(25日)

国連の安全保障理事会は25日、ウクライナに軍事侵攻したロシアを非難し、ロシア軍の即時撤退を求める決議案の採決を行いました。採決では、安保理理事国15か国のうち11か国が賛成しましたが、常任理事国のロシアが拒否権を行使し否決されました。

■アメリカが直前まで中国を説得 会合は2時間延期

ウクライナ情勢が緊迫して以降、国連安保理の会合が開かれるのは、今回で5回目だ。

アメリカなどが提出した決議案は、ウクライナに軍事侵攻したロシアを非難し、ロシア軍の即時撤退を求めるもので、日本を含む80か国以上が共同提案国として名を連ねた。常任理事国であるロシアの拒否権行使が確実視される中、アメリカは、「国際社会におけるロシアの孤立を強調させる狙いがある」として、ロシア以外の安保理理事国14か国すべての賛成を目指した。

会合が始まる直前まで、アメリカのトーマスグリーンフィールド国連大使が、中国の張軍国連大使の説得にあたるなど、会合は当初の予定より2時間遅れて始まった。

■反戦の象徴「ゲルニカ」の前で掲げられたウクライナ国旗

ウクライナのキスリツァ国連大使は会合に先立ち、各国の大使や外交官らに国連ウクライナ代表部のマスクを配った。

アメリカのトーマスグリーンフィールド国連大使やイギリスのウッドワード国連大使をはじめ、多くの外交官らがおそろいの「ウクライナマスク」を着用して会合に臨むなど、ウクライナとの連帯を示した。議場に入る直前、ウクライナの大使は、各国の大使らとともにピカソの代表作「ゲルニカ」の前でウクライナの国旗を掲げた。

戦争の悲惨さを描いた「ゲルニカ」は、長年、安保理の議場前に設置されている。反戦の象徴の前でウクライナの大使は、平和のために安保理として一致した対応をとるよう呼びかけた。

■米大使「国連憲章を信じるなら賛成を」と訴えるも… ロシアが拒否権行使注目の中国は棄権

会合の冒頭、アメリカのトーマスグリーンフィールド国連大使は、「ロシアは、ウクライナを侵略し、ウクライナの人々や自国民に計り知れない苦しみを与え、国際法と国連憲章に違反することを選択した」と厳しく批判。

その上で、「投票は単純だ。国連憲章を信じ、ウクライナの主権と領土保全を支持し、ロシアが責任を負うべきと考えるなら賛成。もし、国連憲章を守らず、ロシアの攻撃的で挑発的な行動に同調するならば、反対か棄権だ」と訴えた。その後、採決が行われ、安保理理事国15か国のうち11か国が賛成したが、常任理事国のロシアが拒否権を行使し否決。注目されていた中国は棄権した。

■ロシア大使 「決議案はウクライナ国民の利益に反する」

ロシアのネベンジャ国連大使は、拒否権を行使した理由について、「この決議案は、ウクライナの国民の利益に反するものだからだ」と説明した上で、「ロシアはウクライナの街を爆撃していない。何の脅威も与えていない。民間人の死亡は全く確認されていない」と主張。手元に置いた原稿を淡々と読み上げるだけだった。

一方、棄権した中国の張軍国連大使は、「ロシアとウクライナがこの問題を解決することを支持する」などと述べるにとどめた。

■安保理の議場で捧げられた黙とう

決議案の否決が決まった後、ウクライナのキスリツァ大使は、ロシアを強い言葉で非難した上で、議場に集まった各国の大使や外交官らに対し、「亡くなった人々のために黙祷を」と提案した。すると、すかさずロシアの大使が遮り、「過去にドンバス地方で亡くなった人の命も大切だ。そのことは忘れてはならない」と発言。

その後、ウクライナの大使の呼びかけに合わせて数秒間の黙祷が捧げられ、議場は静まり返った。そして、黙とうが終わると大きな拍手に包まれた。ロシアの孤立を強調するかのように、拍手はしばらく続いた。

■国連グテーレス事務総長 「決してあきらめてはならない」

会合終了後、国連のグテーレス事務総長は、詰めかけた多くの外交官や報道陣を前に、「国連は戦争から生まれ、戦争を終わらせるためにつくられた。きょう、その目的は、達成されなかった。だが、我々は決してあきらめてはならない。もう一度、平和のチャンスを与えなければならない」と語り始めた。

そして、「国連憲章は過去にも危機に直面したことがある。だが、平和、安全、正義、国際法、人権の側にしっかりと立ってきた。国際社会が連帯したとき、これらの価値観は何度も勝利をおさめてきた。我々は、ウクライナ、そして全人類のために、全力を尽くさなければならない」と訴えた。

国連は近く、ウクライナ情勢に関する緊急の総会を開き対応を協議する見込みだ。