豪州で16歳未満のSNS禁止へ 背景に日本も他人事ではない問題 子どもを守るには【バンキシャ!】
XやInstagramなどのSNSを16歳未満の子どもは利用してはいけないという法案が、オーストラリアの議会で可決されました。SNSの利用を国家レベルで禁止する世界初の法案。オーストラリアでいま何が起きているのか、取材すると日本も他人(ひと)事ではない問題を抱えていました。【バンキシャ!】
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先月30日、「バンキシャ!」はSNSについて街で話を聞いた。
──SNSの存在は大きいですか?生活の中でどれくらい占めています?
中学生(13)
「半分くらい」
中学生(14)
「8割くらい」
今や、多くの若者にとって欠かせないSNS。その規制に乗り出した国があった。先月29日、オーストラリアで16歳未満の子どものSNS利用を禁止する法案が可決した。違反をした場合、利用者に罰則はないが、SNS事業者は最大でおよそ50億円の罰金が科されるという。対象は、XやTikTok、Instagram、Facebookなど。日本でも使われているこれらのSNS。もし、つかえなくなったら…?
高校生(17)
「いやもうだめです。もう死んじゃう。Instagramもずっと見て、リールとかずっと流したり、ストーリーズで友達が何をしてるか確認するから、もうずっとないとダメ」
中学生(13)
「インスタとか使えなくなると、流行(はや)り物とかわからなくなっちゃう。あまり考えられないかも、なくなったらっていうのは」
ロイター通信によると、オーストラリアの最新の世論調査では国民のおよそ77%が法案に賛成しているという。世界で初めて国家レベルでの規制に乗り出したオーストラリア。その背景には日本も他人事ではない現実があった。
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オーストラリア・ブリスベンで、SNSの利用禁止についてどう思っているのかを聞いた。15歳と14歳の2人にアプリのバッテリー使用割合を見せてもらうと、1日あたりのバッテリー使用割合上位に3種類のSNSがあり、全体の80%近くを消費していた。まさに、こうしたSNSが使えなくなってしまう年齢の2人。
──SNS禁止についてどう思いますか?
反対派(14)
「すべきだと思わない。禁止するのはかなり難しいんじゃないかな、年齢はウソがつける」
年齢を偽る抜け穴があるのではと指摘した。
一方で、賛成意見も。
賛成派(14)
「私はそんなに嫌な経験をしたことはないけど、そういう人がいるから、禁止したらいい方に進むかもしれない」
小学生の子どもを育てる母親は…
賛成派・母親
「子どもたちをネットのいじめや、SNSのネガティブなことから守るのは素晴らしいです」
オーストラリアでは、14~17歳のおよそ3分の2が、薬物乱用や自殺、自傷行為に関連した有害なコンテンツをSNSで見たことがあるという。
今年4月には、シドニーの教会で起きた刺傷事件に関する暴力的な映像がSNSで拡散。オーストラリア政府が動き、SNS事業者に映像の削除を要請したという。SNSから受ける影響から子どもを守るため、親を中心とした団体が利用規制を求め12万人以上が署名に賛同した。
さらに2009年には──
息子を亡くした父親
「4週間から6週間の間、息子は(いじめの)標的にされた。その集中砲火は彼にとって耐え難いものでした」
当時17歳だった息子が数人の友人から数週間にわたりSNS上でいじめを受け、その後、自ら命を絶ってしまう事態も起きていた。
先月30日、オーストラリア在住の寺澤悠さんに法案について話を聞いた。
オーストラリア在住・寺澤さん
「とにかくこれは大きいニュースです。まさか法律になるなんて、夢にも思ってなかったので」
寺澤さんは15歳と11歳の双子の娘の父親だ。15歳の娘はSNSをよく使っているというが──
寺澤さん
「何かのきっかけでメッセージをのやりとりが始まって、相手方が『写真送って』とかっていうのは送っちゃだめとよく言ってます」
危険なことに巻き込まれないよう注意を促しているという。今回、法案が可決されたことに賛成している。
寺澤さん
「使い方を学校で学ばないですし、今は法律を作ろうとしてますけど、法律ができる前にSNSは大きくなりすぎたので、大人が責任を持って子どもを守る必要があると思ってます」
デジタルメディアに詳しい専門家、シドニー大学のテリー・フルー氏はこの1年ほどで議論が進み法案が可決されたと話す。
シドニー大学 テリー・フルー氏
「若者が命を絶ってしまうことなど、若者のメンタルヘルスの問題は親にとってリアルなものです。若者が性的搾取に巻き込まれたことや、それをSNSの運営側が素早く対処しなかったことも要因の一つだと思います」
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日本でもこうした規制の動きは広がるのだろうか。若者の生活の一部になっているのは日本も同じ。4年前からスマホを持っているという親子に話を聞いた。
──SNSが使えなくなるのはいかが?
娘(14)
「結構しんどいです」
4つのSNS(X、TikTok、Instagram、Facebook)を使う頻度について印をつけてもらった。
──一番使うのがTikTok?
娘(14)
「毎日動画見たり、動画撮ったり調べ物に使ったり」
Instagramは友人との連絡手段として使っているという。
母親
「楽しみでもあるので、仕方ないのかなって思いますけど、なくなったらいいのにと思ってます」
実はSNSを使っていて、怖い思いをしたことも…
母親
「『(娘が)変なサイトに飛んで登録した』と、焦って来たんですよ」
SNS上の広告に(娘が)誤ってアクセスしてしまったという。
母親
「『振り込んでください』という画面が出て、泣いてこっちに来たんですよ。脅かすわけじゃないけど、何かあってからじゃ遅いので」
一方で別の親子に聞いてみたところ、中学1年生の娘(13)は、InstagramとTikTokをよく使っているという。しかし、その使い方にはルールがあるという。
娘(13)
「(ルールが)貼ってあります。リビングの真横に」
ルールのメモには、自分の部屋には午後10時半には戻る、その際スマホやタブレットは持ち込み禁止。土日祝日は動画鑑賞やSNS、ゲームなどを含め4時間まで。高校生になるまでは、ルールを続けるという。
──オーストラリアの法案に賛成ですか、反対ですか?
娘(13)
「反対です」
母親
「賛成です。私なくても困らなかった」
娘(13)
「楽しみがなくなる。情報が得られないのが嫌」
16歳の娘のSNSをチェックしていて危険な場面を防いだという親も。
母親
「知らない人とつながっていたことがあって、『付き合う、付き合わない』ってなっていたのですが、知らない人だからさすがにやめなさいって」
母親からの助言もあり、その後はやりとりをやめたという。今は知っている人に限ってSNSを楽しんでいるという。
警察庁によると、日本では去年、SNSがきっかけの犯罪被害にあった18歳未満の子どもは1665人に上っている。
子どものSNS利用に詳しい専門家は──
兵庫県立大学・竹内和雄教授
「私も国やいろいろな機関で検討会の委員もしていますけれど、(オーストラリアと)同じような議論が起きています」
「子どもたちや、小さい子も使えるようなものを新たに作っていく、そっちの方にいかないと、規制ではなかなか難しいかもしれません。子どもが使えるSNSであるとか。日本は日本で多くの人が議論をしながら一緒に考えていく必要がある」
(12月1日放送『真相報道バンキシャ!』より)