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罰金「50億円」も…豪の“16歳未満SNS禁止”で賛否は スマホ持たせる日本の親「2割がトラブル」【#みんなのギモン】

2024年11月30日 12:30
罰金「50億円」も…豪の“16歳未満SNS禁止”で賛否は スマホ持たせる日本の親「2割がトラブル」【#みんなのギモン】
オーストラリアの議会で、16歳未満の子どものSNS利用を禁じるという法案が可決しました。議論は紛糾し、反対派も声を上げますが、世論調査では多くの国民が賛成しています。誹謗(ひぼう)中傷などSNSのトラブルはどう防げばよいのでしょうか。

そこで今回の#みんなのギモンでは、「“16歳未満SNS禁止”なぜ?」をテーマに解説します。

■SNS依存症やいじめが社会問題に

小野高弘・日本テレビ解説委員
「オーストラリアの議会で法案が可決しました。16歳未満の子どものSNS利用を一切禁止するといいます。思い切りましたね。一体なぜなのでしょうか?」

「地元メディアによると、目的は子どもたちの心の健康と幸せな暮らしを守るためと政府は説明しているそうです。オーストラリアでもSNSへの依存症やSNSを使ったいじめ、ポルノや残虐映像といった飛び交う有害コンテンツが社会問題となっています」

「そのため国レベルで子どものSNSの利用を禁止しようという動きです。世界で初めてとも言われています。対象となるのはXやTikTok、インスタグラム、Facebookなど。YouTubeは学校教育でも使われるため除外されているそうです」

「SNS事業者には厳格な年齢確認が義務付けられています。その上で、16歳未満の子どもが利用できないような措置を講じることも義務付けます」

「それでも事業者が深刻な違反をした場合、罰金は日本円で最大約50億円です。事業者にとっても痛いほどの額で、それほど政府は真剣になって取り組むということです。一方、利用者側の子どもや保護者が違反したとしても罰則はありません」

森圭介アナウンサー
「法律になることもそうですが、罰金が50億円というところに本気度を感じますよね」

■正確な年齢をどう確認するかの課題も

鈴江奈々アナウンサー
「思い切った新たなルールに、オーストラリアの人たちは受け入れているのか、どう考えているのか気になりますね」

「16歳未満が一切ダメというのはやりすぎではないか、という意見もあります。議会で議論が紛糾したそうです。国民の反応を見てみます。ロイター通信によると、世論調査では国民の約77%が賛成しているといいます」

「ただ、反対している人の主張もごもっともな部分があります。ロイター通信によると、一部の若者支援団体などからは『弱い立場にある若者が支援ネットワークから孤立する可能性がある』という声が上がっています」

「反対派には『子どもたちを孤立させ闇サイトに追いやるだけだ』という意見もあります。日本でも児童や生徒が1人で悩んだ時、SNSを使って窓口に相談を寄せる動きもあります」

「また、どのように正確に年齢を確認するのかという課題もあります。地元メディアによると、どうやって確実に年齢確認するのかは法案には書かれていないそうです」

「それでも法案は成立した後に来年1月から1年間の猶予期間を設け、その期間中にSNS事業者が何が効果的なのかを検討し、その上で、正式に禁止措置が始まる見通しです」

忽滑谷こころアナウンサー
「実際にSNSを使っている身としても新しい世界との出会いがありますし、SNSに居場所がある方々もいます。利点もたくさんあると思います。この検討期間を有効に使って、うまく関わっていく方法を探れたらいいですよね」

■フランスやアメリカのSNS規制は?

小野解説委員
「こうして16歳で線引きとまではいかなくても、子どもがSNSで有害なコンテンツを見られないように規制している事例はあります」

「ロイター通信によると、フランスやアメリカの一部の州などでは、未成年が親の許可なしにSNSにアクセスできないようにする法案が可決しています」

「事業者側も、XやTikTok、インスタグラムでは利用するのに生年月日を入力する必要があり、13歳以上しか利用できないとしています」

「日本ではLINEも(よく)使いますが、12歳以上を利用推奨年齢としています。子どもさんで使っている人もいると思いますが…」

■トラブルは? スマホ持たせる親に調査

刈川くるみキャスター
「自分が何歳から使っているかわからないくらい、身近なものでした。いい面がある一方で、どの角度にどんな危険があるかわからない恐れもはらんでいますよね」

小野解説委員
「弁護士検索サイトのベンナビIT(アシロ)が行った調査では、高校生以下の子どもにスマートフォンを持たせている親1874人のうち、23.2%が『子どもがスマホに関わるトラブルを経験した』といいます。内容はSNSでのいじめが一番多かったそうです」

■SNSで誹謗中傷を受けたのは1割以上

小野解説委員
「子どもだけではありません。同サイトの調査によると15~59歳の男女3000人のうち13%、つまり10人に1人以上はSNSで誹謗(ひぼう)中傷を受けたことがあるといいます。『頭が悪い』『ブサイク』など、人格を否定するような悪口が多いそうです」

鈴江アナウンサー
「SNSにかかわらずいじめやトラブルはありますが、SNSはいつでもどこでもつながり続けるというところで、追い詰められる環境があるのではと、親目線では心配になりますね」

森アナウンサー
「逃げ場がなくなっちゃいますもんね」

■専門家に聞く…誹謗中傷が起きる背景

忽滑谷アナウンサー
「被害者になり得る一方で加害者にもなってしまわないために、どんなことに気をつけたらいいのでしょうか?」

小野解説委員
「SNSに詳しい国際大学の山口真一准教授によると、一般的に加害者になる人は自分なりの正義感を持っていて、誹謗中傷しているという意識がないことが多いといいます」

「例えば、ネット上の信ぴょう性のない情報を鵜呑みにして批判のつもりで書いたものや、思い込みによる正義感が誹謗中傷につながることもあると指摘しています」

「そのため書き込む前に一度、冷静に見直して考えてみることが大事です。TikTokなどSNSによっては、AIが侮辱的な言葉を検知して投稿前に警告するという機能もあるそうです」

森アナウンサー
「こういったAIの使い方は本当に素晴らしいなと思いますよね」

小野解説委員
「SNS上などで誹謗中傷を行うと、脅迫罪のほかに名誉毀損罪や侮辱罪などに問われる可能性もあります。匿名の投稿であってもIPアドレスをたどることで発信者を特定できます。自分が投稿していなくても、拡散させたことで罪に問われることもあります」

■子どもたちをSNSから守る議論を

鈴江アナウンサー
「今回はオーストラリアのルールの話でしたが、子どもたちをSNSから守るという議論は日本でも進めていく必要がありそうですよね」

小野解説委員
「日本では慎重に議論している段階です。こども家庭庁のワーキンググループで課題や論点を整理していくということです」

鈴江アナウンサー
「使い方によっては有益なものですが、どう向き合うかは私たちも考えていきたいですね」 

小野解説委員
「SNSは今後もきっとどんどん発展し、便利になっていきます。だからこそ、悪影響もしっかり分析して、ブレーキをかける時はブレーキをかけないといけない。そう思います」

(2024年11月29日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)

【みんなのギモン】

身の回りの「怒り」や「ギモン」「不正」や「不祥事」。寄せられた情報などをもとに、日本テレビ報道局が「みんなのギモン」に応えるべく調査・取材してお伝えします。(日テレ調査報道プロジェクト

最終更新日:2024年12月3日 17:42