広がる“LGBTQ向け”高齢者施設 差別や老後の不安抱えていた入居者は… アメリカ
2月23・24・25日は、日本テレビの週末キャンペーン「カラフルウィークエンド」です。ひとりひとり違う私たちが、お互いを知り、誰もが自分らしく生きられるヒントをお届けします。『news every.』では、19日から1週間を通して、さまざまな「生きやすさ」に関する企画を放送します。
◇
アメリカにはLGBTQ・性的マイノリティー向けの高齢者施設があります。日本よりも一歩進んだ支援を行っている全米最大規模の施設を取材すると、自分らしく生き生きと過ごす高齢者の姿がありました。
アメリカ・テキサス州ヒューストンにあるカラフルな窓ガラスが目をひく建物。全米最大規模のLGBTQを積極的に受け入れ支援する高齢者施設「ロー・ハリントン・シニア・リビング・センター」で、62歳以上の入居者110人あまりのうち、約半数がLGBTQ当事者です。そこには、LGBTQの入居者が、異性愛者の入居者と談笑する姿がありました。
ジョーさん(ゲイ男性)
「いつもドミノで遊んでいるんです。私たちは毎日話しているので、 みんなのことをよく知っています」
◇
私たちが出会ったのは、ディナ・ジェイコブズさん(76)です。3年前からこの施設で暮らしています。ここでどのような生活を送っているのか、部屋におじゃましました。
ディナ・ジェイコブズさん
「ここが私のクローゼット。全部ショーで着る服です」
生まれたときの体の性別は男性でしたが、女性として暮らしているトランスジェンダーのディナさん。ナイトクラブなどでパフォーマンスを行うドラァグクイーンとして60年間活動し、76歳の今も現役で舞台に立っています。
しかし、若いころは家族や社会の理解が全くなく、高校入学後には家を追い出され、多くの差別を受けてきたと打ち明けてくれました。
ディナ・ジェイコブズさん(トランスジェンダー女性)
「『私は男です』と書かれたバッジを付けるように強制されたんです。付けていないと警察に暴行されました」
そして30代後半となった1985年に、HIVに感染したことが判明。周囲の差別はより強くなりました。
ディナ・ジェイコブズさん(トランスジェンダー女性)
「あのころは何をしていても嫌がらせを受けました。誰もがHIV感染者に触れるのを嫌がったのです」
◇
長年、偏見にさらされ続けてきたLGBTQの人たち。差別を受けて安定した職につけなかったり、婚姻関係を結べなかったりすることで、老後も経済的に不安定な生活を送るケースが多くあります。
施設の責任者 クリスチャン・カポさん
「LGBTQの高齢者には、社会的なサポートが不足していることが多いのです。彼らの多くは、支えてくれる家族が何年間もいなかった。ここの入居者たちは、人生の終わり方や経済的な問題、医療の必要性など、つらいことや重要なことを話し合えるんです」
日本では、高齢者施設でのLGBTQ支援はまだ進んでいませんが、この施設は、政府や州の助成金などで運営されているため、月額約6万円から9万円で入居することができます。
ディナ・ジェイコブスさん(トランスジェンダー女性)
「居心地が良かったから、ここが自分の住むべき場所だとすぐに思えました。この家に安く住めるのは私にとって、まさに恩恵です」
さらに、HIVに感染しているため、1日1回の服薬が欠かせないディナさん。施設の中にはクリニックが併設されていて、HIV感染者向けの治療も受けることができます。
ディナ・ジェイコブズさん(トランスジェンダー女性)
「一度とても気分が悪くなって、救急車を呼んでもらったことがあります。ここに住んでいて良かったと思いました」
◇
施設をサポートする職員の多くも、LGBTQ当事者です。入居者たちは、居心地の良さを感じています。
ジェシモーナさん(レズビアン女性)
「LGBTQのスタッフは私たち入居者に心を寄せてくれていて、みんなここにとどまりたいと感じています」
ジェレミーさん(ゲイ男性)
「ここはとても快適です。ゲイの隣人がいて、中にはHIV陽性者もいる。すべてが当然として存在しているのです」
入所者が自分らしく暮らせて当たり前の施設。
ディナ・ジェイコブスさん(トランスジェンダー女性)
「この場所で暮らせて、世界で一番幸せだと思います」
LGBTQの老後の不安への対応が、日本でも求められます。