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ニューヨーク過去140年で最大規模の地震…災害大国・日本から見たぜい弱なインフラへの懸念

2024年4月7日 13:00
ニューヨーク過去140年で最大規模の地震…災害大国・日本から見たぜい弱なインフラへの懸念
各局が地震のニュースを大きく報じる

5日午前、アメリカ・ニューヨーク市に隣接するニュージャージー州を震源とするマグニチュード4.8の地震が起きた。過去140年で最大規模の地震で、地震が珍しいニューヨークの地元局では大きなニュースとなった。大きな被害は幸い出ていないが、災害大国・日本と比べてニューヨークのぜい弱な災害インフラとは。(NNNニューヨーク支局長 末岡寛雄)

■ニューヨークで「異例」の地震…慣れない地震に大騒ぎ

アメリカ・ニューヨークで5日の朝、隣のニュージャージー州を震源とするマグニチュード4.8の地震が起きた。ニューヨークで地震があるのはとても珍しい。地震が起きたのは午前10時20分頃。筆者のオフィスは震源からおよそ70キロ離れたマンハッタンのビルの3階で、少しぐらりと感じた。体感としては震度2ぐらいだろうか。ニューヨークで地震はないものだと思っていたので、大きなトラックが通ったか、ビルの工事で建物が揺れたのかなと最初は感じた。まさか地震?と思い窓から外を見たが、五番街では楽しそうに人々が歩いていて通常通り。大きな変化は見られなかった。国連ではガザ情勢をめぐって安全保障理事会の緊急会合が開かれており、生中継のカメラが揺れ、会議の進行がほんの一時中断する一幕もあった。

しばらくするとテレビ各局が地震のニュースを速報で伝え始めた。昼のニュース時間帯の午前11時を過ぎると、各局が地震のニュースで持ちきりとなった。震源となったニュージャージー州からの生中継では、珍しい地震を経験した少年たちが興奮しながら「びっくりしたよ」と笑顔でカメラのインタビューに答えていた。筆者がビルのエレベーターに乗ると、職員から「揺れたの感じた?」と興奮気味に話しかけられ、慣れない揺れで街の人々が興奮している様子が感じられた。

■地震から「40分後」にスマホに通知…本当に揺れたか確認

ニュースで被害がないかチェックしていると、携帯がけたたましく鳴り緊急の通知が飛び込んできた。「ニューヨークで地震がありました。屋内にとどまり、もしケガをしていたら救急に電話してください」とのメッセージ。なんと地震からおよそ40分経過した後のことだった。現地メディアによると、揺れが実際に起こったかどうか、アメリカ地質調査所に確認する必要があり、これだけの時間がかかったという。

ニューヨークとニュージャージーにある空港も一時離着陸を制限し、目的地を変更するフライトも出たが、幸い大きな被害や死者・けが人などは今のところ確認されてない。しかし、6日の夕方までに余震がおよそ30回観測されている。ニューヨーカーには慣れない地震のためか、現地メディアには地震酔いについての解説記事や、「地震は日食と関係あるのか?」さらには「気候変動が地震を頻発させるのか?」といった見出しの記事も見受けられた。

■140年ぶりの最大規模の地震…大きな被害はないが警鐘も

アメリカ東海岸では地震はめったに起こらない。1950年以降、マグニチュード4.5以上の地震が発生したのはおよそ20回だけだという。現地メディアによると、ニューヨークで観測された大きな地震は、1884年に観測されたマグニチュード5.2。金曜に観測されたマグニチュード4.8と比べると4倍の規模だ。

幸い今回の地震では、マンハッタンの建物に大きな被害は報告されなかったが、ニューヨーク・タイムズは1884年と同じ規模のマグニチュード5.2の地震(今回の地震のおよそ4倍の規模)が起きると100棟が倒壊し、建物や交通機関、公共施設への損害は日本円でおよそ7000億円にのぼり、2000人が路頭に迷うと警鐘を鳴らす。

■築100年のビルが林立…日本と比べるとぜい弱なニューヨークの災害インフラ

ニューヨークで生活していると、インフラは災害大国・日本に比べてだいぶぜい弱だと感じる。都市の排水機能が弱いため、どしゃ降りの雨が少しの時間降っただけで道路は水浸しになり、100年以上前から走っている地下鉄の駅構内は、雨漏りどころか水が噴き出して至る所にバケツが出される。またグランド・セントラル駅周辺には、1920年代に建築された築100年の高層ビルが林立しているし、最近は下層階にいくほどスリムな造りで、見るからに揺れには弱そうなデザインのビルもある。橋やトンネルのインフラも老朽化していて、大災害が起きた場合マンハッタンからの避難経路がズタズタになることが懸念される。

ニューヨークでめったに起きない地震を体感し、被害が少ないながらも大騒ぎになったこの街を見て、地震大国の日本に生まれ育った者として災害への日頃の備えがいかに重要かを改めて実感した。

■筆者プロフィール

末岡寛雄NNNニューヨーク支局長。「news every.」「news zero」のデスクやサイバー取材などを担当し、災害報道にも携わる。気象予報士。趣味は音楽鑑賞。

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