韓国大統領、狭まる包囲網 令状の容疑者「大統領」と明記 「弾劾」に現実味も…
韓国の尹大統領への“包囲網”が、狭まっています。前国防相や警察トップなど、周辺の人物が次々と逮捕される中、韓国の警察は11日、大統領府の家宅捜索に踏み切りました。令状には、「容疑者」として大統領の名前がありました。
◇
NNNソウル 西山聡記者(11日午後6時半ごろ)
「夜になりぐっと気温が下がってきたソウルですが、国会議事堂のすぐ近くでは、多くの人が集まって“弾劾賛成”の声をあげています」
気温が2℃まで冷え込む中、多くの市民が訴えた尹錫悦大統領の辞任。
参加者
「ひきょうに隠れていないで、非常戒厳を宣言した時のように、きちんとみんなの前で話してほしいです」
11日、警察が家宅捜索に踏み切ったのは、韓国大統領府。捜索令状には、容疑者として尹大統領の名前がありました。ところが、警察は大統領府側の足止めを受け、中に入るのを断念。軍事機密を扱う場所への捜索が法律で制限されているためで、今後も入れない可能性があるということです。
また、非常戒厳をめぐっては、次々と逮捕者が出ています。韓国警察は、警察トップの韓国警察庁の趙志浩(チョジホ)長官、ソウル警察庁の金峰埴(キムボンシク)長官を、内乱の疑いで緊急逮捕。内乱での疑いでは、金龍顕(キムヨンヒョン)前国防相も10日夜に逮捕されています。その金氏は、逮捕後に拘置所で自殺を図りましたが、命に別条はないということです。(韓国法務省幹部による)
さらに11日夜、新たな情報が明らかになりました。非常戒厳を宣言する3時間前、尹大統領が、逮捕された3人を関係先に呼び出し、非常戒厳の準備を指示していたと地元メディアが報じました。
韓国メディアによると、宣言後には警察庁長官に「国会議員を逮捕しなければならない」と、6回にわたって指示していたことも明らかに。
さらに、非常戒厳を宣言するには閣議で審議することが憲法で定められていますが、今回、閣議の時間はわずか5分だったと報じられています。中には反対の立場を示した閣僚もいたといいますが、十分に議論されないまま戒厳が宣言された可能性があります。
◇
NNNソウル 西山聡記者
「与党『国民の力』の本部前です。道路の両サイドに多くの人が集まっています」
11日、集まっていたのは喪服姿の人々。手には「香典」と書かれた紙を持ち、次々と白い菊の花を供えていきます。その前には「国民の力」の文字。行われていたのは、与党「国民の力」の“葬式”でした。
先週、野党が提出した弾劾訴追案の採決に与党がほとんど参加しなかったことなど、これまでの対応を糾弾するために集まっていました。
参加者
「先日の弾劾訴追案の採決に参加していない『国民の力』を糾弾し、次回の採決では必ず出席してほしいというメッセージを発信したいと思います」
与党への風当たりは日に日に強まっていて、解党を求める国民請願には、すでに23万人が同意しています。(韓国国会による)
◇
そんな中、最大野党は12日、尹大統領の弾劾訴追案を、再び提出する方針であることがわかりました。
韓国メディアによると、与党はこれまで、尹大統領の早期退陣で事態収拾を目指していました。ただ、与党代表は「弾劾以外、大統領の権限を奪う方法はない」として弾劾案に賛成することを示唆したのです。中には「今度は賛成を投じる」と公言する与党議員も。
与党からあと3人、造反者が出れば弾劾は可決されるという情報もあり、与党議員の動向が注目されます。
これに対し尹大統領は、早期の退陣は受け入れず、仮に弾劾案が可決されても、次の憲法裁判所で徹底的に争う姿勢を示しているといいます。(複数の韓国メディアによる)
野党は弾劾案について、14日午後5時からの採決を目指していて、予断を許さない状況が続きます。
(12月11日放送『news zero』より)