中国のSNSに“反日”氾濫──地方政府幹部「我々の規律は日本人を殺すこと」 当局、男児殺害は「偶発的」主張…どう対応?
中国南部の深センで日本人の男児が殺害された事件の後、地方政府幹部が悪意ある投稿をSNSに書き込んだと報じられました。中国では反日的な投稿がネット上にあふれていますが、当局は事件について「偶発的」と居直り、暖簾に腕押しの対応に終始しています。
藤井貴彦キャスター
「香港メディアによると、中国・四川省の地方政府幹部で『副県長』という立場にある人物が、『我々の規律は日本人を殺すことだ』などとSNSに書き込んだということです。カンゼ・チベット族自治州新竜県の黄如一副県長です」
「中国のSNS上でも『教育を受けた幹部として非常に残虐だ』など批判の声が上がっています。副県長の書き込みは、深センで日本人の男子児童(10)が殺害された事件の後に行われていて、現在、当局の調査を受けているということです」
「中国で日本の大使を務めていた垂秀夫さんは『中国のSNSには、悪意や誤解に満ちた投稿が氾濫している』と指摘しています」
「実際に、『現在(日本人学校には)スパイが浸透している』などといった悪意のある投稿は数百本存在するといいます」
「(日本人学校のスクールバスが襲撃された)6月の蘇州の事件や今回の事件の後には、微信や快手など中国の複数のIT大手が、中国と日本の対立をあおったり、有害な情報をねつ造したりしている一部のユーザーに対して、アカウントの閉鎖や処分を行っています」
「これは中国当局の意向を反映した新たな規制とみられていますが、それでも悪質な投稿は後を絶ちません」
藤井キャスター
「今後、日中両政府はこうした状況にどう対応しようとしているのでしょうか?」
小栗委員長
「国連総会の場を利用して日中の外相会談が行われました。日本の上川外務大臣は、中国のSNS上でのいわゆる“反日的な投稿”を早急に取り締まること、そして犯人の動機を含む一刻も早い事実解明と日本側への明確な説明を求めました」
「ただ、中国の王毅外相は偶発的な個別事案だとした上で、『日本側は冷静で理性的に、政治的な問題として拡大することを避けるべきだ』と述べたということです。これに対して、日本政府側が反論したかどうかは明らかになっていません」
藤井キャスター
「両政府立場はあると思いますが、議論が噛み合っていないですね」
小栗委員長
「こうした事件が起きるたびに、中国側は『偶発的で個別の事案』と強調しますが、こうした表現には『計画性はなく、反日的な思想や感情とは関係ない事件だ』と主張したい中国側の思惑が透けて見えます」
「中国当局は今回の事件について、いまだに『捜査中』だとしていて、拘束された鍾容疑者(44)の詳しい動機や背景は明らかにしていません」
小栗委員長
「今年6月には中国・吉林省で、アメリカ人の大学教員4人が刺され、中国人の男(55)が逮捕される事件がありました」
「この事件を偶発的だと説明する中国政府に対し、ニューヨークタイムズ紙によると、アメリカの大使は『透明性の欠如に不満を抱いている』と、捜査や情報開示のあり方を批判しました」
「垂さんは『日本政府も中国側の居直った対応を放置せず、アメリカのように強く訴える必要がある』と指摘しています」
水野美紀さん(俳優・『news zero』火曜パートナー)
「国と国の問題にする前に、犯人の動機が分からないというのは、(亡くなった男児の)ご両親はとても苦しいと思います。何で殺されなければならなかったのか、どうすれば助けられたのか、ずっと考えてしまうと思います」
「中国政府にはまず、10歳の子どもの命が奪われた悲劇や両親の思いに寄り添ってほしいと思います」
藤井キャスター
「今、人の命が奪われたとしても、暖簾に腕押しの回答でその場をやり過ごすことができる世の中になっています。噛み合わないやり取りにどう反応し、どう行動するかが試されている中で、交渉には強さと賢さが求められています」
「事件が起きている場所が距離的に遠いように思えるだけで、問題はすぐそばまで近づいていることに気付く必要がありそうです」
(9月24日『news zero』より)