日本「難民認定の壁」 企業とマッチングで“就労ビザ取得” NPOが支援
日本は世界各国と比べ、難民申請をしても認定率の低さがたびたび指摘されています。難民認定を待つ人を支援しつつ、「企業の戦力」として活躍してもらう新たな取り組みが広がっています。
暑い日が続く東京をスーツ姿で歩く男性。アフリカ・コンゴ民主共和国出身のNさんが、都内のIT企業に就職して約1年となります。
実はNさんは、母国から逃れてきた「難民」です。仕事で政府の汚職を見つけたことから逮捕されそうになり、命の危険を感じて亡命を決意したといいます。
一番早く取得できたのが日本の観光ビザだったため、2020年に来日。来日後は、見知らぬ土地で誰も頼れず、ホームレス生活を送ることになったといいます。
Nさん
「朝になるとトイレで歯磨きと洗顔をしました。少しでも身なりを整えたかったので」
■難民認定「希望は持たないように」
その後、支援団体のシェルターに移ることができましたが「ある問題」に直面します。
Nさん
「日本で難民申請し、認定を得るのは簡単ではないから、『あまり希望を持たないように』と言われたんです」
去年、日本が難民認定したのは202人。その割合は2.0%で、G7各国と比べても難民認定率が極めて低い状況にあります。Nさんは、難民申請から3年近くたった今も、結果が出ていません。
Nさん
「妻と離れて暮らすのは人生で最も辛いことです」
そんなNさんの生活を変えたのが、難民申請中の人の就職をサポートする団体「NPO法人WELgee」との出会いでした。
難民申請中の人は一時的な在留資格を持っていますが、企業に専門業務として雇用されれば就労ビザに切り替えられ、安定して日本に滞在することができます。これまでに、WELgeeのサポートで22人の就職が決まり、そのうち10人が就労ビザに切り替えることができました。
WELgee代表・渡部カンコロンゴ清花さん
「具体的な事業や企業の目指す方向性を一緒に担ってくれる人材」
「就労によって社会的な自立・活躍と、法的な在留資格という足場を作る」
「彼らが歩める道筋はいくつも増える」
Nさんは50社以上を受け、去年、IT企業にプログラマーとして就職しました。今年4月には就労ビザも取得し、妻を日本に呼ぶめども立ちました。
Nさんは「彼らが支えてくれたおかげで、私の人生が再び軌道に乗ったんです」といいます。
「仕事仲間であり友人、気軽に会話できる存在」と話す会社の同僚も、Nさんにとって大きな存在です。母国でIT関係の仕事をしていたNさんは、“即戦力”として活躍しています。
シティコンピュータ・川原 雅友社長
「IT関係にもっと力を入れていきたいと感じていて(彼の存在が)会社の強みになるんじゃないかなと」
「(難民申請中の人を受け入れることは)やってみたらそんなに難しくないので、一歩踏み出してほしい」
“難民認定を待つ人材”を、“企業で活躍できる人材”に。難民認定の少ない日本で新しい取り組みが始まっています。
Nさん
「幸せです」
「ここで働く…大好きです」