ウクライナ電撃訪問…広島サミット前“焦り”も? 岸田首相
岸田首相がウクライナの首都キーウを電撃訪問し、虐殺があったとされる街ブチャを視察しました。今回、“極秘”とされた電撃訪問には、G7の議長国として迎える広島サミットを前にした「焦り」もあったとみられています。
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日本時間21日午後9時すぎ、岸田首相の姿はウクライナの首都・キーウ近郊、ブチャにありました。住民の虐殺があったとされる街です。多くの遺体が見つかった教会で白い花を手向けると、当時の話に耳を傾けました。
岸田首相
「改めて今日、ブチャの地に足を運ばせていただき、こうした残虐な行為に対して強い憤りを感じます。平和を取り戻すために、最大限の支援を行っていきたいと思います」
岸田首相は、ロシアの軍事侵攻後初めてウクライナを訪れ、ゼレンスキー大統領との首脳会談に臨みます。2人の直接対面は、“極秘の電撃訪問”という形で実現しました。
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岸田首相のキーウ到着の12時間ほど前(日本時間21日午前8時前)、NNNのカメラはポーランド・ジェシュフの空港で、岸田首相を乗せたとみれる機体が着陸する場面を捉えていました。
その後、黒いセダンの車列が動くと、およそ1時間後、セダンの車列はウクライナとの国境に近いプシェミシルの駅に到着。列車の乗車口前に横付けされると、ボディーガードとみられる男性に警備されながら、岸田首相が姿を現しました。
現地時間21日午前1時20分すぎの真夜中に、ひっそりと列車に乗り換え、ウクライナへ向かいました。
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岸田首相は、前日にはインドを訪問し、モディ首相との首脳会談に臨み、日本時間20日午後10時すぎにホテルへと戻っていました。
岸田首相は本来、21日午後にニューデリーを出発し、日本に戻る予定でした。しかし、出発を14時間前倒しして、日本時間21日午前0時ごろに移動を開始。政府専用機ではなく、別のチャーター機でポーランドに移動し、列車でウクライナに向かったのです。
突然の“雲隠れ”に、滞在しているはずだったインドのホテルでは、記者に説明する外務省の報道課長も困惑した様子でした。
外務省・報道課長
「今、この時点で私も何が起きているのか、よくわからないのが率直なところ」
――首相がいるのかいないのか
外務省・報道課長
「確認中です」
記者側からは、「所在がわからないの、困るんですけど…」という声があがりました。
行く直前まで、多くの政府関係者が「ウクライナ訪問はない」と話すなど、徹底した情報管理の中、捉えられた岸田首相の姿。
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今回の極秘訪問には、“焦り”もあったとみられています。
日本は、G7の議長国として5月に広島サミットを控えています。日本以外のG7の首脳がウクライナを訪問している中、「議長国がウクライナに行けないのは、国際社会で恥さらしだ」(閣僚経験者)といった厳しい意見も上がっていました。
ゼレンスキー大統領との会談では、日本とG7からの「連帯と支援」を、直接伝えるとみられています。
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一方、ロシア国防省は21日、戦略爆撃機2機を日本海に飛行させたことを明らかにしました。日本をけん制する狙いがあるのでしょうか。
そのロシアには今、くしくも中国の習近平・国家主席が訪問中です。21日は、公式の首脳会談を行い、経済協力など2つの声明をとりまとめた上で、共同の記者会見に臨むことになっています。
(3月21日放送『news zero』より)