静かに命を……酷暑は「サイレントキラー」 対策改善で53兆円分の効果も 暑さは新しいフェーズに?【#みんなのギモン】
そこで今回の#みんなのギモンでは、「警鐘…酷暑は『サイレントキラー』?」をテーマに、次の2つのポイントを中心に解説します。
●世界で酷暑 働く人は…
●年々上昇 酷暑どこまで
加納美也子・日本テレビ解説委員
「今年の夏は本当に暑いですよね。この命に関わる危険な暑さは、日本だけではありません。国連が世界的な猛暑について緊急の対策強化を呼びかけるほどです」
「世界各地の暑さを見ていきましょう。強い日差しに照らされているスペイン・マドリードは、40℃を超える猛暑になっています。アメリカ・カリフォルニア州のデスバレーの気温計は 55℃を記録。あまりの暑さに、危険を知らせる看板も出ていました」
「東ヨーロッパのセルビアでは、すっかり干上がってしまった塩湖が見られました。ロイター通信によると、国内最大の塩湖がこのような状態になったのは初めてということです」
加納解説委員
「そして日本では7日、西日本を中心に猛暑日となり、午後 3 時時点の最高気温は三重県桑名市で 38.8℃、大分県日田市で38.3℃などを観測しました」
桐谷美玲キャスター
「本当に年々暑さが厳しくなっているなと感じます。私が子どもの頃は、夏休みは外で遊ぶという感じでしたが、今は暑すぎて自分の子どもを外で遊ばせられないので、どうしたらいいか困ってますね」
加納解説委員
「もはや、公園に日中誰もいないということもありますよね。東京都心でも最高気温は34.6℃となり、酷暑は和らいだもののまだまだ暑いですよね。東京消防庁管内では7日午後3時までに熱中症で10~97歳の男女27人(速報値)が救急搬送されました」
加納解説委員
「また、東京都監察医務院によると、東京23区で7月に熱中症の疑いで亡くなった方は速報値で123人に上ったことが分かりました。亡くなった年代は40~90歳以上ですが、最も多かったのは80代でした」
「また123人のうち、屋内で亡くなった方が121人にもなります。この屋内で亡くなった方たちで、エアコンがなかったのは28人。一番多かったのは、エアコンはあるのに使っていなかったという方で、79人と半数を超えています」
鈴江奈々アナウンサー
「ご高齢の方は、暑さもなかなか感じにくいという話を聞きます。実際に石川・輪島で取材した時に、移動販売をしている方が扉を開けたら、ご高齢の方がエアコンがあってもつけていなくて、暑さに(本人が)気付いておらず、慌ててお声がけしたと聞きました」
「(暑さを)感じにくいご高齢の方には積極的に声かけをしたり、熱中症警戒アラートが出ていたらその日は(エアコンを)つけると決めてつけていただくなど、積極的に利用してもらいたいですね」
加納解説委員
「異常な暑さは体へのストレスとなって、熱中症などを引き起こすばかりか、気付かぬうちに命を奪う『サイレントキラー(静かな殺し屋)』になるといいます。心臓や腎臓などの持病を悪化させ、死亡リスクが高まる恐れも指摘されています」
加納解説委員
「ILO(国際労働機関)が7月25日、厳しい暑さが労働者に及ぼす影響についての報告書を発表しました。その中で、過度な暑さにさらされている労働者は、世界平均で71%でした。最も多かったのはアフリカで、92.9%でした」
「日本を含むアジア太平洋地域でも世界平均を上回る74.7%で、4人に3人の労働者が、過度な暑さにさらされているという現状になります」
河出奈都美アナウンサー
「だいぶ前から、地球温暖化によって地球全体の気温が上がっているとは言われていましたが、子どもの頃はまだそこまで実感がありませんでした。ただ、もうここまで来ると、いよいよ命に関わる深刻な問題になってきているのかなと感じますね」
加納解説委員
「不安になりますよね。2000年以降、過度な暑さによる労働災害が増えた地域は、地域別では南北アメリカ、ヨーロッパ、中央アジアです。ILOは『労働者が暑さに慣れていない地域で気温が高くなったためではないか』とみています」
加納解説委員
「ILOのジルベール・ウングボ事務局長は、『世界が気温上昇とたたかう中、労働者を熱ストレスから守らなければならない。これは人権問題であり、経済問題でもある』と述べています」
「報告書では、過度な暑さによる労働災害を防ぐための対策を改善すれば、世界全体で最大3610億ドル、1ドル=147円で計算すると、日本円で約53兆670億円の逸失利益(事故などにより失った利益)を減らすことができるとしています」
加納解説委員
「国連のグテーレス事務総長も、『気温上昇に立ち向かい、人権に根ざしつつ労働者をいっそう保護しなければならない』と、緊急の対策強化を呼びかけました」
桐谷キャスター
「異常な暑さは不安にもなりますが、今後この暑さはどうなっていくんですか?」
加納解説委員
「世界がどれくらい暑くなっているのか。6月の平均気温を過去(1951年~1980年)のそれと比べた、アメリカのNASAが分析した画像(8月7日時点)があります」
「過去の平均気温より2℃以上上がっている赤の部分や、同じく 4℃以上上がっている黒っぽい赤の部分が10年前の2014年に比べて今年はぐっと増えています。世界規模で平均気温が上がっていることが分かります。日本は赤が濃くなっていますよね」
森アナウンサー
「人類が生まれてからの地球の歴史を見てみても、2000年以降の地球の温度は急激に上がってきていると言われています。温室効果ガスの排出削減をやっていますが、1年や2年我慢したらどうにかなるというレベルの上昇率じゃないですよね」
加納解説委員
「そうなんです。この暑さの原因について、気候変動・異常気象に詳しい東京大学の中村尚教授は『温暖化に伴い、1980年代から気温の上昇が続いている中で、日本などは去年急激に上がり、さらに今年は去年を上回るぐらい上がった地域がある』と指摘します」
「その理由の1つに、上空の偏西風の蛇行があるといいます」
加納解説委員
「北よりに蛇行した地域では、高気圧が張り出して気温が上がります。温暖化に加え、偏西風の影響で高温という異常気象が発生しています」
「気になるのは、この暑さがいつ収まるかですが、中村教授は『来年の状況まで注視していく必要がある』としながらも『この暑さがニューノーマル、つまり当たり前になる可能性がある』と言います。既にそのような新たなフェーズに入ったと危惧しなくてはいけないレベルに達した可能性があると指摘しています」
鈴江アナウンサー
「命を守るためにこの暑さに対応することと、そもそもこの気温上昇に対してできることを総力戦でやっていかないといけない時期に入っていますね」
加納解説委員
「まずはこの暑さから自分の身を守る対策をしっかりと取った上で、世界的な酷暑に今後も注視していくことが大切です」
(2024年8月7日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)
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