飲食店の暑さ対策 「過酷な環境から従業員守る」人気ラーメン店が“冷やし専門”に
連日厳しい暑さが続いていますが、そんなときに食べたくなるのが“ひんやりグルメ”です。ある人気ラーメン店は、今年から夏限定で冷やし専門店に。そこには従業員の働く環境を改善したいという思いがありました。
連日続く危険な暑さ。夏バテも乗り切れそうな“ひんやりグルメ”が登場しています。
ベトナムを代表するお米を使った麺「フォー」を提供する東京・文京区のベト屋・本郷店。ゆで上がった麺を温かいスープに入れると思いきや、氷水でしめ、完成したのは店の新メニュー、冷たいフォーです。
ベトナムしょうゆをベースにした“冷やし”専用の酸味のあるタレでさっぱりいただける一品です。
お客さん
「これどうやって食べるのがいいんですかね?」
「(ベトナムしょうゆを)全体にかけちゃって大丈夫です」
お客さん
「きょう外出しないといけなかった。昼は冷たいものがいいかな」
フォーの本場、ベトナムも暑い国のイメージがありますが…
ベト屋 ハー店長
「ベトナムでは冷やしはありません。ベトナム人は冷たい食べ物、あんまり食べない」
日本では冷やし中華などを食べる文化があることから、今回の冷やしフォーを考案したといいます。
この暑さに大きな決断をしたお店も現れました。普段はお客さんが絶えない人気ラーメン店「ソラノイロ」ですが…
ソラノイロ商品開発部長 大庵康嗣さん
「今、夏限定で冷やしのメニューのみを出しております」
提供しているのは冷たい麺のみ。夏季限定で“冷やし”専門店になっているのです。(8月末まで※暑さにより延長の可能性あり)
すだちを搾っていただく夏だけの特別つけ麺「ざる中華二色(※1400円)」や、にんじんをベースにしたコクのあるスープが特徴のレギュラーメニューも冷たくアレンジされています。(冷やしベジソバ※1300円)
常連客
「最初はラーメンないのかと。食べてみたらおいしい、冷やしも何回も食べた」
お客さん
「暑いのでちょうどよかった」
そこには、冷たくて食べやすいだけじゃない切実な理由が…
ソラノイロ商品開発部長 大庵康嗣さん
「店内がすごく暑くて、厨房(ちゅうぼう)内が50℃くらいいっちゃうときがあった。スタッフも熱中症になっちゃう状態が続いていた」
常に加熱が必要なラーメンスープ。ただでさえ暑い環境の中、この酷暑も加わり、対策を考えていたといいます。
そこでスープは“冷やし”のみに限定し、すべてのコンロをガスからIHに変更。その結果、もともと50℃近くになることもあったという厨房の温度は35℃に。店員さんも汗をかいていない様子です。
厨房の熱気が伝わり、以前は35℃前後になっていたという客席も27℃に抑えられています。
お客さん
「たしかに中、涼しかったです、熱は感じなかった」
利益が見込める温かいラーメンよりも、危険な暑さから従業員の命や客の安全を守ることを優先した今回の決断。
ソラノイロ商品開発部長 大庵康嗣さん
「ラーメン業界、温暖化が進んで、ずっと暑い中働くのがよくない」
危険な暑さへの対策をする店は他にも…
キーンと冷たいかき氷。冷房の効いた店内は満席です。しかし、その店の外では…
記者
「この暑さの中、みなさん、列になって店の外で待っています」
ジリジリと太陽が照りつける中、じっと入店を待つお客さんがいました。
列に並ぶお客さん
「今のところ15分くらい(待っている)、相当暑いっす」
そこで、この店が導入したのが…
yelo 三ッ野寿美礼さん
「ファストパスというものを販売し始めました」
800円のチケットを購入すれば、優先的に入店することができるといいます。
yelo 三ッ野寿美礼さん
「暑いところでずっと待つことになるので、(ファストパスが)熱中症対策になるんじゃないかと」
土日には最大1時間以上の待ち時間ができるというこのお店。チケット代を原材料や人件費にあてたいという狙いもありますが、危険な暑さから行列に並ぶお客さんの安全を優先したということです。
年々過酷さを増す暑さ。飲食店も工夫で乗り切ろうとしています。