海外で働きながら語学力アップ“理想と現実”……滞在期間1年“ワーホリ”に若者が注目『every.16時特集』
海外で語学を学びながら働くことが認められている「ワーキングホリデー(ワーホリ)」の制度。円安で留学にかかる費用が増えている今、若者たちが注目しています。その渡航者数が多いオーストラリアで、生活費を稼ぎながら語学力をつけている日本人を取材しました。
東京・渋谷にあるビルの一室に集まっていたのは、約100人の若者たち。そこで行われていたのは…
司会
「短期のご留学ですとか、ワーキングホリデーのご案内をしております」
海外留学の説明会です。特に若者たちの興味を引いていたのは…
社会人2年目(22)
「海外で仕事しながら、いろんな人と関わりたいなって」
every.
「考えているのは留学ですか?」
社会人2年目(22)
「ワーキングホリデーです」
ワーキングホリデー、通称“ワーホリ”と呼ばれる制度です。ワーホリとは、日本が30の国と地域と協定を結んだ制度。海外で語学を学びながら、働くことが認められています。対象は原則18歳から30歳まで。滞在期間は基本1年間。円安で留学にかかる費用が増えている今、生活費を稼ぎながら、語学力アップも期待できるとして、注目されているのです。
ここ数年、希望者が増加傾向にあるワーホリ。説明会には17歳の高校生も。
高校3年生(17)
「アルバイトをしていて、お店に外国人の方が来ることがすごく多いので、しゃべれないのも結構、悔しくて。単語単語をちょっとずつしかできないから、思いを伝えられないのはすごく悔しいなと思います」
インバウンドがワーホリを意識するキッカケに。英語の必要性を強く感じたといいます。
そして、多くの若者たちが語ったのは…
大学2年生(20)
「何か新しい自分を見つけられるかなって思って」
社会人2年目(22)
「行ったらきっと自分に自信がつきます」
大学3年生(21)
「自分の将来のキャリアアップとかのために、頑張りたいなと思います」
実際にワーホリで海外に向かった若者は、どんな生活をしているのでしょうか。ワーホリでの渡航者数が最も多いというオーストラリアを取材しました。
シドニーで出会ったのは、2023年5月からワーホリを始めた、濱口さん、26歳。
every.
「いま着ている緑の服ってなんですか?」
濱口さん(26)
「これは病院の制服です」
日本で看護師をしていた濱口さん。オーストラリアでの仕事は、看護師のサポートをする「アシスタントナース」です。この日は勤務前にスーパーで買い物。
濱口さん(26)
「(英語)鶏肉を500グラムください」
日本にいる頃は、なかなか英語が上達しなかったといいますが、今では日常会話はお手の物。濱口さんがスーパーで気にしていたのは…
濱口さん(26)
「この黄色いのが貼られているのが割引のシールで、おいしそうで安くなっていたら買う」
節約のため、食事はほぼ自炊。給料を聞いてみると…
濱口さん(26)
「(手取りで)月50万円くらい…日本にいた時の大体、倍近く」
しかし、オーストラリアは日本以上に物価高が続いていて、月50万円の給料をもらっていても、贅沢な暮らしはできないといいます。
自動販売機で売られているミネラルウォーターはおよそ450円。こちらのオムライスは2400円。
濱口さん(26)
「今まで安いと思って買っていたものが、いつの間にかそこまで安くなくなっていたりとかするので、前よりも気軽に物を買いづらくなった」
それでも、日本との働き方の違いに魅力があるといいます。
濱口さん(26)
「シフトの時間しか病院にいないので、日本みたいに早めに来て着替えて、患者さんの情報を収集して、みたいなのが全部ない」
日本では早めに職場に来て、準備していたといいますが、オーストラリアではシフト通りに働き、残業もありません。
every.
「きょうは仕事何時から?」
濱口さん(26)
「きょうは午後2時から始まります」
every.
「何時に出勤すればいいんですか?」
濱口さん(26)
「うーん、午後1時57分ぐらいですかね」
将来は、ワーホリで培った英語力を活かした仕事をしたいそうです。
次に出会ったのは…梶川さん、26歳。
シドニーの中心部にある5つ星ホテルで働いています。
梶川さん
「自分はベルデスクといって、ドアマンとかお客さんを最初に出迎える係」
ベルデスクは、入口で宿泊客を案内したり、荷物を運んだりするのが主な仕事です。
女性
「Hi」
梶川さん
「HI. How are you?」
女性
「Good thank you.」
もともと、日常会話程度の英語はできていましたが、ビジネス英語を学ぶためにホテルで働くことを選んだといいます。
梶川さん
「レストランは地上階ですので、降りて左に行ってください」
女性
「わかったわ」
梶川さん
「ランチを楽しんで」
現在のホテルの給料は、月におよそ20日、1日8時間ほど働いて…
梶川さん
「日本円で(手取り)40万円ぐらい」
順風満帆そうに見えますが、大変なことも多かったといいます。
梶川さん(26)
「シドニーで仕事を見つけるのは大変って言われていて…。携帯電話で、ホテルって調べて出てくるところを、片っ端から50件ぐらい。それもメールじゃなくて、自分の足で歩いて回って」
履歴書を配り歩くも、返事があったのは数件。仕事が見つかっても苦労は続き…
梶川さん(26)
「ブワッてしゃべられたことも、ちょっと理解できなくて、早すぎて会話が…ついていけない時もあった。日本でホテルの経験もないので、英語だけじゃなくて、最初はホテルの用語も覚えるのが結構大変で」
それでもワーホリを続けた理由は…
梶川さん(26)
「海外で働くことは、自分が日本にずっといたら、自信なくてできなかったことなんで、ワーホリを終えた時に、自信になるんじゃないかなと思っています」
この取材からおよそ3か月。ワーホリを終えて、日本に帰国した梶川さん。
ワーホリから帰国 梶川さん(26)
「働きながら英語が伸びたっていう部分では、この1年間は自分にとっては大きかったと思います」
英語力の向上が実感できた一方、実際に海外で生活すると、行く前に想像していたよりも苦労が多かったといいます。
梶川さん(26)
「海外の方は、すごい日本人ということには興味を持っていただけるんですけど、自分からいかないと仲良くなってくれないので。思ったよりも友達ができなかった」
そこで、日々意識していたのが…
梶川さん(26)
「バス停で誰か待っていて時間がある時とかは、隣の人と会話をするのを心がけて。ちょっとでも何か広がればいいなっていうので、話したりとか会話につなげていました」
自分から積極的に話すことが大切だったといいます。しかし、その会話の中にも苦労が…
梶川さん(26)
「海外の人は結構、思ったことストレートに言ってくるので、誰に嫌われても好かれてもいいってメンタルでいかないと、最初は疲れちゃうかなというふうに思います」
実際にワーホリをする人の中には、コミュニケーションがうまくとれず予定よりも早く帰国する人や、仕事探しが難航し、公園でテント生活をする人もいるといいます。
1年間のワーホリを終えた梶川さんの今後は…
梶川さん
「ワーキングホリデーに新しい国に行こうと考えていて、いまはイギリスを視野に」
現実は甘くないという、ワーホリ。チャレンジ精神とともに強い覚悟を持つことも必要です。
(8月12日『news every.』16時特集より)