教員志望の大学生が高校生に「闇バイト加担防止授業」を実施!川柳、グループワーク、模擬実演など多彩な授業方法で呼びかけ「闇バイトは、“犯罪実行者募集”の誘い」
SNS上で募集される“闇バイト”による被害が、日々メディアを騒がせている近年。愛知県警本部監修のもと、教師志望の大学生たちが高校生向けの「SNS非行・被害防止教室」を行った。
「SNS非行・被害防止教室」で教鞭を執ったのは、『中京大学』で教職課程を学ぶ4年生43人。授業は愛知県内の高校で実施され、同校の2年生・3年生の各学年9クラスにて、大学生たちによる50分間の授業が行われた。
SNSを起点をした非行・被害を防止するべく、「愛知県内の高校」・「愛知県警本部」・「中京大学」の3者が協力して行われた「SNS非行・被害防止教室」。昨年から続く取り組みで、2年目となる授業テーマには、若者たちの加担や被害の増加が懸念されるい“闇バイト”が選定された。
年齢の近さから、高校生たちにとっては“先輩”のような存在の大学生。そんな大学生たちは教師を志す“教師のたまご”、披露した授業は愛知県警本部が監修した学びも深い授業だ。
この“3者協力”がもたらす相乗効果について、本企画に携わる『中京大学』教養教育研究院・久野弘幸教授は、「教職課程を学ぶ大学生たちにとって、自分たちで教材研究をして、実際の教室で高校生を対象に授業をさせてもらえる機会は非常にありがたい」と話し、「県警にとっても、自分たちより“年齢が近い”大学生が授業を実施した方が効果的。高校にとっても資料を配布して終わってしまいがちな呼びかけを、高校生にとって“身近な先輩”から話を聞くことで説得力のある呼びかけとなる」と、それぞれのメリットを明かす。
大学生たちは2~3人ずつチームを作り、チームごとに1クラスの授業を担当。1クラス約40人、同日に全18クラスで行われたことから、今回の試みで約500名もの生徒たちが授業を受けたことになる。
授業後、高校生たちからは「大学生の方々が優しく教えてくれて、楽しく学べた」、「とても分かりやすかった」など感想が寄せられ、なかには「自己紹介から面白くて授業に引き込まれた」、「普段はない形の授業で楽しかった」など、大学生たちのユーモアを利かせた授業内容にも関心が集まった。
『中京大学』久野教授曰く、「教材研究しながら、作り込んでいく経験」も学んだ大学生たち。実際に、どのような授業を高校生たちに披露したのだろうか。
愛知県警本部監修のもと行われた今回の授業。久野教授によると、大学生たちは授業内容を考えるなかで、県警で闇バイトなどSNSが関係する犯罪や被害状況などを実際に学び、知識を深めていったという。なかでも、大学生たちの心を揺さぶったのは、「“闇バイト”は、“犯罪実行者募集”の誘い」という県警からのメッセージ。「これはかなり、学生たちのなかでも意識した部分だと思います」と、久野教授は話す。
知識はもちろん、授業の展開や見せ方にも“大学生ならでは”の工夫を落とし込まれていた各授業。久野教授によると、SNSの画面を用いたスライドで実際に闇バイト募集時に行われるやり取りを紹介したり、そのやり取りを生徒同士で実演してみるなど、“当事者意識”を体感できる授業が行われていたようだ。
なかには、「どちらが闇バイトの募集か考えてみよう!」と題した架空の求人募集例を起用したワークシートを準備したり、闇バイト防止をテーマに川柳を詠んでみるなど、趣向を凝らした展開もみられたという。
久野教授らは授業後、高校生たちを対象にアンケートを実施。約9割が特殊詐欺・闇バイトに対して危険を感じており、約7割以上が同犯罪に関して理解が深まったと答えた。一方で、「インスタグラムやLINEでも闇バイトに誘われることがある」、「仲の良い友達からの誘いは危険だと思っても断りにくい」という意識調査で、「はい」という回答が少数寄せられるなど、高校生を取り巻くSNS環境の実情を知るキッカケにもなったようだ。
大学生たちにとっては、在学中に経験できる最後の模擬授業となった今回。
学生たちからは、「闇バイトについて知識を深めて臨んだつもりだったが、新しい視点を生徒たちからもらえることができ、充実した50分間だった」、「授業準備の段階では浮かばなかったアイデアがひらめいたり、生徒が出してくれた意見と自分のアイデアを融合することができた」など感想が寄せられ、また「勉強を教える教師である自分が、生徒以上に勉強をすることが大切。学び続ける姿勢で教員の仕事に携わりたい」と、今後の姿勢につながる経験を得た学生も。
「学生たちに“手応え”をもって、教員になってほしい」という想いも、久野教授が本企画を実施する狙いのひとつ。「しっかり自分たちで教材研究をしながら、作り込んでいく経験をするという意味では、教員養成を預かる立場としてもとても嬉しいです」と笑顔をにじませる。
続けて、「将来教員を選ばない学生にとっても、自分のクラスを預かって授業をする最後の機会になるかもしれない。(本企画を通して)学科に在籍しているすべての学生たちが、生徒たちとつながったり、自分たちが行った授業に生徒がビビッドに反応していく経験を得た上で、教員免許を取得してほしいです」と、来年卒業を迎える教え子たちへの想いを語った。