【解説】急激な気温差で「ヒートショック」に注意 高齢者の死亡“交通事故の2倍”? 3つの予防策
師走に入った12月1日、東京都では最高気温が前日より7℃も急降下しました。この急激な気温差で注意したいのが、命にも関わる「ヒートショック」です。
◆高齢者…交通事故より多い死者
◆“○○で血圧急上昇”
◆“ショック”防ぐには?
以上のポイントを中心に詳しく解説します。
1日朝は、全国的に多くの地点で今季一番の冷え込みとなりました。
特に、この時期としては暖かかった前日(先月30日)との気温差が激しくなりました。東京の最高気温は、先月30日は20.6℃だったのが、1日は13.6℃と7℃も急降下しました。
札幌では、先月30日は6.1℃でしたが、1日の最高気温は-3.5℃ということで、今季初の「真冬日」となる見込みです。
こうした冷え込みの中、お風呂に入る前に見てほしいのが、日本気象協会と東京ガスが開発した「ヒートショック予報」です。
これは気温の予想をもとに、「屋内屋外」「昼夜」の気温差などから、3段階でヒートショックのリスクを表したものです。1日は、沖縄を除いた全国ほぼすべての都道府県で、最もリスクが高い「警戒」となっています。
ヒートショックとは、急激な温度の変化によって、体がダメージを受け、血圧が大きく上下することで、失神したり、心筋梗塞や脳卒中などが起きたりする健康被害のことです。
ヒートショックに限りませんが、政府は、“11月から4月の寒い季節は、入浴中に気を失って溺れる事故が多くなる”と注意を呼びかけています。特に去年は、浴槽内で溺れることで4750人の高齢者が亡くなっており、これは、交通事故で死亡した2150人の約2倍に上っています。
特に、ヒートショックへの注意が必要な“好み”があります。1日、街の人にも聞いてみました。
70代男性
「辛いものかね」
70代夫婦
「サウナ!」
「お酒が好きな人」
50代男性
「高血圧と連動して塩分が好きな人かなと」
70代男性
「熱い湯、熱いお風呂はやばいよ」
色々な“予想”があがりましたが、気をつけてほしいのは「熱いお湯」と「長湯」が好きな人です。給湯機などのメーカー「リンナイ」が調べたところ、60代の約35%が自宅のお風呂を「42℃以上」と、熱めに設定しているということです。
入浴と健康の関係に詳しい東京都市大学の早坂信哉教授は「高齢者になってくると、温度を感じる皮膚のセンサーがだんだん鈍くなり、ぬるいお湯だと満足しにくい」と指摘しています。
熱いお湯とヒートショックがなぜ、つながるのでしょうか。「急激な温度差」と「血圧」が関係しています。
冬場、暖房のきいた暖かい部屋から、寒い脱衣所で服を脱ぎ、寒い浴室に入り、さらに熱いお風呂に入る。こうした行動で、血圧はどうなるのでしょうか。
早坂教授によると、暖かい部屋では血圧は安定していますが、人は急激な寒さにより血管がキュッとしまり、血圧が上がりやすくなります。そのため、脱衣所で服を脱ぐ瞬間、最も血圧が上がり、さらに一気に上昇するといいます。
寒い浴室でさらに血圧が上昇します。そして、熱いお湯に入るといったんはさらに血圧が上昇しますが、体が温まってくると一転、それまで縮まっていた血管が広がって急激に血圧が下がるということになります。
こうした急激な血圧の変化によって、脳内に血液が回らず、くらくらとして意識を失うこともあるそうです。そのため、冬場の熱いお風呂や長風呂は特に要注意です。
(1)入浴前に脱衣所や浴室を暖めておく
今年の冬は“節電で暖房は控えめ”という人も多いと思いますが、命には代えられません。もし暖房器具があるなら、脱衣所も浴室も暖めておきましょう。暖房器具がない場合は、シャワーでお湯を張ることや、また、お湯が沸いてきたらかき混ぜて湯気を立てておくのもオススメです。
(2)長湯・熱いお湯はNG
お湯に入るときは心臓から遠い足先の方から「かけ湯」をして体を慣らしてから入ることと、「41℃以下」「10分程度」を目安に入るのも大切です。
(3)食後すぐ・飲酒後などの入浴は避ける
特に高齢者は、食後に血圧が下がりすぎることもあります。飲酒も血圧を下げるので、「お酒好き」の人もヒートショックには要注意だということです。
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家族と同居している場合は、お風呂に入る前に「入るよ」と一声かける、また、家族がお風呂に入っている時には「長すぎないかな…」などと気にかけて、異変を感じたらためらわずに声をかけるということも命を守るために大切です。
(2022年12月1日午後4時半ごろ放送 news every. 「知りたいッ!」より)