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特集「キャッチ」大雨で土砂が流れ込んだ温泉施設「みのう山荘」は今 再建へ険しい道のり 復活を待つ常連客も 福岡

2024年7月14日 8:17
特集「キャッチ」大雨で土砂が流れ込んだ温泉施設「みのう山荘」は今 再建へ険しい道のり 復活を待つ常連客も 福岡
大雨から1年 みのう山荘は今
特集「キャッチ」は、1年前の記録的な大雨についてです。大雨で大きな被害を受けた福岡県久留米市には、いまだ休業が続く温泉施設があります。再建への険しい道のりを歩む女性店長の姿を追いました。

■みのう山荘 店長・安井那称子さん(29)
「1年たって自分の中ではめまぐるしく、いろんなことが変わっていって、早かったです。」

山肌がむき出しとなった場所に立つ安井那称子(ななこ)さん(29)。1年前までは、ここにあった職場に通うのが当たり前の日々でした。

日帰り温泉施設、久留米市の「みのう山荘」。筑後平野を一望できる、源泉掛け流しの展望露天風呂が人気で、20年にわたり観光客や地元の人に愛されていました。安井さんはおよそ3年前から店長を任されていました。

しかし、2023年7月10日。記録的な大雨で、久留米市の山間部で土石流が発生し、1人が亡くなるなど甚大な被害が出ました。

みのう山荘も裏山が崩れ、流れ込んだ土砂に浴場を破壊され、休業を余儀なくされました。

あの日から10か月がたった2024年5月、施設の解体は終盤にさしかかり、崩れた裏山の整地作業が行われていました。

■安井さん
「特にここの一番大きかった建物を取り壊す時は、自分が毎日働いていた場所だったので、すごく寂しい気持ちの方が強かった。工事が進んでくるにつれて、逆に何もなくすっきりなってくると、先に進んでいるなという気持ちの方が強くなってきたので、今は前向きな気持ちです。」

一方で、大雨の被害に遭ったこの場所で再び営業していいものか、不安がよぎるといいます。

■安井さん
「また、去年の10日みたいな大雨がことしも降るのかなとか想像すると、ここで再建をした後にまた大雨が降って被害が出ないかなとか、やっぱり考えてしまう。」

行政が主体となって行った建物の解体と整地の作業は、7月中に終わる見通しです。その後、施設を再建することになりますが、行政から安全性が認められ「建築許可」が降りるかどうかは、今のところ未知数です。さらに。

■安井さん
「現実的な問題、費用面で苦戦しているところがあるので。」

施設の再建には少なくとも1億円以上はかかると見込まれています。2024年2月末までに再建が完了すれば費用の3分の2が福岡県から補助されますが、それ以降になると全額が自己負担となります。

施設の解体には久留米市から補助金が出たものの、営業できず売り上げが途絶えた中で、経済的な負担が重くのししかかります。

「みのう山荘での時間が救いだった」

安井さんは今、みのう山荘から車で20分ほど離れた、大分県日田市にある姉妹店で働いています。

■安井さん
「いらっしゃいませ、こんにちは。しげさん、いつもありがとうございます。」

■西村茂行さん(75)
「きょうもお世話になります。」

■安井さん
「この間、ありがとうございました。シシトウ。」

安井さんが親しげに「しげさん」と呼ぶのは、常連客の西村茂行さん(75)です。

みのう山荘に15年以上通っていて、休業後は月に3、4回ほどのペースでこの姉妹店を訪れています。

■西村さん
「ここに足を運んで、わずかばかりでもお手伝いをする。そういうことしかできないのかな。もし、みのう山荘がなかったら、ひょっとしたら自分は精神的にまいってしまって、うつ状態みたいになっていたかもしれない。」

高齢の両親のため、食事などの世話をしていた西村さん。疲れを感じる時もありましたが、そんな時に心と体の「癒やし」になったのが、みのう山荘から見える景色でした。

■西村さん
「みのう山荘に行って、ゆっくりお湯に入ってぼーっと下界を眺めて、湯上がりのコーヒーを飲みながら、久大線がとことこ走っている情景を見ながら、なんとなくリラックスする。ぼーっとする時間が救いだった。」

姉妹店に顔を出してくれたり、募金をしてくれたり。みのう山荘の復活を願う常連客たちの思いにも支えられ、安井さんは再建への険しい道を進みます。

資金確保の足しになればとオリジナルの石けんの販売を、姉妹店の店頭やインターネットで始めました。もともと、被災前からお土産として開発を進めていたもので、みのう山荘の温泉水を使う予定でしたが、姉妹店の温泉水を使うことにしました。

■安井さん
「今、こういう商品開発に着手するのは厳しいんじゃないかなと言われたが、どうしても自分が、みのう山荘の再建にできることをやりたい、力になりたいというのが大きくて。絶対頑張るのでと言って。」

石けんはこれまでにおよそ500個売れたといいます。先行きは楽観できませんが、それでも決して諦めてはいません。

■安井さん
「1年たっても、いまだに応援してくださる皆さまのおかげで本当に私たちも頑張れているので、ここでの再建をもって皆さまに恩返しができるように、感謝を伝えていけるように、さらにこれからまた先、頑張っていきたい。」

みのう山荘を愛し、支えてくれる人たちのために。安井さんは復活を信じて、一歩一歩、前に進んでいます。

※FBS福岡放送めんたいワイド2024年7月10日午後5時すぎ放送

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