【ソナエル】「まさか」は300年前にも起きていた 大規模な土石流に襲われた地区 古文書に残された「備え」の手がかり 福岡
うずたかく積まれた流木。建物の屋根は崩れ落ちたままです。久留米市田主丸町の竹野地区は今なお土石流の爪痕が残ったまま、ことしも梅雨を迎えました。
2023年7月の記録的な大雨で、久留米市田主丸町を襲った土石流。耳納山地のふもとにある竹野地区では複数の住宅が飲み込まれ、男性1人が犠牲になりました。
一変したふるさとを目の前にして、住民たちは「想定外だった」と口をそろえました。
■被災した人
「まさかこんなことに。」
「土砂災害にうちが遭うとは思っていなかったから。」
「まさか谷が全部埋まってしまうとか、考えられなかった。」
押し寄せた土砂は、自治体が設定する土砂災害警戒区域の外にも流れ込みました。「まさか」の土砂災害に見舞われた田主丸町。実は過去にも、ほぼ同じ場所で土石流に襲われていました。
■九州大学大学院 工学研究院・西山浩司 助教
「ここに関しては、ほぼ300年前と同じことが起きている。」
九州大学大学院の西山浩司助教は、およそ300年前の古文書「壊山(くえやま)物語」を研究しています。壊山物語には享保5年、1720年に耳納山で土石流が発生し、50人以上が死亡したと記されています。
■西山助教
「岩石、水とともに流れ来たりと。一番ひどかったのが、徳間村と竹野村。大変なことになりました。命からがら、なんとか助かっている人が多かったですよと。今回の被災地とほぼ同じ場所が、当時も大変なことになっていたということが記載されています。」
さらに、被害の範囲についても去年の土石流と共通点があると指摘します。
■西山助教
「竹野村はこの辺りになるが、(土石流が)この辺りをまっすぐ北に抜けていって、こういったところも被災した。現在で言う、警戒区域の外。」
300年の時を経て再び繰り返された災害。先人たちが伝えた記録は、防災に生かされたのでしょうか。
地域の歴史を知り、リスクを知る
19日、竹野地区の小学校では、地元住民が参加して防災の勉強会が開かれました。そこで、西山助教が警鐘を鳴らしたのが、自らの人生経験に頼りすぎることの危険性です。
■西山助教
「人間の人生って、たかだか80年や90年。災害がほぼ同じ場所で起きるのは何百年に1回。ということは、経験しないんですよ。 その状態で被災すると、まさかここで起こるとは思わなかったとなる。」
さらに、西山助教は「災害の脅威を身をもって経験した被災者が、後世に教訓を伝えていくことも重要だ」と呼びかけました。
■地元の人
「いつ起きるか分からないのは去年で身にしみて分かりました。やっぱり早く逃げる、家族を避難させる。これが第一だと思いました。」
■西山助教
「その地域でどのような災害が起きてきたのか、知る必要があると思います。また、リスク。どこに河川があるか、背後に山・谷があるか、再度チェックして、これから起こる災害に備えていく。」
地域の歴史を知り、伝え、「まさか」をなくしていく。大雨のシーズンを迎えた今、命を守るための事前の備えとなりそうです。
※FBS福岡放送めんたいワイド2024年6月21日午後5時すぎ放送