感じる母国と世界の温度差 福岡で暮らすウクライナの人々は今 ロシアによる軍事侵攻から3年
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まって2月24日で3年となりました。福岡で暮らすウクライナ人女性は、戦闘の長期化による母国と世界との「温度差」に懸念を抱いています。
福岡県産の真っ赤な「あまおう」に、色とりどりのアクセサリー。いずれも、福岡で暮らすウクライナの避難民などが手がけました。ロシアによる軍事侵攻から3年となるのを前に、ウクライナへの支援の輪を広げようと開かれた販売会です。
■イリナ・パブレンコさん(38)
「これはブレスレット。ウクライナの刺しゅうです。」
手作りしたウクライナ伝統のブレスレットを紹介する、イリナ・パブレンコさん(38)。日本人の夫との結婚を機に15年間、福岡で暮らしています。
■イリナさん
「ありがとうございます。」
イリナさんは現在、県内のウクライナ人たちでつくる「福岡県ウクライナ協会」の会長を務めています。ロシアによる侵攻が始まった直後から、母国や避難民のために活動を続けてきました。
■イリナさん
「ウクライナの文化や、こういう伝統品があることを知ってほしい。頑張ります。」
イリナさんは、飲食店などでアルバイトをしながら、外国人向けの相談窓口でボランティアもしています。忙しい日々ですが、コツコツと取り組んでいるのが、日本に来る前から続けているアクセサリー作りです。
■イリナさん
「刺しゅうみたいにビーズ使ったり穴を開けたりして、結構、時間がかかります。気持ちがイライラしている時は、家に帰ってブレスレットを作る。ブレスレットが売れたら、お金がもらえて支援ができます。自分のためのリラックスになって、国のための手伝いもできます。」
イリナさんとともにブレスレットを作っていたのは、イリナさんの母親、テティアナ・パブレンコさん(59)です。日本語を話すことはできません。
ロシアによる侵攻が始まった3年前、イリナさんの両親はウクライナで暮らしていました。
■イリナさん
「戦争が始まった時に(両親を福岡に)呼んだ。来てくださいと。でも、お父さんはまだ58歳だったので、ウクライナを出られない。お父さん一人だと大変。お母さんはお父さんと離れられなかった。」
成人男性は原則出国禁止となったため、両親は2人ともウクライナに残ることになりました。
しかし、侵攻開始から9か月後、父親は病気で他界し、母親のテティアナさんは翌年1月、娘を頼って福岡に避難しました。
■母・テティアナさん
「戦争中だから落ち着かないし(日本に来て)楽しいことはない。」
■イリナさん
「毎日ニュースを見て、ウクライナへの心配がある。60年ウクライナに住んでいたから。」
これまでの戦闘で、ウクライナではおよそ1万2700人の民間人が死亡したとされています。また、ウクライナ軍の死者は4万6000人以上、ロシア軍の死者も9万5000人以上に上っています。
犠牲者が増え続ける中で、アメリカのトランプ大統領は、停戦交渉の仲介役として戦闘を終結させたい考えです。
■アメリカ・トランプ大統領
「プーチン氏とは非常に良い話し合いができたが、ウクライナとはあまり良い話し合いができなかった。」
“ロシア寄り”の発言を繰り返していて、アメリカとヨーロッパの足並みに乱れが生じています。
関係各国の思惑が交錯する中、イリナさんは母国と世界との温度差を感じ始めていました。
■イリナさん
「ウクライナの戦争が終わらない。 日本人だけじゃなくて世界の人にサポートしてほしい。毎年、支援も少なくなってきている。ほかの国の人は3年たって、ウクライナの戦争が普通になってきている。ロシアからの攻撃はもっとひどくなっている。」
ロシアの侵攻開始からちょうど3年となった2月24日、イリナさんは福岡で暮らすウクライナの人たちに呼びかけ、交流会を開きました。テーブルに広げたのは母国の象徴、ウクライナ国旗です。
■イリナさん
「話を始めましょう。何でもいいので、それぞれの話を聞かせてください。」
避難民や留学生など7人のウクライナ人が参加し、日々の不安や悩みを語り合いました。
■参加したウクライナ人女性
「ただ会って話すような、場所やイベントが少ないです。」
■イリナさん
「もっとたくさんそういう機会があればうれしいですね。5人でもいれば十分ですよね。」
■参加したウクライナ人女性
「ウクライナ人の人たちは同じメンタリティーがあります。同じメンタリティーの人と話すと気持ちが楽になります。(日本では)外国人の気持ちがあるけど、ウクライナ人との会話の時はその気持ちがありません。」
福岡県内で暮らすウクライナからの避難民は、1月末時点で81人です。支援活動を続けるイリナさんは、戦後80年となる日本に、そして世界に向けて、今起きている戦争から目を背けないでほしいと訴えます。
■イリナさん
「世界のどこでも戦争があったら、 ほかの人たちは心から考えてほしい。もうちょっと皆さんが優しく、心と心を分かってほしい。それが一番いい道なのかもしれない。」
※FBS福岡放送めんたいワイド2025年2月27日午後5時すぎ放送