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10人の子育て終わり次は"介護"へ 大家族・岸さん 同居する母親との向き合い方

2023年12月7日 19:10
10人の子育て終わり次は"介護"へ 大家族・岸さん 同居する母親との向き合い方

KKTが20年以上追いかける宇土市の岸さん一家。子どもたち10人が成人し子育てが一段落した母・信子さん。
代わって始まったのが、同居する母親の介護です。歳を重ね、衰えていく親とどう向き合い過ごしていくか、信子さんが見つけたヒントとは。

宇土市で暮らす岸信子さん。

■岸信子さん(68)
「うちの母の朝の定番です」

夫の英治さんと2人結婚40年の夫婦です。
10人いる子どもの末っ子、不動さんは春から社会人になりました。

■不動さん(22)
「月曜日は毎回憂うつ。きょうは金曜日なので楽しんで仕事してきます。じゃあ行ってきます」

子どもたちが自立し、信子さんがいま一緒に過ごす時間が増えているのが…母親の永柄ミツ子さん。今年92歳になりました。

家族が増えていく岸さん一家をずっと見守ってきたミツ子さん。10人の孫に加えてひ孫は17人になりました。

足腰が悪くなり、ここ3、4年は歩行器が欠かせなくなったミツ子さん。
一緒に暮らす信子さん。5、6年前からイメージしていた母親と違う姿を感じるようになりました。

■信子さん
「食べようと思っていたお饅頭がなかったんだって。めっちゃ怒ってて、そんなの一度もなかったの前に。自分は食べなくても全部人にあげるイメージしかない母だったから『私が食べようと思っていた』みたいな感じでそんなこと言うんだと思って…一番最初はそれかも」

誰かがとったと勘違いする母。はじめは一つひとつ正していましたが…

■信子さん
「言えば言うだけ次々に他の人のせいにしていくからそれでけんかになる。『お母さんが勘違いしただけでしょう』って言ったら怒って『人をボケたごつ言うか、人をボケ老人のごと言うな!』みたいな感じで、そういう怒り方も前母はする人じゃなかったからひええーみたいな」

言い争いが増えストレスがたまっていく信子さんの支えになっているのが介護の計画などをつくるケアマネージャーです。
ものがなくなり、家族が犯人扱いされることへの対処で悩んでいた信子さん。

■信子さん
「しっかりした母だったから『違うよお母さん』というたびにすごく怒るから…」

■在宅ケアセンターあさひコート・中川昭男所長
「否定することが一番その人が考えた頭の中のこと全てを否定されるという感じになってくるので気分が落ち込んだり悪くなるので(否定は)しないで自分で起きて準備してくれたねとか、着替えてくれたねとかできたことを評価していくと自信をつけていかれる」

1人で悩まず誰かに打ち明ける。解決の糸口は子育てと似ているときもあります。

■信子さん
「いい人でしょう…いつもこんな感じで聞いてくれる、本当にありがたいです」

けんかを防ぐには、気分転換。2人にはドライブが欠かせません。買い物好きのミツ子さん、品定めをしているときは元気な様子をみせます。

■信子さん
「ここをけがしとったとね。テープ貼っとくね」

時には突然転ぶことも…
前に比べ耳も遠くなり会話が難しいことも増えていく母。

■信子さん
「できなくなってくることはさらに増えると思う。本当に忘れるしな…いろんなこと。それを責めるでもなく哀れむでもなく。笑っとく…そうよねっていうか、それかなあ最近は」

10月20日。

■信子さん
「1日目何をするとか、2日目は何するとか」

この日、結婚40周年を迎えた英治さんと信子さん。10人の子どもたちが夫婦旅行をプレゼントしてくれました。
旅のしおりも、娘の手作りです。

■信子さん
「本当にうれしくて」

■夫・英治さん
「よく分からなくて(しおりを)見ていたら船の…この部屋は他人事のように思っていたけれど我々が泊まる部屋だったすごいと思って」

2人から始まった家族。10人の子どもと時を過ごし、子どもたちの家族も入れると今では30人をこえました。

■信子さん
「毎日毎日その日その日で一所懸命やっているのが積み重なって…でも40年続いたのはすごいことだと思う、本当に思う」

■夫・英治さん
「言葉にはできないいとおしいとか愛してるとか好きとかいうけれどそんなもの通り越すのかなと思う。あとはこの人を何とか喜ばせないといけないと思う。やることなすこと裏目に出ることが多い」

英治さんから信子さんへ…

「ここに来れたのは子どもたちみんなのおかげだね。幸せだね。これからもずっと一緒にいようね」

家族の変化は突然やってきました。
結婚記念日の旅行から約1週間。

■信子さん
「ね、広々と…すっきりしたでしょう」

■夫・英治さん
「何にもなくなっちゃった」

信子さんの母、ミツ子さんの体調が急変したのです。
脳のまわりに血液がたまる「慢性硬膜下血腫」と診断され、突然施設に入所することに…。

車いすが必要になり、退所に向けて部屋を片付けていましたがみるみるうちに歩けない体に。
家に帰れるか分からなくなりました。

■信子さん
「びっくりだよね 心の準備ができていなかったので」

■夫・英治さん
「本当に急にパタパタパタってそうなって、だんだん歩けなくなるのかと思ったら次の日に歩けない」

■信子さん
「みんなそうだと思うけれど後悔ばっかり!ああしとけばよかったこうしとけばよかったって、まさか帰ってこないと思わないから本当に。でもまだ元気だから今できることはあると思うのでちょっと家族で色々しようと思っています」

突然の入所から3週間あまり。月に2回の面会の日。信子さんの息子2人も駆け付けました。

■信子さんの母・ミツ子さん
「あんたが来たけん何かあったんじゃなかろうかって」

■信子さん
「違う違う、今日は面会の日たい、1か月に何回か来てよかでしょうが。きょうはだからお願いしとったとよ。(ひ孫の)花ちゃんが作ったって、お部屋に飾ってって、花ちゃんが作ったからお部屋に飾って」

車いすがないと動けなくなったミツ子さん。

■信子さん
「顔を出せば喜んでくれるからできる限り顔を出してって感じですかね。普段通りでいいかも特別なことしなくて、変化に対応できる私になればいいですね」

この先も、できるときにできることを精一杯。

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