「なぜ今治に人が集まるのか」藤井キャスターが“住みたい田舎ランキング1位”の理由に迫る
続いてはこちら!新シリーズ企画『藤井目線』です。
藤井キャスター:
愛媛の未来に向けて進む人やコトを私、“藤井目線”で取材する、そんな企画です。
初回のテーマは「移住」です。こちらに行ってきました!
藤井キャスター:
「愛媛にやって参りました!後ろをご覧ください。今治です。」
杉本記者:
「ようこそ。今治に来られたことは?」
藤井キャスター:
「今治ないんです。それこそ日本テレビのアナウンサー時代は、アナウンス部の壁の上に難読地名漢字というのが書いてあって、そこに”いまばりし”って書いてありました」
杉本記者:
「今ですね、すごくアツいものがありまして、住みたい田舎ベストランキング で2年連続、今全国1位を獲得している。昨年度の移住者3118人で」
藤井キャスター:
「5年で4.6倍に増えた!」
杉本記者:
「で、きょうはその理由をぜひ藤井さんの目線で探っていただきたい。そのカギを握る方が今見えている島にいらっしゃるので、ぜひきょうは自転車で、サイクリングでいきましょう」
藤井キャスター:
「しまなみ海道を自転車で。分かりました。この気温の中。行きましょう!」
全長およそ4キロの来島海峡大橋、初、しまなみサイクリングです。
藤井キャスター:
「今自分で漕いでいるんですけど、まず自分の周りの景色が勝手に進んでくれるような、周りの対象物が大きいから、自分で進んでいるっていうより景色が後ろに下がってくれてる感じ」
3年前、東京から大島に引っ越してきたという森重正浩さんです。今年4月、友浦地区の海沿いにフレンチレストラン「フェヌア」を開業しました。
藤井キャスター:
「このエントランス、ずーっとこう、横に石が敷き詰められている。これはどういう狙いが?」
森重さん:
「これは大島石」
「このサインは隈さんの直筆」
藤井キャスター:
「え!?隈研吾さんの?」
建物を設計したのは、建築家の隈研吾さん。地元で採れた大島石を大胆に使っています。
藤井キャスター:
「ここまでこだわります?」
森重さん:
「はいこれ、世界初の大島石のドアノブです」
さらに、菊間瓦を砕いて左官で塗ったトイレの壁に、キッチン側の外壁には今治の造船所で使われていたという足場板も。
藤井キャスター:
「なぜ、今治のものをこれだけお店に集めようと思ったんですか?」
森重さん:
「ヨーロッパのレストランというのは、食事をするだけのスペースじゃない。その地域の産業のプレゼンテーション、そして産物とか色んなものをプレゼンする場所。だからこういった所で、大島で、大島のもの、今治のものを発信していけたら」
今治と同じ瀬戸内の街広島県三原市で生まれ育った森重さん。中学生の頃から、「いつか瀬戸内で自分の店を開く」という夢を抱き、20歳で上京。
フレンチレストランで修業を積んだあと、フランス・パリへ渡ります。4年半、10軒以上のレストランで技を磨き、帰国後は自由が丘のレストランでオーナーシェフとして26年間腕を振るいました。
次の出店場所を探していた時。
森重さん:
「瀬戸内って多島美が有名だけど、あまり島が見えないんですよ。開けた海なんですよ。自分はここを決めたのは、この燧灘が自分が住んでたフレンチアルプスの湖の湖畔の景色に似てて。ここでお店をやりたいと思って」
3年前にこの地に住むことを決断。森重さんが島に来てまず、やったことが2年間の地域おこし協力隊員としての活動です。
森重さん:
「地域に入っていろんなことを地域の方と一緒にやるいろんな問題があれば手伝ってあげたりとかそういったことをやっていました」
藤井キャスター:
「それは何歳の時に?」
森重さん:
「58です。実はそこに年齢制限があって50歳までだったんです」
藤井キャスター:
「じゃあその50を超えてもやりたいですけど!ってお願いしたんですね、その原動力ってすごいですね」
森重さん:
「何か動けば何かが始まりますよね」
藤井キャスター:
「(活動通じて)だんだん顔なじみが増えていったりしてオープンした時からスムーズに入れたんじゃないですか」
森重さん:
「そうですね、みんなに協力してもらっています。今は自分畑も作ってるんですけど自分が水まけないときはいつも撒いてくれる人がいるんですよ」
藤井キャスター:
「そういうやさしさに支えられて美味しい食材ができると」
今年4月、ついに念願だった、フレンチレストラン「フェヌア」をオープンさせました。
森重さん:
「これが瀬戸貝です。知り合いの潜水漁の方が命がけで獲ってくれてるんですよね」
レストランで提供するのは、大島の食材を活かしたコース料理。食材の7割が大島産です。
森重さん:
「どんな感じ?いま早いのは採れるんでしょ?」
イチジク生産・青野右京さん:
「まあ何個かね、時期が9月末からなんですよ。でも早くできてるのがあるんですけど」
「今6年目くらいで、今年から量がどんと増えてくる」
島の食材は生産者から直接買い付ける、それが森重さんスタイルです。
森重さん:
「きょうはアコウだよね?」
漁師 松田強さん:
「そうですね、タイが小さいんが。この2つ」
森重さん:
「一本釣りだから、魚も全然身質が痛まない、釣ってる人が魚をすごく大事にして下さるんですよね」
料理で“ストーリー”を伝えたい。
松田さん:
「森重さんのスタイルは、地元の物を使ってすごく工夫されて、私たちが獲った魚がそういう形で食べていただけるのはすごく光栄です」
今治の地に魅了された方は他にも…大島から広島方面に2つ隣の島、大三島です。
小松洋一さんと妻の智子さん。2人が営む「パン屋まるまど」。
大三島産野菜のフォカッチャや、みかん酵母で作るハード系のパンなど島の恵みが詰まったパンが並びます。
大三島の住民:
「うちの兄も時々福山市(広島)から来るんですけど、来たらここに寄って喜んで買っています」
小松さん夫婦は2015年に東京から大三島に引っ越してきました。
洋一さん:
「亀老山から来島海峡大橋を望むあのすごい絶景の写真を見て、こんな地域に住めたらすごい理想的だなと思って」
瀬戸内海や島々の絶景。そして、今治の島のほとんどが島でつながっているため島のアクセスが良い点も大きな決め手となりました。
さらに、もうひとつが。
洋一さん:
「東京都とは違う環境で子育てをしたいというのがまずありました」
自然に囲まれた子育て環境です。この島に引っ越してきたとき、娘のみくりちゃんは生後6か月でした
現在9歳、小学4年生になりました。島暮らしを始めて9年。
智子さん:
「まさに子どもは自然そのものだから、ここに来てみんながすごい気にかけてくる。大切にされているのを見て自分も育て直されている感じがする」
再び、今治市の大島。地元の生産者の思いや情熱、ストーリーがつまった食材に森重さんが一皿一皿彩りを添えて料理を仕上げていきます。
藤井キャスター:
「うわぁ!まず器も素敵だしこれは何のお魚ですか?」
森重さん:
「これは大島の一本釣りのアコウです。キジハタです」
一本釣り漁師 松田さんが釣り上げたアコウと、 瀬戸貝のダシでとったソースをかけたソテーが完成しました。
藤井キャスター:
「白身魚のうまみを超えてますね。白身魚のさらっとした旨味がありながらさっきの出汁とコラボレーションしながら口の中で旨味として広がっていく」
今治の大島だからこそ表現できる、森重さんの思いが込められた料理の数々。
藤井キャスター:
「移住してみてどんなお気持ちになったのか良かったところ教えてください」
森重さん:
「こういった食材が身近に感じられることがすごくうれしい。獲っている場所とかその漁師さんたちの気持ちまで伝わってくるんです。食材をすごく大事にしてくれている」
大島に引っ越して3年。大島への思いはこんなところにも。
藤井キャスター:
「なんでランチの方が値段高いんですか?」
森重さん:
「お昼はこの景色の中でゆっくりと。夜は週末だけだが、地元の人に食事に来てもらいたいと思って」
藤井キャスター:
「そういう思いがあってランチとディナーの値段を変えていたんですね。それはもう地元愛ですね」
森重さん:
「はい、(フランスの)最後のレストランでシェフに言われた言葉は『いずれかは地元に帰って地元の食材を使って地元の人に美味しいフランス料理を作ってあげなさい』ってその言葉がずっと残っていた」
藤井キャスター:
「まさにそれをお店で実現、体現されているわけですね」
【スタジオ】
白石アナ:
今治が住みたい田舎ランキング1位に選ばれたワケ、取材してどうでしたか?
藤井キャスター:
移住する皆さんからすると、自分が地元で受け入れてもらえるのかなというのが一番心配だと思うんです。最初に見るのは地元の皆さんの表情だと思います。森重さんの表情を見るとわかると思いますが、皆が温かく迎えてくれたからこそ、あのフェヌアを開くことができたと思います。
もう一つは経済的な部分が大きいと思います。どんなサポートがあって生活にスムーズに入りやすいか、こういった施策が各市町村にあるかという点は非常に重要じゃないかなと思いますね。
白石アナ:
今治、住居にかかる費用などの補助金にも力を入れていて、今治にUターンしたこちらの家族は空き家リフォーム代など市の補助金を活用し、住宅費用を500万円削減できたそうです。
藤井キャスター:
こういった補助があって少し心に余裕が出ると、表情にも余裕が出てくる。そうなると皆さんと打ち解けてみようかなという気持ちになるんじゃないかな。移住する上で一番大切なのはその点じゃないかと思いました。