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世界初の技術で魚のおいしさを可視化!?元金融マンがソフトバンクとタッグ!数字で読み解く“養殖マダイ”の可能性

2024年5月23日 18:40
世界初の技術で魚のおいしさを可視化!?元金融マンがソフトバンクとタッグ!数字で読み解く“養殖マダイ”の可能性

マダイの養殖生産量日本一の水産王国えひめで、養殖業の未来を変えようと奮闘する男性がいます。“数字”でマダイを読み解く。世界初の技術を取り入れ、更なる進化を目指す愛媛の養殖マダイの可能性を取材しました。

愛媛県西予市三瓶町。湾が入り組んだリアス海岸で昔から養殖業が盛んな町です。

赤坂水産・赤坂竜太郎さん:
「このいけすの中に1万尾の真鯛がいます」

「大学で数学を学んでいた」養殖業者は“元金融マン”

赤坂竜太郎さん、38歳。

Q.ずっと海の仕事をしていたんですか?
「全く別の仕事をしてました。大学で数学を学んでいてその数学を生かせるような仕事がしたいと思ったときに金融の仕事を選びました」

赤坂さんは東京の保険会社に勤めたあと、11年前に地元・三瓶で家業を継ぎ、マダイ養殖を任されました。

赤坂さん:
「最初の方はあまりうまくいきませんでしたね。水産の知識もあまりなかったというのもあって、どんどん統計的な情報をデータとして蓄積していくことで、こういう新しいことができるようになってきました」

タイの“雑食性“に注目 小魚使わない新たなエサを開発

その“新しいこと”というのが…

「こちらが無魚粉飼料で、一般的に魚は魚を食べて育ちます。マダイの場合は1㎏大きくするのに4㎏ぐらい。マグロの場合は15㎏の小魚が必要になってきます。養殖をすればするほど水産資源が増えるかというと、今の所そういう構造にはなっていないのが現状です」

赤坂さんによると、通常、1匹のマダイを稚魚から成魚にするまでにカタクチイワシおよそ10㎏が必要になるといいます。

水産資源を守りながら魚の養殖をするため、赤坂さんはこの“エサ”に着目しました。

ブリやシマアジ、マグロのような肉食ではなく、何でも食べる“雑食”のタイ。まずはこれまで使っていた魚粉が入ったエサから、大豆やコーン、白ごまなど、魚を一切使わない、植物由来の無魚粉のエサを取り入れましたが…

赤坂さん:
「子どもに野菜を食べさせるのと一緒でなかなか食いつきがよくないんですよね」

一日中でいけすで様子を見ながら餌をあげる日もあったといいます。

そんな時に出会ったのが…
「餌ロボ。マダイがおなかいっぱいかどうか分かるんですよ」

この“餌ロボ”は、お腹が空くと海面に近づき、満たされると底の方に移動するというマダイの習性を取り入れています。

いけすの中でマダイが泳いでいる場所の水深を測ることで、エサやりのタイミングをAIが分析。エサの種類や量、タイミングなどのデータを3年間取り続けた結果、おととし、ようやく魚を一切使わない無魚粉でのマダイの大量養殖に成功したのです。

赤坂さん:
「鯛の丈夫さであったり、雑食で無魚粉でも育てられるっていう点がサステナブルだと思っている」

ソフトバンクと共同研究 マダイを刺身で冷凍出荷する理由は

この日、赤坂さんは松山市内の加工場に向かいました。

赤坂さん:
「キャリア会社のソフトバンクでAI関連の基礎研究の責任者をされている石若さんです」

10年先を見据え、デジタル技術を活用した取り組みを進める愛媛県は、3年前にソフトバンクと包括連携協定を締結。その中で、養殖業のデジタル化を図ろうと、赤坂水産と共同で研究を進めています。

赤坂さんたちは現在、その日の朝に獲れたマダイをすぐ捌いて熟成。冷凍した状態の“刺身”で出荷することを目指しています。なぜ、冷凍した刺身を作るのか…

赤坂さん:
「今までマダイという魚は50%以上愛媛がシェアを握っているが、活魚出荷だけをやっていくのであれば、首都圏に近い静岡や関西圏に近い三重とか和歌山とかに求められていくような動きがあります」

県外での需要がある一方で、今年4月にスタートした「トラックドライバーの時間外労働の上限規制」で物流の停滞が懸念されています。

そこで赤坂さんは、身として食べられる部分が全体の3割というタイを活魚のまま出荷するよりも、捌いてチルドや冷凍の状態で出荷することで活魚の約20倍の量が運べるようになると試算したのです。その実現のために必要なのが、最新のデジタル技術を活用した冷凍した魚の品質保証です。

ソフトバンク石若さん:
「あなたが今買おうとしている魚のおいしさ、うまみはこれぐらいで、鮮度はこれぐらいというのをわかるようなものを作っている。一応世界初ではあります」

世界初の技術で鮮度やうまみを“数値化”

マダイの締め方や冷凍のタイミングなどの違いで、どのように味や旨味に変化が出るのかを検証するため、この日は、同じ1匹のマダイ身をすぐ冷凍したものと、冷蔵で熟成させてから冷凍したものなどを試食し、味や食感、舌ざわりなどを比較します。

赤坂さん:
「うんうん。やっぱりね3日目の方がうまいよ。熟成うまいっすね」

Q.寝かすとタイの味はどう変わる?
「しっとりしますよね。シャリや白ご飯と混ざりあってうまいんですよね。それはお寿司で感じていたし、鯛めしはタレの味で寝かせたタイと合う」

石若さん:
「3日ぐらいかけて輸送して届いたころにおいしい状態になってる可能性がありますね。2024年問題を逆手にとって、時間をかけて運ぶことでおいしさが増す…というのを数値で証明しますか」

検証としてこれまでに試食してきたマダイの刺身はおよそ3キロ分。かなりアナログなデータ収集ですが、実はこの作業が、デジタル技術で成功するためには欠かせないといいます。

石若さん:
「人がどう感じるかなんですよね。これは甘みが強いとか歯ごたえがいいとか悪いとかというのは人に評価してもらう必要がある。人の評価とNIRセンサーの結果を紐づけて」

「これはNIRセンサーっていう近赤外線センサーでいろんな波長の光を当てて、反射光をとってます。リアルタイムで魚の品質がわかる。しかも魚を傷つけることなくわかる」

センサーによって鮮度やうまみなどを数値化できれば、世界で初めてマダイの“品質規格”を作ることができるといいます。

石若さん:
「スーパーだったら直前のデータで、どれぐらい水分量が入っているかで、熟成が好きだからこれにしましょうとか、鮮度が(良いのが)好きなのでこれにしましょうというのが、消費者が選んで買えるような指標を作ろうとしています」

今年度中のマダイの品質規格の完成に向け、現在データ集めの真っ最中。2か月でおよそ140匹のマダイの実験データを集めました。

石若さん:
「品質規格を導入することでおいしい魚の平均値を上げたいなと。日本の魚のおいしさをちゃんとここで証明します」

10分の作業が10秒に!デジタルが変える養殖業の未来

高齢化や担い不足などの影響で県内の漁業人口がピーク時の16%にまで減少する中、デジタルによるスマート化が進むと…

例えば、これまでおよそ10分かけて数えていたいけすの中の魚の数も…シミュレーションを使えば、たった10秒で正確に数えることができるように。

また、いけすの中にカメラを設置しAIが魚の成長を管理、より効率の良い養殖が可能になるといいます。

赤坂さん:
「環境が変わってしまって(海に)いる魚が変わってきているのもある。飼いやすかった魚の養殖がなかなか難しい状況になってきています。タイの丈夫さであったり、タイだからこそできるサステナブルがあると思っていて。世界中で愛される魚になってほしい」

日本一の産地を守っていくために。養殖マダイへの挑戦は続きます。

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