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“処理水”週内放出で最終調整 なぜこのタイミング?

2023年8月21日 18:31
“処理水”週内放出で最終調整 なぜこのタイミング?

福島第一原発の処理水の放出をめぐり、政府は22日に関係閣僚会議を開き、放出する日を決定する方針を固めました。週内に放出することで最終調整しています。急に進んだかのようにも見える放出時期について、政治部官邸キャップの平本典昭記者に聞きました。

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確かに、一気に進んだようにも見えますが、取材をしていると、政府は、このタイミングはかなり前々から周到に準備を進めてきたとみられます。8月下旬という方向は、実は1か月ほど前から複数の政府関係者が指摘していました。

1つ目の理由は、18日の日米韓3か国首脳会談にあわせ、韓国の尹大統領との首脳会談がセットされました。韓国国内では反対の声が根強いにもかかわらず、尹大統領は岸田首相の姿勢に理解を示していました。ある外務省幹部は、日韓首脳会談の前に放出すれば、岸田首相の味方をしてくれた「尹大統領の顔に泥を塗ることになる」と話していました。

もう1つポイントとなるのが、福島で9月から「底引き網漁」が解禁になることです。ある政府関係者は「漁が開始してから処理水を放出すれば漁業関係者の反発はさらに大きくなる」と話していました。

これらのことから、「日米韓首脳会談が終わった後」「9月の底引き漁解禁の前」この期間での放出ということはかなり前から準備してきたわけです。

――Q.そうした中、注目の岸田首相と全漁連会長との面談が行われましたが、この結果をどうみていますか?

ポイントは、岸田首相が全漁連会長に何を伝えたのか、そして、全漁連会長がどう受け止めたのかということです。

まず、岸田首相は「漁業者の皆様が安心して生業を継続できるよう、今後数十年、全責任を持って対応する」と発言しました。

この発言に対して、全漁連側はどう受け止めたのか。全漁連の坂本会長はまず「反対という姿勢はいささかも変わらない」として、放出自体は反対だということを何度も強調する一方で、「安全性への理解は深まっている」「総理の発言は非常に重い発言で、しっかり受け止めたい」と述べました。

この発言を聞いた政府関係者は「放出に向けた環境は整った」と受け止めているということです。

こうしたことを受け、政府は22日に関係閣僚会議を開く方針を固め、放出日を決めたい考えです。最新の情報によりますと、政府は週内に放出の方向で最終調整に入っています。