【解説】“処理水放出”めぐる経緯 首相と会談…全漁連会長「大変不安」反対の姿勢を貫くも一定の理解示す
福島第一原発の「処理水」の放出をめぐり、岸田首相と会談した全漁連(=全国漁業協同組合連合会)の坂本会長は、放出への反対の姿勢を示しながらも、放出への一定の理解を岸田首相に示しました。処理水の海洋放出について、これまでの経緯を振り返ります。
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2011年3月、東日本大震災による津波の影響で水素爆発を起こした福島第一原発では、事故によって溶け落ちた燃料を冷やし続けるために毎日、大量の「汚染水」が発生してきました。高濃度の放射性物質を含んだ「汚染水」は、浄化処理を行った上で「処理水」としてタンクに保管されてきましたが、その量は増え続けています。
2021年4月、事故から10年がたちタンクが満杯に近づく中、政府は「海洋放出が現実的」とし、処理水を薄めて海に放出する方針を決定しました。タンクの数は1000基を超えていて、東京電力によると現在、容量の98%を使っているということです。
処理水には、浄化設備では取り除くことができない放射性物質が含まれていますが、政府はこの放射性物質についても、濃度を安全基準より大幅に薄めて放出するとしています。
そして、決定から2年がたった先月、日本に繰り返し調査団を派遣してきたIAEA(=国際原子力機関)は、海洋放出計画は「国際的な安全基準に合致している」とする報告書をまとめました。
岸田首相は20日、福島第一原発を訪れ、処理水の放出設備などを見た上で担当者から直接、放出の段取りを確認しました。今週中にも放出をはじめる方向で最終調整を進めています。
しかし、全国の漁業組合をまとめる全漁連の坂本会長は「一旦、放出されれば廃炉に向け数十年の長きにわたり放出されると懸念され、大変不安」と反対の姿勢を貫きつつも、「処理水の科学的安全性は理解している」とも話しています。