お金が生徒の進路選択に影響も…「高校無償化」実現は? 与党と維新が協議
国会では「高校無償化」をめぐる議論が行われています。同じクラスの中でも授業料に「差」が生じている現状と、生徒たちの声を取材しました。
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千葉との県境近くにある都内の私立高校「関東第一高校」。2年生のクラスで、どこから通学しているか聞いてみると、38人中、都内からが24人。市川市や浦安市など千葉県内からは14人という結果になりました。
実は今、この住んでいる地域の違いにより、“高校の授業料”に差が生まれています。都内の24人は現在、都独自の「支援」によって授業料が無料となる一方、千葉県の14人はその「支援」の対象外です。千葉県に補助はあるものの所得制限があるため、人によっては年間で50万円近く差が生まれているのです。
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こうした中、“少数与党”の自民・公明と日本維新の会は、12日にも高校無償化について協議しました。
日本維新の会・前原共同代表
「やはり交渉ごとでございますので、いろんなやりとりをする中で、来週の中頃にはやはり、我々として予算の賛否は決めなくてはいけないという時期にくるのでは」
与党側は無償化をはじめとする維新の主張を受け入れるかわりに、来年度予算案への賛成を取り付けたい考えで、詰めの協議が続いています。
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住む地域によって生じる授業料の差。生徒たちは、どう感じているのでしょうか。
無償化に賛成 千葉から通う生徒
「同じ学校に通っているのに、支援の額に差があるのは不平等でよくないので、そこは平等にしてもらったほうがいいと思います」
無償化に賛成 千葉から通う生徒
「授業料にお金がかからないっていうだけで考えられるものの幅が広がると思うし、お金が進路を諦める理由にならないというのがよいと思います」
学校側は、こうした支援の差による“家計の負担”が、生徒の進路選択に影響するケースも多いといいます。
関東第一高校 三原教頭
「高校無償化を国で等しく、もし、やっていただけると、本当に受験生の選択肢の幅が広がってくるので、無償化で自分がやりたいこと、将来のことをなるべく優先して考えられるような意識になってもらえるといいなと思うので、国などの支援があるといいかなと」
国は現在、所得制限を設け、公立・私立問わず約12万円を、私立については約28万円を上乗せして支援しています。協議で与党側は、約12万円を支援する所得制限を今年4月からなくし、私立の上乗せ分についても、所得制限を来年4月からなくすことを提案。
これにより公立は完全無償化となりますが、維新側は私立の所得制限を今年4月からなくすことや、支給額の引き上げを求め、議論は平行線となっています。
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教育経済学に詳しい専門家は無償化について“意義がある”とする一方、公立と私立の競争が生まれることで“教育の質”が向上するという意見については、こう指摘します。
慶應義塾大学 赤林英夫教授
「公立高校は独自財源を持つことはできませんから、いくら教育の質を上げたいと思っても、できることは限られているんですね。公立高校の授業の組み立てや、様々なお金の使い方や人材の使い方を、例えば私立並みに自由化する。そうすれば同じような条件で、本当の意味での公平な競争になるかと思います」
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予算成立のためには野党の賛成が不可欠となる中、高校無償化をよりよい教育の実現につなげることはできるのでしょうか。