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【日米首脳会談の後は…】30年ぶり少数与党で“熟議”の通常国会 予算審議/参院選/そしてミャクミャク…議論好き石破首相…れいわ・山本代表も「やりづらい」

2025年2月9日 9:20
【日米首脳会談の後は…】30年ぶり少数与党で“熟議”の通常国会 予算審議/参院選/そしてミャクミャク…議論好き石破首相…れいわ・山本代表も「やりづらい」

30年ぶりに“少数与党”で迎えた通常国会。予算成立に野党の協力が不可欠となるなか、論戦の風景はどう変わったのか。そして夏の参院選は、どうなるのか?政治部の与党・野党担当の記者に加え、国会を取材するカメラマンとがそれぞれの視点でトークします。

■ビッグニュースのはずの与野党会談が“インフレ状態”?

政治部 前野全範・与党キャップ:
与党だけでは、何も決められない状態になって、都度、どこかの野党に協力してもらわないと国会のことが進まなくなりました。野党側の理解を得ながら進めるため、遅くなる部分もたまにありますが、少数与党国会で一番変わったところかなと思います。

政治部 天野裕貴・野党キャップ:
野党側も、自分達が実現したい政策をのませることができれば、自分たちの政策を実現できるチャンスがあります。予算委員会も、今までだと「野党側が攻めて、与党が防戦一方」という展開が多かったんですが、今回は結構ちゃんと議論をしてるなと感じます。

森圭介アナウンサー
国民から見ると、熟議というか、話し合って決めてくれているなと実感が持てる国会になったってことですかね。志水キャップはカメラマン目線で見て、どうですか?

映像取材部 志水淳平・映放キャップ
与野党で話し合う時間が多くなりました。今までは与野党で話し合う会談は取材すらなかったんですが、最近は自・公・国、または自・公・維の会談が、多いときで週2回あったりします。取材の本数が明らかに増えました。

天野:これまでは、「与野党の幹部同士が会合する」となったらビッグニュース。どんなことをするんだろうと一大関心事だったんですが、今は週に何回もある。

前野:最近は、与野党会合のインフレが起きていますね(笑)

■「ミャクミャク国会」? その意図は…

森:30年ぶりに少数与党の国会が実現したわけですが、1票の力が強いんだと、改めて感じました。今国会がどんな国会なのか、キャッチフレーズをつけるとしたら、どんなネーミングになりますか?

前野:「様子見国会」。与党も野党も慣れてないので、お互い出方をかなりうかがっていて、結果にらみ合いの状態が続いています。この後、タイムリミットがいずれ迫ってきますが、その直前でバタバタと色々なことが決まるんじゃないかと見ています。

天野:私が考えたのは「みんなが主役国会」。今回は、政府与党の予算案がそのまま通るわけではなさそう。そのなかで例えば、国民民主党だったら「年収の壁の引き上げ」、日本維新の会だったら「教育無償化」など、前回の衆院選で訴えた政策を取り入れてもらえるチャンスがある。立憲民主党は予算に賛成するのは難しいかもしれないけど、大幅な予算の修正を勝ち取れるのか。

前向きにとらえると、これが少数与党国会の良いところで、本当に議論が深まっていく。一方的なことをできる党がどこもないので、誰もが主役になれると思います。

志水:私が選んだのは「ミャクミャク国会」。

森:どういうことなんですか、これは(笑)

志水:ミャクミャクと言えば、大阪・関西万博のマスコットキャラクターですが、石破首相は官邸に朝出てくる時など、手を振るシーンがとても多いんです。

そんな中、その自民党が日本維新の会に“脈”をもつのか、国民民主党に“脈”を持つのか。どちらを選ぶのかという部分でも、“ミャクミャク国会”とつけてみました。

■国民民主の「年収の壁」から維新の「教育無償化」へ?

森:どこが与党と手を組むのか。維新なのか、国民民主なのか。実際はどうなりそうですか。

前野:予算を通すためには、どこかの野党の協力を得なければいけない。当初は、国民民主党と「年収の壁」での交渉が注目されていましたが、そこが停滞気味の一方、いまは日本維新の会と「教育無償化」での交渉が進んでいます。維新の協力が得られるんじゃないかと、近づいてる部分がありますね。

天野:一部では「国民民主の(政策)案を全部やると、7~8兆円税収が減る」とも言われている。その一方「維新案だと6000億円程度でできる」と。与党側としては、「維新と組んだ方がいいんじゃないか」という声もあるとされるなか、最近、玉木代表(※役職停職中)は「安上がりかどうかではなく、国民のために何が必要なのかという目線で政策を決めろ」というようなことを言っています。

■いくら審議時間を積んでも…

志水:自民・公明・国民の会談でも、国民民主は頑として視線をぶらさない。「僕たちは動かない」「自分たちは(年収の壁を)ここまで上げるんだ」という強気な様子が見えますね。

森:「野党は与党批判を繰り広げる」というイメージを持っている人も多いと思います。ただ今は、自分たちの政策を丁寧に説明しているという印象を、私自身も感じています。気になるのは、野党側がどこまで譲歩するのかです。

天野:今までだと、予算委で「今年はもう何十時間審議したから、そろそろ採決」となることもありました。野党側は「全然こちらの質疑に答えていないから、もっと審議時間をよこせ」と。そんな駆け引きが例年2月終わり頃から続くんです。

ただ、今年はいくら審議時間を積んだところで、どこかが与党に協力してくれなければ予算は成立しない。そうすると予算委員会の横で、政党間協議でどこで折り合えるかというのが、大きなポイントになります。

■「石破おろし」はないけれど… 党内は“お手並み拝見”

森:カメラマンの目線で見て、被写体としての石破首相にはどんな印象を持っていますか?

志水:政治家は、良くも悪くも表情に出さない人が多い印象があるんですが、石破首相は表情が豊かだと感じます。腕を組んで目をつぶっているのかと思ったら、急に上を向いてニコッと笑ったり…。何かこう人間らしいというか。

前野:自民党総裁選の時のことを思い出してほしいんですが、石破首相には、議員の友達があまりいません。例えば、安倍政権や、直前の岸田政権下では「絶対何があっても支える」という人が何十人かいたが、石破さんの場合は少ない。だから、党内でも「お手並み拝見」みたいな感じで、やや引いた目で見ている議員が多いんです。

ただ、よく言われる「石破降ろし」が起こるほどの、反発があるわけではありません。茂木敏充・前幹事長は最近新しい勉強会を立ち上げ、小林鷹之・元経済安保相も勉強会を開いています。高市早苗・前経済安保相も、選択的夫婦別姓に関して自分の考えを出したりして、発信力を強めています。

もし予算がうまく通らなかったり、仮に参院選で敗北したりすれば、石破さんが辞めるというシナリオもないわけではありません。その時、仲間やグループがある程度整ってないと手を挙げられない。勉強会とかでこっそり準備をしておこうという感じです。

森:距離は取りつつも、準備をしているということですね。野党側は石破さんに対してどういう評価をしているんでしょうか。

天野:石破さんは議論好きで有名。野党議員からすると、これまでの予算委では、紋切り型の回答で全然議論が深まらなかったり、逆に野党側を攻撃してくる首相もいたり、フラストレーションがたまる展開が多かったんです。けれども、石破さんは結構議論をするので、満足感を持っている野党議員もいたりします。

石破さんは、野党からするとちょっとやりづらい。れいわ新選組の山本太郎代表は、反自民の急先鋒のような存在ですが、予算委員会で石破さんと対決してみて、「すごくやりづらかった」「うまく返されてしまった」と言っていました。これは歴代首相の中でも、なかなかいない才能というかじゃないかなと思いますね。

■参院選のポイント どの党が予算に賛成するか

森:夏の参院選にむけては、どういう流れになっていくんでしょうか。

前野:今年は「12年に一度の選挙の年」です。6月下旬に都議会議員選があり、このまま国会の延長がないと、7月20日に参院選が行われます。この2つの選挙は連動しています。都議会選挙はご存じの通り、都議会自民党にも裏金事件が出たので、自民党はかなり厳しい。「ホップ・ステップ・ジャンプ」の逆パターンで、そのまま参院選も一緒に落ちるっていうのを、自民はものすごく気にしています。

天野:野党の中でも、やっぱりそれぞれの党が党勢を拡大したいという思惑があります。参院選だと、いわゆる一人区で野党は候補者を一本化して、なるべく与党の議席を減らしていこうというのが論理ですけれども、なかなか選挙協力が進んでいません。

もう一つポイントがあって、さすがに、選挙の頃にはさすがに予算が成立していると思います。ということは、どこかの野党は与党に協力しているわけです。そうすると、その党は、正面から与党を批判するのは難しくなると思うんです。

予算に賛成するということは、自分たちの政策が取り入れられてるわけなので、与党と真っ向から対立しづらいポジションになっている可能性もある。予算がどういう枠組みで成立するか、これによって参議選の見え方も変わってくるかもしれません。

■「2倍速でもいいから…」 国会ウオッチのススメ

森:国会をより深く理解できる、さらに興味を持って見ることができるためのポイントがあれば、お3方に聞きたいです。

志水:誰でも見られる政治コンテンツが今、増えています。たとえば今、「年収の壁」の問題がありますけど、自分事として捉えて、そのニュースや委員会の様子を見てもらったり、石破首相の表情を見てもらったりしてもらえると、興味がわいて楽しくなってくると思います。

天野:国民民主も「賃上げ」という抽象的なワードでなく、「手取りを増やす」という、今僕らが一番求めているワードが若い人とかに響いたと思うんです。今回、「年収の壁」も実際に上がってもいる。自分たちの1票で本当に変わっていくんだっていうことが今後、実感できると思うんですね。

例えば、子育て世代なら、教育無償化を打ち出している維新に投票してみようかなとか。自分が求めていることを、どの政党が言っているか見てもらって、それで変わっていく様子も見ていく。議論の経過も見るようにしてもらいたいと思います。

前野:投票した政党や議員の質問を、2倍速でも良いので、議論の全体を見てほしいです。報道されるのは、どうしても一部になることが多くなる。全体を見ると、例えば石破首相とのやりとりが「こういう経緯・経過でこういう答弁になった」というのが分かることもあります。

我々も、どうしたら分かりやすく見てもらえるかなという工夫をしています。皆さんも議論の全体みたいなのを見てもらえると、政治の見え方が、また変わってくるんじゃないかなと思っています。

最終更新日:2025年2月9日 10:36