×

特定秘密保護法案 私たちの生活に影響も

2013年10月23日 13:41
特定秘密保護法案 私たちの生活に影響も

 安倍首相が今の国会での成立を目指している“特定秘密保護法案”ですが、一方で、私たち国民の生活にも大きな影響を与える可能性があります。

 21日から始まった衆議院予算委員会で、安倍首相は、ある法案の重要性を強調しました。

 「海外のさまざまな機関との情報の共有・交換もあるわけであろうと。秘密を厳守するということが大前提」

 安倍首相がこだわる“特定秘密保護法案”とは、一体どんな法律なのでしょうか。

 “特定秘密保護法案”は、外交・防衛など安全保障に関する情報などのうち、特に漏えいが日本の安全保障に著しい支障を与えるおそれがあるものを、一定期間“特定秘密”に指定し、保護する法案です。指定の期間は5年単位で更新が可能です。“特定秘密”を取り扱えるのは、大臣ら行政機関のトップが認めた人に限られ、情報を漏らした場合、最大で懲役10年の罰則が科されます。

 なぜ、このような法律を作ろうとしているのでしょうか。そのきっかけは、2010年に尖閣諸島沖で中国籍の漁船が海上保安庁の巡視船に衝突した事件でした。海上保安庁の職員が、衝突の瞬間を撮影した映像をインターネットの動画共有サイトに流出させましたが、起訴猶予処分となり、罪には問われませんでした。

 そして、2013年1月にアルジェリアで発生し、日本人10人が犠牲となった人質事件。菅官房長官は「情報が錯そうしており、確たる情報がない」と述べていました。その後まとめられた与党の検証チームの報告書において、国際テロ事件では、テロリストの作戦などについて関係各国で協力して情報収集にあたりますが、日本には重要な情報を守る法整備が不十分なため、他国の政府が持つ情報を日本に提供してもらえない場合があることが指摘されました。これについて、元自衛官・志方俊之帝京大教授は「日本は秘密をどんどん流しちゃう。それをテロリストが聞いて、本来の目的とぜんぜん逆の結果になる。そういう信頼性がないわけですね。情報をもらいたい場合には、情報を我々がちゃんと保全できるという法律とか仕組みがないとね、ちょうだいと言ってもくれないですよ」と語ります。

 しかし、法案作成の過程では、いくつかの懸念が示されました。日弁連などは、国民の“知る権利”などを保障する規定がなく、報道機関などの取材行為が制限されるおそれがあると指摘しました。このため、政府は条文を修正しましたが、法案では報道・取材の自由について“十分に配慮しなければならない”としたほか、罰則の対象となる取材について、“著しく不当な方法によるもの”とするなど、あいまいな表現が残りました。情報公開制度の法整備を求めるNPO団体・情報公開クリアリングハウス理事長の三木由希子理事長はこう語ります。

 「特に配慮しますよ、という形になっていますけど、やはりそこだけでは、知る権利が確保されたとはいえない」

 また法案では、秘密の指定を30年を超えて延長する場合は、内閣の承認を必要とすることも規定されましたが、重要な情報がいつまでも公開されないのではないかという懸念もあります。三木氏はさらに「秘密をちゃんと時間をかけてでも解除をして公開するという、そういう仕組みにまだ十分になっていない」と語っていました。野党も、情報公開制度の整備を求めていく方針です。民主党・海江田代表は21日の会見で「特定秘密の保護法と情報公開法は一緒になって議論をしなければいけない問題だと思っています」と述べました。

 政府は法案を25日に閣議決定し、11月から国会での審議が始まる見通しです。