第3次改造内閣の狙いは? 政治部長が解説
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皇居で7日午後、認証式が行われ、第3次安倍改造内閣が正式に発足した。新しい内閣にはどんな狙いが込められているのか。政治部の伊佐治健部長が解説する。
■3つのリスクに警戒
今回は来年夏の参議院選挙を控えてディフェンス重視の冒険が少なく、手堅すぎるくらいの顔ぶれとなったが、3つのリスクへの警戒からだった。
1.「スキャンダル」への警戒
去年は女性閣僚の数などにこだわり、イメージ優先で新顔を入閣させたところ、思わぬ問題が出てしまった。二の舞を警戒して手堅くした。
2.「やっかみ」への警戒
人事への党内の不満を少しでもやわらげるために、昨年はポストゼロだった石原派からも1人入れるなど、先月の総裁選で支持してくれた各派閥への配慮もうかがえた。
それでも、出身派閥の細田派の閣僚が倍増した一方、岸田派の閣僚が激減した事などに不満も出そうだ。そこで、ポスト安倍とも噂され、何かとひいきにしていた稲田朋美政調会長の重要閣僚への抜てきを見送った。
3.「安保ロス」への警戒
安保法成立を成し遂げて、次の目標を見失ってしまうリスクだ。求心力を維持するためにはアベノミクス継続だけでは弱く、困難でも何か目標が必要。本来なら安倍首相は憲法改正あたりを掲げたいが、今は無理は出来ない。
そこで、「1億総活躍社会」の看板が出てきたが、ターゲットが広くて大変だ。加藤勝信1億総活躍相自身が「石破大臣の地方創生、あるいは甘利大臣の経済財政、あるいは厚労関係を塩崎大臣が担当している。こういったものと密接に絡んでまいりますから」と言っていた。
これまで安倍首相の側近として定評があった加藤氏だが、3人の大臣を相手にリーダーシップを発揮できるかは未知数だ。
■加藤氏のほかに注目すべき閣僚は
目を引くのは河野太郎国家公安・行革相だ。自民党にあって原発ゼロを訴えるなど発言に遠慮がない。安倍政権としては、じゃじゃ馬を取り込んで、これまでにない懐の深いところを見せた格好だ。
河野氏は政府の一員としての自覚を口にしていたが、野党・民主党などに対抗して公務員制度改革など強気の姿勢も予想されるので、官僚の間には警戒もある。
もう1人は馳浩文科相だ。プロレスラーのイメージが先行するが、高校教師の経験から文部科学行政を専門に歩んだほか、同性愛者への理解が深く、LGBT(=性的少数者)の議員連盟を立ち上げたことでも知られ、地道な活動もしている。
■盤石の体制を築けたと言えるか?
今までの「安倍1強」の構図のまま進むのかどうかだが、7日朝、気になる発言があった。
二階総務会長「明日は閣議かけなきゃいけないと、ぎりぎりの日程を組んで我々のところへ押し込んできますが、これでは落ち着いた議論や重要な議論はできない。何でも早く了承して次へ進ませろというやり方は、我々は受け付けないつもりであります」
二階総務会長の発言は政府が出してくる法案を自民党が追認するだけの展開にならないよう、あえて新体制発足の日にクギを刺した格好。
■「政高党低」に変化も
また、小泉進次郎氏は今回、復興政務官を終え、自民党に戻るが、最近もアベノミクスとは微妙に考えがずれていると公言するなど、今後は党内から遠慮ない発言も予想される。
そうすると今後、安倍首相が自民党に手を焼くこともありそうだ。これまでの「政高党低」、政府の力が強くて党の力が弱いバランスが変わるかもしれない。
来年の参議院選挙に向けて政権が失速するようなことがあれば、安倍首相への不満が噴出しかねない。1億総活躍社会へのはっきりした道筋を描き、行政改革などで成果を出して国民に訴える必要がある。