×

“慰安婦”日韓両政府が合意 政治部長解説

2015年12月28日 20:32
“慰安婦”日韓両政府が合意 政治部長解説

 いわゆる従軍慰安婦問題で日韓両政府が歴史的な合意に至った。日本の岸田外相と韓国の尹外相は28日会談し、元慰安婦支援のために韓国が設立する財団に日本政府が10億円程度を支出することなどで合意。日本テレビの伊佐治政治部長に聞く。

 Q:今回の歴史的合意をどう評価するか?

 伊佐治政治部長「手放しに評価できるのかどうか。会談前の日本と韓国の立場。まず日本政府がもっともこだわったのは『最終的・不可逆的な解決』。つまりもう二度と蒸し返さないように文書で確約を取ることだった。韓国政府は過去首脳間で合意してもひっくり返しゴールポストを動かしてしまうと日本政府の不信感はきわまっていた。これについては『最終的かつ不可逆的に解決』と記者会見で両国外相が表明した。ただ、文書にはならなかった」

 「次にソウルの日本大使館前に民間団体が設置した慰安婦像の撤去。これについては『韓国政府が解決に努力する』との表明にとどまった。岸田外相は適切な移転がなされると認識していると述べたが、尹外相は不可逆的な解決と切り離した発言をしていて、最終的に移転が実行されるかははっきりしない。民間団体は移設に強く反対していて実際に動かそうとすれば激しい反発が予想される」

 「もう一点、慰安婦問題でユネスコ(=国連教育・科学・文化機関)の記憶遺産登録について、韓国が申請に加わることはないとの認識を示した」

 「一方、韓国が求めてきた日本の国家的責任をめぐる安倍首相の謝罪については、日本政府は責任を痛感している、心からのおわびと反省の気持ちを表明すると岸田外相が発表した。日本政府はあくまで50年前の国交正常化の際に法的には解決済みとの立場を変えていないが、歴代首相が出したおわびの手紙を踏襲し、道義的におわびすることは認めた。安倍首相の周辺には『総理が元慰安婦のところに行く用意もある』との声もある」

 「また法的な賠償についても韓国が財団を設立し、日本政府が10億円の資金を出し、心の傷をいやす事業を行うことになった。国家責任とは切り離した形としている。全体として政府間で最終決着に合意したことは極めて大きな前進といえる」

 Q:年の瀬に急転直下の進展の背景には何があったのか?

 伊佐治政治部長「アメリカの圧力があったことが大きいといえる。アメリカは対中国の安全保障上、日本と韓国がこれ以上反目し合うことを良しとせず、日韓関係の改善を働きかけてきた。政府関係者は『最終的には、日韓首脳会談の場にアメリカも加わって、きちっと確認する形になるだろう』と述べている」

 Q:今回の合意で最終的な解決になるか?

 伊佐治政治部長「政府間では合意されたが政府関係者はこの問題は『政府対政府ではなく世論対世論だ』と述べている。韓国の国民が今回の合意についてどう反応するかによって朴槿恵政権がまたぐらつくことになっては元も子もない。韓国メディアの伝え方も大きな意味を持つが、韓国政府は今回、発表に先だってメディア各社の幹部に内容を事前に説明するなど丁寧な対応もした。経済面、そして安全保障面でも、過去最悪といわれる日韓関係がこれ以上続くことは望ましくないとの世論は高まっているともみられるが、なお状況をみる必要がある」