政治部長解説:駆けつけ警護付与でどうなる
南スーダンでのPKO(=国連平和維持活動)をめぐり、政府は15日、自衛隊の部隊に「駆けつけ警護」の新たな任務を与えることを閣議決定した。「駆けつけ警護」任務を与えられた部隊は、今月21日に南スーダンへ到着する予定。
「駆けつけ警護」とは、国連やNGOの職員、他国軍の兵士らが武装集団などに襲われた場合、救援要請を受けた自衛隊が武器を使用して助けに向かうことができるという任務だ。今回は自衛隊の宿営地がある南スーダンの首都ジュバとその周辺に限定している。
安全保障関連法に伴い、初めて与えられる新たな任務だが、現地の治安が懸念される中、野党からは反対の声も上がっている。
「駆けつけ警護」について、政治部・伊佐治健部長が解説する。
――自衛隊はこれまでより危ない場所に行くのか。
政府は基本的な考え方として、「リスクを伴う」任務とし、去年の審議でよく出てきた「リスクは高まらない」という言い方は避けた。その理由について、防衛省幹部は「危険性をうやむやにしたわかりにくい答弁だと本質の議論が出来ないから」と述べている。
――今までと一番の違いは何か。
武器を使う基準が大きく変わった。例えば、現地のNGO職員が襲われていたら、その場に駆けつけて警告で撃つことなどが出来る。
これまでは憲法が禁じる海外での武力行使になりかねないため出来なかったが、安保法はこれを可能にした。ただし、相手を傷つける事はこれまで通り、正当防衛や緊急避難に限られる。
――とはいえ、自衛隊員が撃つ、あるいは撃たれる可能性は高まらないか。
戦後、自衛隊が海外で一発の銃弾も撃たずにきたことは「平和国家日本」のアピールだった。政府は「いきなり銃弾が飛び交う場所に飛び込むのではない」と説明し、道路整備などを主な任務とする「施設部隊」の能力を超えると現場が判断したら依頼を断る考えだ。
出動を控えた責任を問われたケニア人司令官が更迭された例もあったが、自衛隊幹部は「戦車なんか出てきたら絶対に行かせない」と話している。
――「戦車が出てくる」とか、非常に緊迫した任務であることが伝わってくるが。
今回、新しい任務という緊張した局面にもかかわらず国会での議論が十分だったとは言えない。去年の「安保国会」も理屈っぽい集団的自衛権の議論が先行し、緊急性の高かった「駆けつけ警護」は、ほとんど議論されなかった。
かつての自衛隊イラク派遣の際のような与党による現地視察が行われることもなく、野党側のこだわりも薄く、政府の主導で駆け足で進んだ印象だ。
ある政府関係者は「時代が変わったということでないか。日本も血を流す国際貢献の覚悟が必要になってきた」と話していた。実際にそうなのか、今こそ、国会で正面からの議論が求められている。