“10増10減”めぐる選挙区調整、自公のチキンレースは未だ決着つかず
衆議院の選挙区の定数が「10増10減」となることに伴う自民党と公明党の選挙区調整は公明党が候補者擁立を目指す東京28区をめぐり最終局面に入ったものの、双方譲らずチキンレースの様相を呈している。
「昨年の年末ぐらいから自民党さんとの協議は引き続き行っているので、最終段階に近いのではないか」。公明党の石井幹事長はこう話すが、自民党と公明党の“10増10減”をめぐる候補者調整は、最終段階に至ってますます混迷の度合いを深めている。
去年、改正公職選挙法が成立し、衆議院の「1票の格差」を是正するために小選挙区の区割りが変更された。この際新たに定数が増えた地域のうち、公明党は既に、東京29区・埼玉14区・愛知16区で公認候補を発表している。
自民党側には、この3選挙区についても不満が残っているものの、ある自民党幹部は「地元組織はいろいろと不満を言っているが、最終的には自民党として公明党の候補に推薦を出し選挙協力をしないといけない」と話す。
しかし、公明党はこれに加え、東京で2議席目となる東京28区についても公認候補の擁立を認めるよう自民党に迫っている。「これまで協力関係といっても、うち(公明党)が協力しすぎていたのを対等とは言わないまでも比重を戻す作業をしているだけ。自民党から文句を言われる筋合いはない」(公明党関係者)と、公明党は強気の姿勢を崩さない。
調整が難航し出すと、公明党側は「自民党が東京28区での擁立を認めないなら、東京の他の小選挙区では自民党候補を推薦しない」と自民党側に伝達する強硬策に出た。
これに対しては、「そんなやり方で公明が擁立を強行したらもう終わりだ。東京だけの話ではなく、公明党との連立を解消するしかない話になる」(自民党幹部)などと反発の声が強まっている。
自民党は、16日、17日と立て続けに茂木幹事長や森山選対委員長が総理官邸で岸田首相と協議。16日夕方には、山口代表が公明党所属の議員と総理官邸に出向いて核廃絶に関する提言を行った後、個別に岸田首相と会談したが、双方の合意には至らなかった。
22日午前には、自民党の東京都連会長をつとめる萩生田政調会長が都連所属の国会議員を集めて会合を開き、公明党に東京28区を譲ることはできない方針を確認。自民党としても近く公明党側に、正式に東京28区での公明候補の擁立を認めない考えを伝える方針だ。
落としどころが見えないままエスカレートする自民党と公明党の対立。自民党内では東京28区ではなく空白区となっている他の小選挙区から公明候補の擁立を容認する代替案も検討されているが、公明党側がこの案に同意するかどうかは不透明な情勢だ。
G7広島サミットでの成果を追い風に早期に衆議院を解散すべきとの声が高まる中、自公連立政権のあり方にも影響を及ぼしかねない選挙区調整の結末は果たしてどうなるのか。自公のチキンレース・神経戦がまだしばらく続く見通しとなっている。