政倫審 首相自ら「出席」へ…今後に影響は? 「党内の分断が表沙汰になるかもしれない」という見方も
裏金問題を説明する政治倫理審査会に岸田首相自らが出席を表明しました。「良い作戦」など評価する声が上がる一方、「これをきっかけに党内の分断が表沙汰になるかもしれない」という見方も広がっています。
「小栗さん、『ここにきて岸田首相が?』とびっくりしたんですけれども、その思い、狙いというのは何ですか?」
小栗泉・日本テレビ解説委員長
「首相の周辺は、自民党総裁として『自ら模範を示すということだ』『最後のカードを切ったんだ』というふうに話しているんです。もともと政倫審というのは、『議員の意思を尊重する』という規定があるので、岸田首相としては、強制はしたくない。でもなかなか公開で出席する人が出てこない、このまま政倫審開催の見通しが立たないということだと自民党の批判が深刻になってしまうということで、いわば背水の陣を敷いたという格好です」
有働キャスター
「では、今回はリーダーシップを発揮したと?」
小栗解説委員長
「自民党の中からも、ある閣僚経験者ですが、『岸田サプライズだ』『いい判断だ』『身を切る覚悟を見せたということだ』ですとか、安倍派議員からは『5人をオープンに引きずり出すという意味では良い作戦だ』など評価する声というのも上がっています」
「ただ、一方で首相がここまでしなければ自民党として決断ができないのか。組織としてのガバナンスのなさ、これを露呈したとも言えます。実際、首相周辺も『首相が決断しないと動かないのはおかしい』とこぼしていましたし、ある野党の議員は『首相という最後のとりでを政倫審開催の最初の一手に打ってくるという自民党のまとまりのなさの表れだ』と指摘する声もあがっていました」
有働キャスター
「本当なら幹部がまとめて決めることだろうと?」
小栗解説委員長
「ある自民党議員は、『本来なら、首相の意をくんで茂木幹事長や麻生副総裁などが安倍派の幹部にガツンと言うべきなんだ。でも、(首相、副総裁、幹事長の)三角関係がおかしな事になっているから進まないんだ』というふうに指摘していました。首相の側近の議員は、『もう首相はこれしかないと言っていた。肉を切らせて骨を断つ。つまり、自ら政倫審に打って出るという先手を打って、安倍派に恨まれても政権を守るという勝負に出たということなんだ』と話しています」
有働キャスター
「なるほど。だとすると、政倫審は動いたけども、今後の党内の亀裂は深まるってことですか?」
小栗解説委員長
「少なくとも28日時点では、そういったものは表面化していませんが、『これをきっかけに党内の分断が表沙汰になるかもしれない』という見方も広がっています。ある自民党の閣僚経験者ですが、『さらなる混乱を生みそう。勝手にそういうことを言うな。岸田許せんみたいな話になるかもしれない。自民党の今後の展開が読めない』。またある政府関係者は『党内の分断もますます深まるだろう。自民党はどこに向かっていくんでしょうか』とうつろな様子でした」
有働キャスター
「これについては、辻さんはどう考えていますか?」
辻愛沙子・クリエイティブディレクター(『news zero』パートナー)
「『フルオープンになった、よし一歩前進だ』とか、あるいは、誰が出席するみたいな議論になりがちですけれども、そもそも、いわゆる裏金を受け取っていた議員って86人もいるんですよね。それがこの期に及んで出てこない議員の方が圧倒的に多い現状は本当に異常だと思います。野田佳彦さんも国会で言っていたように国会議員である以上、説明責任は国民に対して果たすべきものですよね。それがもし自分の意思で出ないと決めた議員がいるのであれば、それは『国民には説明しません』と宣言したと同じことなんじゃないかと思いました」
有働キャスター
「まずは29日からの政倫審。岸田首相の決断で事態が動いてフルオープンになりました。本当に大事なことは、政倫審で何が語られるかです。裏金は『なぜ』必要で『何に』に使ったのか、きっちり明らかにしてほしいです」
(2月28日放送『news zero』より)