次期戦闘機の第三国輸出…「なし崩し的に広がる?」懸念に岸田首相が歯止め策を表明
開発中の次期戦闘機などを第三国へ輸出する方針をめぐり、「輸出を認めれば、なし崩し的に広がるのでは」との懸念に、岸田首相は3つの「歯止め策」を表明しました。日本の安全保障政策の大転換(公明党幹部)とも言われる「次期戦闘機の第三国移転」をめぐり、首相の口から必要性の詳細がようやく語られました。
■「なし崩し的に広がる?」「日本の戦闘機がウクライナに?」
イギリス、イタリアと共同開発する次期戦闘機をめぐって、政府は第三国への輸出を認める方針の中、与党公明党との間で協議が続いています。公明党は「紛争を助長したり、地域の不安定化につながる」など慎重な姿勢で、国会でも「歯止め策」についての説明を岸田首相に求めました。
国会の議論では、輸出を緩和すれば、「なし崩し的に、あらゆる装備品が輸出できるようにならないか?」「日本の『平和国家』という信頼が崩れないか?」「ウクライナや中東に日本の戦闘機が直ちに輸出されるのでは?」といった疑問が出ました。これに対して、岸田首相が13日に語ったのは3つの「歯止め」のポイントでした。
【歯止め1】輸出する対象は「次期戦闘機」に限る
●公明党・西田議員「世論調査でも明らかなよう、世論は次期戦闘機の第三国輸出について、限定して認めることを求めています。輸出を認めるのは次期戦闘機に限定すべきでは?」
●岸田首相「我が国から第三国移転が必要とされる、国際共同開発生産に限定する。今回の見直しはGCAP(=次期戦闘機の共同開発計画『グローバル戦闘航空プログラム』)に限定する」
【歯止め2】輸出先の国は「防衛装備品・技術移転協定国」に限る
●公明党・西田議員「第三国等への輸出の際には、事前同意を行う国際約束を締結している国、防衛装備品・技術移転協定を日本と結んでいる国に限定すべきと考えますが?」
●岸田首相「他国への侵略など、国連憲章に反するような行為に使用されることがないよう、移転先については第三国移転の際、事前同意を相手国政府に義務づける。防衛装備品・技術移転協定の締結国に限定する」
【歯止め3】輸出先から「紛争当事国」は除外する
●公明党・西田議員「第三国への直接移転については、現に戦闘が行われている国への輸出は、当然に禁止すべきではないか?」
●岸田首相「武力紛争の一環として、現に戦闘が行われている国に対しては、移転は行いません」
■公明党幹部「大転換なのに首相の説明が足りなさすぎる」
国会の議論を終え、ある公明党幹部は「ようやく首相の口から詳細が語られた」と話しました。次期戦闘機の輸出をめぐっては、今の国会が「政治とカネ」の問題に議論が集中し「政府の説明が足りない」(公明党幹部)との声が上がっていました。
一方で、ある政府関係者は「自民党が政治資金問題に労力を使い、安全保障政策の大転換となるこの問題に全く対応できていない」と指摘しています。
実際、通常国会の衆議院予算委員会の議論では、日本テレビの調べで、首相出席の時間に限ると、44%が「政治とカネ」の問題。12%が「少子化対策関連」と、安全保障分野、中でも次期戦闘機の輸出をめぐる議論に時間は十分、割かれなかったと言えます。
自民・公明は輸出を容認することで、近く合意する見通しですが、安全保障政策の大転換になる今回の方針については、引き続き国会で政府による丁寧な説明が求められます。