【解説】“史上最多”候補者乱立の自民党総裁選 戦いの行方は…
出馬表明ラッシュとなっている自民党総裁選。4日時点で史上最多、8人が出馬する見通しとなっています。候補者の乱立が選挙にどのような影響を与えるのか、日本テレビ政治部官邸キャップの平本典昭記者が、3つの疑問について解説します。
1.「脱派閥」で“予測困難”に
2.“派閥単位”動きも…チラホラ
3.「脱派閥」見極めポイントは?
鈴江奈々キャスター
「まず候補者の思惑ですが、4日に茂木敏充氏が出馬表明をしました。どんな戦いになりそうですか?」
政治部官邸キャップ 平本典昭記者
「現状、総裁選レースは小泉氏、石破氏を軸とした戦いになりそうです。茂木氏にとっては厳しい戦いになりそうですが、ある茂木派幹部は、『負けが仮にわかっていても出ないわけにはいかない戦いなんだ』と言っていました」
鈴江キャスター
「厳しい戦いにもかかわらず、『出ないわけにはいかない理由』というのはどんなことがあるんですか?」
平本記者
「茂木氏に限ったことではないですが、2つ理由があると思います。1つ目は、これだけ乱立すると、ここで出ておかないとまずいと焦っている候補者が多いと、取材していて感じます。今回、派閥のしめつけがなくなったことから、あるベテラン議員は『これまでで一番出馬のハードルが低い総裁選だ』と指摘しています。ある候補者の1人は『今回もし出られなければ、次回以降も出られなくなる。党内で埋没してしまう』と言っていました。これが本音だと言えそうです」
「2つ目は、選挙後のポストを見据えた動きと言えます。総裁選で存在感を示せば、仮に負けても次の政権で重要ポストに処遇される可能性が高まります。ある自民党幹部は『多くの候補者が勝つ事が目的でなく、党内での存在感をあげることが目的になっている』と、冷ややかにみている声が出ています」
鈴江キャスター
「これまでの総裁選で負けた候補が冷遇されたケースもありましたが、存在感を示せば優遇される可能性が高まるということなんですね」
平本記者
「戦いが終わった後はノーサイドだと。その後は自民党の実力を見せていこうということで、この総裁選の中で論戦などで実力が認められれば、その候補を次の政権でも処遇し、高いポストで起用するということはこれまでもありましたから、そういったチャンスもあるという点がみえます」
鈴江キャスター
「その論戦ですけれども、乱立で不安を抱えている候補というのもいるんでしょうか?」
平本記者
「これは茂木氏や石破氏など、『経験が武器』として戦おうとしているベテラン勢の不安があると思います。今回の戦いではそうしたベテラン勢と、小泉氏、小林氏など『刷新感』はあるけど『経験のない若手』、どちらがトップにふさわしいかという論点もあると思います。茂木氏の陣営はこれからはじまる論戦を深める事で若手との違いを浮き彫りにしたい戦略を描いています」
「石破陣営の幹部もこういう話をしていました。『1時間、徹底的に小泉さんと論戦を行えば、石破氏なのか小泉氏なのか違いがわかってもらえる』と。そういった自信をのぞかせていますが、今回乱立したことで、これまでの総裁選に比べ、選挙戦の論戦で1人の候補に割り当てられる時間が少なくなる影響が出るのではという声があります。ベテラン陣営からは、議員や党員の支持獲得に向けて、『短時間で違いを見せる難しい戦略が問われる』といった不安の声が出ています」
鈴江キャスター
「その『乱立』ですけれども、勝利のカギ握るのは何になるのでしょうか?」
平本記者
「今回の総裁選は、乱立していることもあって1回で終わらず、1位と2位の決選投票になるとの見方が大勢です。この決選投票に残るカギを握るのが党員票とみられています。なぜかというと、今回、8人が出馬すると、1陣営あたり推薦人20人ですから、160人の支持は固まるだろうと。議員票は367票なので残り200票の争いとなります。取材をしていると、各陣営から『乱立したことで議員票は今回、分散するので差が出づらいだろう』という声が出ています」
「そこで注目されるのが、議員票と同数の票を握る地方票、党員票になるわけです。こちらは世論の人気が高い石破氏、小泉氏が優勢で、4日に会見をした茂木氏、3日に出馬会見をした林氏などは劣勢とみられています。決選投票に進むためには、この党員票をどこまで獲得できるかがカギを握ることになりそうです」