“戦後最悪”日韓関係改善なるか
■韓国
2020年、安倍政権の外交面での最大の焦点は、戦後最悪と言われる韓国との関係を改善していけるかだ。
そもそものきっかけは、2018年10月の韓国の最高裁判所の判決。日本企業に対し、いわゆる元徴用工らへの賠償を命じる判決を下したのだ。
日本政府は、1965年の日韓請求権協定により、いわゆる元徴用工への賠償など、請求権の問題は完全かつ最終的に解決済みとの立場だ。そのため、日本企業に実害が出ないよう、韓国政府に具体的な対応を重ねて求めている。
2019年12月には、韓国の文喜相国会議長が問題の解決に向け、国会に法案を提出。新たな財団を設立して、日韓両国の企業や国民から寄付金を募り、原告らに慰謝料を支払うとする案だ。
しかし、一部の原告は、「日本の責任を免除するものだ」として反発。韓国政府高官も「被害者が法案を拒否すれば、問題の解決にはならない」などと懐疑的な見方を示している。
日本の外務省幹部も、解決策を模索する動きは歓迎するものの、「日本企業がお金を出すことが前提になっている案には賛成できない」と受け入れられないとの見通しを示している。
2019年12月に、安倍首相は韓国の文在寅大統領とおよそ1年3か月ぶりに正式に会談した。安倍首相は「韓国が国家として日韓関係を健全に戻すきっかけを作るよう求める。韓国側の責任で解決策を示して欲しい」と強調。これに対し文大統領は、「この問題の解決の重要性は自分としても認識しており、早期に問題解決を図りたい」と述べた。
両首脳は、早期解決に向け外交当局間の意思疎通を継続していくことで一致したものの、韓国側から具体的な対応策の提示はなかった。
複数の日本政府関係者が「文在寅大統領がかわるまでは、日韓関係の改善は難しい」と語るように、2020年もいわゆる元徴用工訴訟の問題で進展は見通せない状況が続きそうだ。
■中国
そして、2020年の重要な外交行事は、「桜の咲く頃」に予定されている習近平国家主席の国賓としての来日だ。最近2回の中国国家主席の国賓訪日時には日中関係を規定する「政治文書」を発表していて、中国側は、今回も「政治文書」作成に意欲を示している。
2019年12月の日中首脳会談で、安倍首相は「日中両国は、地域や世界の平和と安定に共に大きな責任を有しており、共に責任を果たすという意思を内外に明確に示したい」と強調していて、「政治文書」を取り交わすことになれば、その内容が注目される。
■ロシア
一方、ロシアをめぐっては、北方領土問題を含む平和条約交渉が続いているものの、2020年も進展は難しい情勢だ。
2019年は外相や首脳間の会談を重ねたものの、北方領土問題で具体的な進展はなかった。ロシア側は「第二次世界大戦の結果、クリル諸島(北方領土)がロシア領になったことを日本が認めない限り、領土交渉の進展は望めない」と強硬な立場を崩していない。
また、仮に返還した場合、北方領土に米軍が展開することを懸念し、日米同盟への警戒感も重ねて強調している。
2019年12月の日露外相会談で双方が受け入れ可能な解決策を見いだすために協議項目を整理していくことで一致したものの、両国の溝は深く、領土問題の進展は難しい状況が続きそうだ。
■北朝鮮
北朝鮮をめぐっては、2019年は、米朝の非核化交渉で進展は見られなかった。2019年2月にはトランプ大統領と金正恩委員長がベトナム・ハノイで会談。さらに2019年6月には、韓国と北朝鮮の軍事境界線がある板門店でも会談した。その後、実務者協議も行われたものの、非核化を求めるアメリカと制裁の解除を求める北朝鮮の間で交渉は進展しなかった。
北朝鮮は非核化交渉の期限を一方的に2019年12月末までと設定していて、期限を過ぎた2020年1月以降、北朝鮮が弾道ミサイルの発射などどんな挑発行為に出てくるか、日米韓は警戒の度合いを高めている。
また拉致問題をめぐっても、目に見える進展はなかった。当初、「必ず安倍内閣で解決していく」と決意を語っていた安倍首相だが、残り2年を切った任期中に本当に解決できるのかどうか、重要な1年となりそうだ。