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“常とう句”「秘書に任せていた」「政治にはカネかかる」今後は? 政治資金規正法 改正へ【政治部長解説】

2024年6月18日 20:58
“常とう句”「秘書に任せていた」「政治にはカネかかる」今後は? 政治資金規正法 改正へ【政治部長解説】

自民党の提出した政治資金規正法改正案が19日の参議院本会議で成立する見通しです。日本テレビ・井上幸昌政治部長と詳しくお伝えします。

■政治資金規正法改正案 どう評価?

鈴江奈々キャスター
「今回の改正で政治への信頼が回復するとは、なかなか考えづらい状況ですよね?」

井上幸昌政治部長
「与野党ともになのですが、あるべき『政治の姿』を描いて、もう一度、有権者の信頼を取り戻すんだ、という熱気に欠けていたと評価せざるをえません」

井上政治部長
「二人の専門家に今回の改正案について聞いたのですが、政治とカネの問題に詳しい東京大学の谷口教授は、『ないよりはマシ』だと、元検事の若狭弁護士は『今よりはマシだが、評価は全くできない』と話していました」

鈴江キャスター
「このなかなか評価されていないポイントを、深掘りして解説してもらいます」

■裏金事件めぐる“常とう句” 「秘書に任せていた」

鈴江キャスター
「一連の裏金事件をめぐって、視聴者の皆さんもモヤモヤしていると思う、2つの常とう句を切り口に聞いていきます。まずは『秘書に任せていた』。今回の裏金事件でも政治家から多く聞かれた言葉でした。そして『政治にはカネがかかる』」

「一つ目の『秘書に任せていた』。この言葉は、今回の改正でこういう主張は通用しなくなるのでしょうか?」

井上政治部長
「実はそうとも言えない。言い方をかえて言い逃れできてしまう余地はあるんです」

井上政治部長
「そもそも、なぜ、いつも『秘書に』と言うのかというと、政治資金収支報告書の作成と提出の義務は、議員ではなく、会計責任者に課せられているんです。会計責任者はたいてい秘書が兼務しています。こうしたことから、『秘書に任せていた』ということになるんです」

斎藤佑樹キャスター
「でも、会計責任者のボス、上司は議員ですよね。そうなると、責任を取らないのは何だかな、と思うのですが、このあたりはどうなのでしょうか?」

井上政治部長
「ですので、今回、議員の責任を明確にしようとしています」

鈴江キャスター
「改正案では会計責任者が出す報告書に加え、議員本人にその『確認書』を出すよう、義務づけるとしています。これにより、もし、報告書に虚偽記載などがあって、会計責任者が処罰された時は、議員の確認が不十分だったとなれば、公民権停止の対象、つまりは議員の身分を失う可能性があります。この内容についてはどうでしょうか?」

井上政治部長
「自民党議員のある秘書も『これは抑止効果がある』と話していましたし、一歩前進と言えると思います。ただ懸念されるのは、今後は『秘書に任せていた』ではなく、確認はしたんだけど『気づかなかった』という言葉に変わり、逃げ切ってしまう可能性はあると思います」

森圭介キャスター
「法案が成立する前なのに、その“抜け穴”がわかっているというのは、効果があまりないのではないかと思うのですが、どうでしょうか?」

井上政治部長
「若狭弁護士も確認書の義務づけは『小手先の対応』だと指摘しています」

元東京地検特捜部副部長 若狭勝弁護士
「安倍派幹部の刑事責任が、全然追及されなかったことが、大きな国民の不信を買っている。収支報告書自体に、政治家が会計責任者と連名・連署する、そういう法改正をすれば、刑事責任を政治家に問うことは、逆に可能になってくる」

   ◇

鈴江キャスター
「若狭弁護士が指摘した、収支報告書に議員本人が連名・署名できるように、なぜ今回、法改正しなかったのでしょうか?」

井上政治部長
「議論はされたのですが、自民党としては、確認書の方が効果的だとして、今の案になりました」

鈴江キャスター
「自民党はそう言っていますが、実際に効果的かどうかというのは、今後見ていかなければいけませんね」

井上政治部長
「法律の運用の面もあるので、そこは今後見ていく必要があると思います」

■裏金事件めぐる“常とう句” 「政治にはカネがかかる」

鈴江キャスター
「次に『政治にはカネがかかる』という言葉です。これも実際、どうなのでしょうか?」

井上政治部長
「少なくとも、今の『政治活動』は、コストがかかる形になっているのは事実です。秘書の人件費や事務所の経費、会合の参加費などがあります。いずれも、地元有権者の声を広く聞いて、政策に反映させるためには拠点が必要で、お金がかかるというのが、与野党問わず現状です。そのために、政治資金パーティーを開いて、薄く広くお金を頂く。そして、その場でも有権者の声を聞くということになっています」

「さらに議員ごとだけでなく、各党も党として、かなりのお金を集めています」

井上政治部長
「主な政党の2022年の収入を確認すると、立憲民主党、日本維新の会、国民民主党は『政党交付金』の割合が高く、共産党と公明党は緑の『事業収入』、機関誌の収入に支えられています」

鈴江キャスター
「政党交付金というのは、国のお金、つまり私たちの税金で賄われているお金ですよね」

井上政治部長
「年に250円、皆さんで負担していることになります」

「一方、自民党は『寄付』がカギで、この多くが企業・団体献金です。自民党としては企業の声も聞いて、政策に反映させ、政治を進めるという主張です」

斎藤キャスター
「もう少し何とかして、コストカットなどできないものなのでしょうか?」

井上政治部長
「そう思う方は、少なくないと思います。今回の政治とカネの議論では、政治にどこまでお金をかけるのか、という本質的な議論は深まりませんでした。多くの重要な部分を『検討事項』に回して結論を先送りしています。専門家は次のような指摘をしています」

政治とカネの問題に詳しい東京大学・谷口将紀教授
「これから具体的な制度設計をし、いつまでに実行していくのかが決まってくる。むしろこれから大事な部分が来るので、引き続き、国会が終わった後も、この問題を注視していただければと思います」

   ◇

鈴江キャスター
「成立した後、具体的に決まっていくということですが、実際に本当に必要なコスト、国民のためのお金であれば、正々堂々とこれからも説明してもらいたいと思います」

井上政治部長
「すごく大事な指摘だったと思うのですが、衆議院選挙が遅くとも来年の秋までに、そして参議院選挙は来年の夏にあります。国会議員が積み残した課題にきちんと結論を出しているのか? そして抜け穴だらけになっていないか? もし不十分な内容になっていたとしたら、どの政党が後ろ向きだったのか、よくチェックして、皆さんの意思を投票という形で表すことが大事です」