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“検察庁法”廃案に“ツイッターデモ”裏側

2020年6月20日 19:02
“検察庁法”廃案に“ツイッターデモ”裏側

「一強」ともいわれた安倍首相ですが、最近は重要政策での方針転換が相次ぎ、検察庁法改正案も廃案に追い込まれました。大きな力となったツイッターによる抗議の裏側を取材しました。

今国会の閉会後に行われた安倍首相の記者会見。

安倍首相「多くの方々が(検察庁法改正案に)反対をしておられる中において、立ち止まって考えるべきだと考えました」

これまで、反対意見も多かった法案を数多く成立させてきた安倍政権ですが、今回、内閣などが認めれば検察幹部の定年を延長できる改正案は廃案に追い込まれました。

その大きな力となったのがいわゆる「ツイッターデモ」。「#検察庁法改正案に抗議します」を演出家の宮本亞門さんら著名人らがツイート。総ツイート数は400万にものぼりました。ただ、政府内からは…。

官邸関係者「同じアカウントから大量に投稿されているケースがかなりある」

つまり、同じ人が何回も投稿してツイート数がふくれあがっただけ。本当の世論を反映していないという声があがりました。実態はどうだったのでしょうか。投稿を分析した専門家に聞きました。

東京大学大学院工学系研究科、鳥海不二夫准教授「今回(集中した3日間で)400万リツイートとかそれくらいの数のリツイートが拡散されている。1人で何回も拡散できるんですけど、拡散した人の人数でいうと50万~60万人と出ています」

確かに実際にツイートした人の数は減ります。しかし…。

鳥海不二夫准教授「(50万~60万人が投稿したのは)レベル感的にかなり大きい方かと思う」

この数は東京オリンピックのエンブレム盗作疑惑が、ネット上で炎上した2か月間の総ツイート数に匹敵し、政治の話題では異例だといいます。大きなうねりのきっかけは何だったのか。私たちは最初にこのハッシュタグをつくった人に話を聞くことができました。

最初に投稿した女性会社員「コロナ関連のニュースで国民の現状と政府の政策が、あまりマッチしてないのではとすごく気になりはじめた」「それで国会(質疑)を見て、森法相と(野党の)山尾志桜里さんのディスカッションとかを聞いたりして(改正案が)おかしいことになってないかと思った」

そして検察庁法改正案の問題を知るきっかけのひとつは…。

最初に投稿した女性会社員「黒川検事長の定年延長のことは、1月くらいにせやろがいおじさんという方の動画を見て知っていた」

政治風刺などで知られるお笑いタレントの動画でした。

芸人・せやろがいおじさん「世間への認知度が高い芸能人が社会問題や政治問題を発信し、知るきっかけを広げてくれるのはめちゃくちゃありがたいと思う」「政治のことは我々の生活のことなので、もうちょっと語りやすい風潮になる一助くらいになれたら良い」

この改正案に反対していた野党は「ツイッターデモ」をとりこむ戦略にのりだしました。それが…。

立憲民主党・安住国対委員長「ハッシュタグ国会止めるな運動をしたいと思ってます。国民の皆さんに提案したい」

国会の会期延長を求める“ツイッターデモ”をしかけましたが、3日間の総ツイート数で比べると、ハッシュタグ検察庁法改正案の1%にも満たない1万6000。不発に終わりました。

鳥海准教授は「広告のプロでもネット世論をつかむのは難しい。素人の国会議員が狙って簡単にできるものではない」と話しています。

ネット上の民意の動きをどう見極めるのか、与野党ともに難しい課題です。