菅総理“不出馬”突然の決断…背景に何が
自民党総裁選での再選を目指していた菅総理大臣が、急転直下、立候補しないことを表明しました。突然の決断の背景には、何があったのでしょうか。
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■菅総理“総裁選不出馬”表明…自民党役員人事と内閣改造行う方針の中
3日午後1時すぎ、菅総理は記者団の取材に応じて、以下のように話しました。
菅総理
「私自身、出馬を予定する中で、コロナ対策と選挙活動、こうしたことを考えたときに、実際、莫大(ばくだい)なエネルギーがこれ必要でありました。そういう中でやはり両立はできない。どちらかに選択すべきである。国民の皆さんにお約束を何回ともしてます。新型コロナウイルス、この感染拡大を防止するために私は専念をしたい」
もともとのスケジュールは、まず自民党総裁選は今月17日に告示し、29日に投開票が行われることが決まっていました。そして総裁選に先立って、菅総理は、週明け6日に自民党の役員人事と内閣改造を行う方針でした。
背景には、党内で「秋の衆議院選挙を菅総理では戦えない」という声が日に日に高まり、追い込まれていたという事情があります。
菅総理は、事態を打開しようと、9月中旬に衆議院を「解散」して総裁選を先送りすることも、選択肢のひとつとして検討していました。ただ、この「9月解散案」が流れると、党内からは以下のように反発の声が噴出しました。
自民党議員
「総裁選に勝てないから衆院選に逃げるって、つまりみんなを犠牲にして自分は逃げ切ろうとしているとしか見えない」
「これは『無理心中』解散でしょう。自爆する気なんですかね」
さらに、最大派閥に影響を持つ安倍前総理、党内第二派閥を率いる麻生副総理も、「9月解散案」には反対の考えを菅総理に伝えました。このため、菅総理は翌日には一転、火消しに追われる形となり、「9月解散案」は一夜で消えることになりました。
さらに菅総理は、ここ最近、小泉環境大臣とも連日会談を重ねていました。小泉大臣も、菅総理に「9月解散」をしないよう進言していた1人で、総裁選についても2日、菅総理に対して「立候補しない」ことを強く求めたと言われています。
このように、ここ1週間ほどでいろいろな動きがありましたが、菅総理は2日夕方、二階幹事長と会談して、再選を目指し総裁選に立候補すると伝えていました。
■なぜ急転直下の不出馬表明…党内の若手から反発も
2日までは立候補するつもりでした。それがなぜ急転直下、出馬しないと表明したのでしょうか。
まず、菅総理は、総裁選に向けては、来週前半にもイメージ刷新を目指して、二階幹事長の交代を含む自民党役員人事と内閣改造を予定していました。菅総理にとっては、これが反転攻勢を狙う最後のカードでしたが、この人事が難航したとみられます。
党の役員人事で、幹事長には世論の人気が高い河野ワクチン担当大臣、石破元幹事長、小泉環境大臣らの起用が取り沙汰されていましたが、自民党関係者からは、以下のような声が上がっていました。
自民党関係者
「こんなタイミングで人事をするなんてあり得ない。人事で総裁選の党員票を買うようなものでおかしい」
「誰がこんな状態で党役員を引き受けるんだよ」
つまり、党の要職などを打診しても受けてもらえない状態に陥っていた、ということです。
さらに、菅総理の再選をめぐっては党内の若手から反発が強く、再選を支持する姿勢をみせていた安倍前首相や麻生副総理も派閥をまとめきれない状態になっていたということです。つまり、菅さんでは衆院選を戦えないといった声におされて八方ふさがり、まさに手詰まり状態に追い込まれていたと言えます。
■総裁選どうなる…構図大きく変わるか
では、菅総理が立候補しないことを受けて今後、総裁選はどうなっていくのでしょうか。
すでに岸田前政調会長が立候補を表明しています。また、高市前総務大臣が立候補に意欲を示していますが、菅総理の立候補断念により構図が大きく変わることが予想されます。
注目されるのは、世論の人気が高い河野ワクチン担当大臣と石破元幹事長です。河野氏は周辺に対して、菅総理が出ないなら立候補を検討する考えを伝えています。
また、石破元幹事長は、これまで立候補は白紙としてきましたが、3日午後1時半すぎ、「全く新しい展開になったので、同志の皆さんと相談し結論をだしたい」と述べました。
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急転直下の立候補見送りにより、自民党総裁選の行方はますます混沌(こんとん)としてきました。ただ、感染の収束が見えない中、政治空白を作らずコロナ対策にしっかり最優先で取り組むことも忘れないでほしいと思います。
(2021年9月3日午後4時ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)